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レベニューマネジメントの本質とは?ホテルの価値は、価格に変えられる

2026年8月4日 OTA レベニューマネジメント 未分類 渡邉典史

レベニューマネジメントの本質とは?ホテルの価値は、価格に変えられる

宿泊施設のレベニューマネジメント(RM)と聞くと、「競合施設の料金を見ながら、自社の価格を毎日上げ下げする仕事」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、競合の値下げに追随するだけの運用は、市場全体の宿泊単価を押し下げ、施設の利益やブランド価値まで損なう危険があります。

2026年7月29日、需要予測・価格最適化を支援するダイナミックプラス株式会社と、ホテルに特化したマーケティング支援を行うmicadoが共催セミナーを開催しました。当日は、ダイナミックプラス株式会社の平田氏をゲストに迎え、レベニューマネジメントの本質と、システムをどのように活用すべきかを掘り下げました。

本記事では、当日の対話をテーマごとに再構成して紹介します。各章の最後には、議論を実務へ落とし込むための「micadoからの補足」をまとめています。

レベニューマネジメントは「価値を価格に変えること」

田代(micado):
ホテルの現場では、競合が料金を下げたら自社も下げる、といった毎日の価格調整がレベニューマネジメントだと捉えられがちです。平田さんは、レベニューマネジメントをどのように考えていますか?

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
私は、「自社が持っている価値を価格に転化すること」だと考えています。競合価格や需要の確認も必要ですが、最も重要なのは、自社の施設がどのような価値を持っているかです。

たとえば、同じ工場の生産ラインで作られていても、ポルシェとフォルクスワーゲンでは、お客さまが支払ってもよいと考える金額が大きく異なります。機能だけでなく、ブランドを含む商品全体の価値が価格差として受け入れられているためです。

田代(micado):
ホテルでも、同じ広さの客室だから同じ価格、とは限りませんよね。眺望、階数、大浴場への近さ、静かさなど、客室ごとの違いに価値を感じるお客さまがいます。

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
その通りです。海が大きく見える客室なら、追加料金を払ってでも泊まりたい方がいます。旅館であれば、大浴場に近い客室を便利だと感じる方もいます。価格とお客さまが感じる価値が一致すると、満足度も高まります。

、OCC、、自社予約比率など、すべての施設が同じ指標を追う必要はありません。過去データから自社の需要を予測し、施設の特徴や収益構造に合わせてKPIを設定することが出発点です。

💡micadoからの補足
施設の価値を価格へ反映するには、まず「どの客室・サービスが」「どのようなお客さまに」「なぜ選ばれているか」を整理する必要があります。競合料金を見る前に、客室タイプ、眺望、設備、館内動線、接客、食事など、自社にある違いを書き出すことが価格設計の第一歩です。

競合への追随が、市場全体の単価を下げる

田代(micado):
現場では「競合が下げたから、今日中に自社も下げなければ」と判断する場面があります。こうした価格調整を繰り返すと、どのような問題が起きるのでしょうか?

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
一つの施設が値下げし、周辺施設も追随すると、市場全体の単価が下がります。大阪では、需要がなくなったわけではないのに、競合価格に合わせた結果、名古屋より安くなるような状況も見られました。

さらに、安ければ必ず選ばれるわけでもありません。極端に安い料金を見ると、「何か問題があるのではないか」と不安を感じるお客さまもいます。価格を下げる前に、自社の価値と料金が本当に合っているかを考える必要があります。

田代(micado):
競合を見るときも、料金だけでは不十分ですよね。写真、口コミへの返信、客室情報、宿泊プラン、接客、周辺イベントとの連携など、競合が「選ばれる理由」を改善している可能性があります。価格だけに注目すると、その変化を見落としてしまいます。

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
価格調整は、空室を減らすための短期的な手段です。一方で、施設の価値を高める取り組みは、中長期で選ばれ続けるための活動なので、両方を分けて考えることが重要です。

💡micadoからの補足
競合との価格差があるときは、すぐに料金を合わせるのではなく、「写真の第一印象」「客室情報の量」「口コミへの対応」「プランの分かりやすさ」まで確認します。予約が入らない理由が価格以外にある場合、値下げをしても根本的な改善にはつながりません。

では「価格以外の情報」が予約を左右する

田代(micado):
競合より1,000円高いと、すぐに値下げを考えがちですが、では価格以外の要素も比較されていますよね。

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
そうですね。たとえば客室の広さを重視する方は、10平方メートルと15平方メートルの違いを一つずつ調べています。客室情報を詳しく掲載するだけでも、お客さまは自分に合う部屋を選びやすくなります。

田代(micado):
実際に宿泊すると魅力的なサービスがあるのに、Webサイトやには載っていないことがあります。施設側にとっては当たり前でも、お客さまに伝わっていなければ、予約時の価値として認識されません。

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
写真だけで伝わらない部分は、口コミや客室説明で補うこともできます。施設が行っている工夫を、予約前のお客さまが理解できる形にすることが大切です。

田代(micado):
つまり、価値は存在するだけでは足りず、見える形にして初めて価格を支えるということですね。写真、客室の広さ・設備・眺望、口コミへの返信、滞在を想像できるプラン、周辺情報まで含めて整える必要があります。

平田氏(ダイナミックプラス株式会社): はい。価格差をなくすことより、その価格差に納得してもらえる情報を増やすことが先です。

💡micadoからの補足
の掲載情報は、一度登録して終わりではありません。施設の改善、客室備品の変更、口コミで評価された点などを定期的に反映し、「価格差を納得できる情報」がそろっているかを確認します。特に、写真・客室詳細・口コミ返信・プラン説明は優先的に見直したい項目です。

人とシステムは、何を分担すべきか

田代(micado):
システムが推奨した価格と、現場担当者の経験による判断が食い違うこともあります。その場合、どちらを優先すべきでしょうか?

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
導入初期にズレが生じるのは自然なことです。競合価格、季節性、自社の予約推移など、推奨価格の理由を確認したうえで、現場の判断を優先して販売する方法もあります。その結果をシステムが学習し、次の提案へ反映していきます。

田代(micado):
システムの提案をそのまま受け入れるのではなく、「なぜ自分は別の価格にするのか」を言葉にすることが大切なのですね。

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
そうです。人が判断した結果もデータになります。結果を振り返ることで、人の判断とシステムの精度の両方を改善できます。

たとえばプロ野球では、約4万席の価格を少人数で管理し、15分ごとに変動させる運用があります。これはシステムがあって初めて実現できます。情報収集、需要予測、推奨価格の算出は機械に任せ、人は最終判断と価値向上に集中するのが理想です。

💡micadoからの補足
システム導入の目的は、価格担当者を不要にすることではありません。価格確認や集計に使っていた時間を、商品づくり、改善、施策へ振り向けることにあります。導入効果は売上だけでなく、「価値向上の業務に使える時間が増えたか」という観点でも確認する必要があります。

小規模施設・電話予約中心の施設にも意味がある

田代(micado):
客室数が30〜80室ほどの施設でも、レベニューマネジメントシステムを導入する意味はありますか?

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
部屋数だけで必要性は決まりません。客室タイプ、階数、眺望、設備に違いがあれば、少ない客室でも価格判断は複雑です。限られた客室の価値を細かく価格へ反映するために、システムは役立ちます。

一例ですが、1万円・30室の施設で10%改善すれば、月20万円を超える差が生まれる計算です。システムの費用だけでなく、価格改善と作業時間の削減を合わせて判断する必要があります。

田代(micado):
電話予約が多いホテルでは、毎日料金を変えると、予約担当者の案内が複雑になる心配もあります。

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
その場合、毎日価格を変える方法だけが正解ではありません。需要予測をもとに一定期間の価格を先に決め、料金カレンダーとして案内する「バリアブル」も選択肢になります。施設の販売方法に合わせて設計することが大切です。

💡micadoからの補足
小規模施設では、価格改善の金額だけでなく、担当者の作業時間や運用負担も含めて導入効果を考えます。電話、公式サイト、など、実際の予約経路に合わせて価格の更新頻度と案内方法を設計することが重要です。

レベニューマネジメントとマーケティングは一体で考える

田代(micado):
ページの改善、SNS、口コミ対応といったマーケティング施策と、レベニューマネジメントはどのように連携するのが理想でしょうか?

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
価格は、マーケティングのでいうPriceの一つです。Product、Place、Promotionと切り離すのではなく、によって需要をつくり、施設の価値を伝え、その価値を価格に反映する流れが必要です。

田代(micado):
需要予測によって、来月の特定日に需要が高まりそうだと分かれば、それに合わせてプランをつくり、SNSやで発信できます。先に価格だけを決めるのではなく、商品と伝え方を整えたうえで価格へ落とし込むことが重要ですね。

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
その順番が理想です。需要を予測し、商品とを整え、価格を設定する。販売後は結果を確認し、施策と価格の両方を見直します。

田代(micado):
レベニュー担当とマーケティング担当が同じ需要予測を共有できれば、「この日に向けて何を売るか」「どの価値を伝えるか」「いくらで売るか」を一つの流れで考えられますね。

💡micadoからの補足
マーケティング担当とレベニュー担当が別々に動くと、が価格へ反映されなかったり、需要が高まる日に十分な情報発信ができなかったりします。需要予測、商品づくり、情報発信、価格設定を一つの流れとして共有することで、レベニューマネジメントは単なる価格調整から収益を高める活動へ変わります。

機械に計算を任せ、人は価値づくりに集中する

田代(micado):
システムを導入すると、自分の仕事がなくなるのではないかと不安を感じる担当者もいます。平田さんは、レベニューマネジメントシステムを「正義」と「悪」のどちらだと考えますか?

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
私は「正義」だと考えます。機械に任せられる計算や情報収集は機械に任せ、人は価値づくり、を増やす仕事に集中すべきです。システムも導入して終わりではなく、使いながら学習させ、育てていくものです。

田代(micado):
システムに仕事を奪われるのではなく、これまで価格確認に使っていた時間を、本来やるべき仕事へ戻すということですね。

平田氏(ダイナミックプラス株式会社):
そうです。自社施設の価値を見つけ、お客さまに伝わる形に整え、につながる体験をつくる。そこは人が担うべき仕事です。

💡micadoからの補足
競合の料金に合わせるだけの運用から抜け出し、自社の価値を価格へ変えること。これが、これからの宿泊施設に求められるレベニューマネジメントの姿です。まずは、自施設の客室やサービスが持つ「違い」を書き出し、その価値がや自社サイトで正しく伝わっているかを見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。

まとめ | micado編集部の視点

今回のセミナーを通してmicado編集部が改めて確認したのは、レベニューマネジメントは「競合に合わせて価格を上げ下げする作業」ではなく、「自社が持つ価値を価格に変える経営判断」だということです。
競合の値下げに追随するほど市場全体の単価は下がり、利益もブランド価値も静かに削られていきます。価格を動かす前に、自施設にどのような価値があるのかを言葉にすることが出発点になります。

続いて見えてきたのは、予約を左右するのは価格だけではないという事実です。写真、客室情報、口コミへの返信、プランの見せ方など。
価格差に納得してもらうための情報がそろっているかどうかが、選ばれる施設とそうでない施設を分けます。そのうえで、情報収集や価格監視といった計算はシステムに任せ、人は価値づくりと価値の伝達に集中する。

この役割分担こそが、限られた人手で収益を最大化するための現実的な解だと私たちは考えています。

こうした考え方は、大規模施設だけのものではありません。客室数が少なくても、電話予約が中心でも、自施設の価値を価格へ反映する余地は必ずあります。
大切なのは、需要予測・商品づくり・情報発信・価格設定を一つの流れとしてつなぎ、レベニューマネジメントとマーケティングを切り離さないことです。価格競争の消耗戦から抜け出す第一歩は、他社の料金表ではなく、自施設の価値と向き合うことにあると、私たちは考えています。

読んで「なるほど」で終わらせていませんか?

「自社の価値を価格に変える」と頭で分かっても、その価値が今いくらで売れているかは、自館の数字を見るのが近道です。いま売上を伸ばしている施設と、そうでない施設の差は、「どこで取りこぼしているか」に気づき、「いつ・何をすべきか」を数字で判断できているか。違いはそこだけです。

同じエリア・同じ規模の施設は、すでにデータを見ながら最適なタイミングで手を打ち始めています。一方で「分析する仕組みがない」「何から手をつければいいか分からない」と判断を後回しにしている間も、機会損失は静かに積み上がっていきます。

まずは”自館で実際に何が起きているか”を見るところから。それが、最適なタイミングで最適な一手を選べる施設への第一歩です。

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この記事を書いた人

渡邉典史

渡邉典史

ホテルマーケティングコンサルタント

デジタルマーケティングによる集客戦略を担当。独立後コンテンツマーケティングにおける企画立案から記事作成などを行い、サービス提供開始から最短2ヶ月で集客数6.5倍を達成。Googleアルゴリズムの研究を行い、SEO,MEO対策の目標達成が短期間で可能。海外経験を活かしインバウンドマーケティングの責任者としてホテル・旅館を中心に集客支援を行っている。

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監修

田代貴彦

株式会社micado 代表取締役

マーケティング支援実績700社以上