「の手数料が重い」「そろそろに移したい」。ホテルの売上構成を見直す場面で、必ず出てくる話です。ただ、その判断を比率だけで決めている施設が少なくありません。経由が6割だから依存している、3割なら健全という具合です。
比率は結果であって、依存の定義ではありません。同じ6割でも、コストが管理され複数の媒体に分散していれば健全ですし、3割でも1社に偏って手数料の中身が分からなければ危うい状態です。
この記事では、依存を判定する4つの条件を示したうえで、は本当に高いのかを他の集客手段と並べて確認し、見直すときの手順を整理します。読み終えたとき、自館が依存状態にあるのか、動かすべきなのかを数字で判断できる状態になります。
依存とは何か? 比率だけでは判定できない
依存という言葉は感覚的に使われがちです。まずは判定の条件をはっきりさせておきます。ここが曖昧なまま「脱」を掲げると、健全なチャネルまで削ることになります。
依存を判定する4つの条件
micadoは依存を、次の4つで定義しています。
・経由の売上が全体の80%以上を占めている
・業務の大半がの運用に取られている
・手数料と販促費の合計が20%以上に達している
・特定の1社が45%以上を占めている
4つのうち、いくつ該当するかで見ます。1つも当てはまらなければ、比率が高くても単に主力チャネルがだというだけの話です。逆に2つ3つと重なるなら、売上の構造が外部に握られている状態に近づいています。
この定義の利点は、打ち手が変わることです。売上構成だけが引っかかるなら分散の問題ですし、業務時間が取られているなら運用の仕組みの問題、手数料が20%を超えているならコスト管理の問題になります。「依存しているからへ」ではなく、どの条件が点灯しているかで次の一手が決まります。
比率が高いこと自体は、依存ではない
ここを取り違えると判断を誤ります。経由が多いことと、に依存していることは別の話です。
考えてみると当然で、世界的なホテルブランドでも比率が高いとは限りません。宿泊の流通は、旅行者が比較して選ぶ場をが握っている構造の上に乗っています。その場に出さないという選択は、比較の土俵から降りることを意味します。
大事なのは、その比率を自分で選んでいるかどうかです。コストの中身を把握し、複数の媒体に配分し、必要なら比率を動かせる状態なら、比率が高くても主導権はこちらにあります。把握していないまま比率だけが上がっているなら、それは依存です。
実際、経由が7割を超えていても、手数料の内訳を把握して複数の媒体に配分できている施設は、翌年の条件変更にも対応できます。逆に3割でも中身を知らなければ、条件が変わった瞬間に打つ手がありません。
特定の1社に偏っていないかを見る
4条件の中で見落とされやすいのが、最後の「特定の1社が45%以上」です。
1社への集中は、条件が変わったときに逃げ場がなくなることを意味します。手数料率の改定、掲載順位のルール変更、キャンペーンの仕様変更。どれも自館の都合とは無関係に起こりますが、その媒体に半分近くを預けていると、交渉も分散もできません。
確認は簡単です。直近1年の媒体別の売上を並べ、最大の1社が全体の何割かを出す。45%を超えているなら、シェアの小さいチャネルから少しずつ振り分ける準備を始めます。比率を下げるのではなく、偏りを均すという発想です。
45%という線に絶対的な根拠があるわけではありません。ただ、半分近くを1社に預けた状態は、条件交渉でも分散でも不利になります。自館の数字を出したうえで、どこまでなら許容するかを先に決めておくと、毎年の判断がぶれません。

図の3つは、どれか1つ当てはまれば依存というものではありません。いくつ該当するかで、動かす優先度が決まります。
は本当に高いのか
依存の判定ができたら、次はコストです。ここでも感覚ではなく、同じ物差しに載せて比べます。
実質手数料は、契約上の率ではない
媒体のコストを契約手数料だけで見ている施設は少なくありません。実際には、基本手数料に、ポイントの原資、広告費、クーポンの原資が乗ります。この4つを足して、その媒体経由の売上で割ったものが実質手数料です。
契約上は1割でも、実質では2割から3割に達しているケースがあります。ある媒体の定義で言えば、契約手数料に任意参加のプログラムの上乗せと割引原資を足す形になります。「任意参加」という言葉が示すとおり、上乗せの大半は施設側が選んで出している費用です。つまり、自分で下げられる数字でもあります。
月次で一枚の表にして、媒体ごとに並べる。この作業をしないと、どの媒体が本当に高いのかが分かりません。手数料の中身を需要と取引に分けて考える整理は「直接予約」の定義が変わる|手数料を需要と取引に分けて考えるで扱っています。
他の集客手段と並べて比べる
実質手数料が出たら、代替手段と比べます。ここで多くの施設が驚きます。
を60%から80%へ引き上げるために必要な集客量を、手段ごとに置き換えた試算があります。SNSだけで作ろうとすると292万件のプロフィール遷移が要る。広告なら730万クリックで、費用は7,300万円規模。同じ集客をで作る場合、手数料と販促費の合計は2,920万円という計算でした。
つまり集客の手段として見れば、は必ずしも高くありません。「は高い」という感覚は、手数料という形で費用が可視化されているから生まれます。広告費やSNSの運用工数は、同じようには見えていないだけです。問題は依存そのものではなく、依存の仕方にあります。
と公式サイトは、競合ではなく補完関係にある
もう一つ押さえておきたいのが、と自社サイトの関係です。
日単位で見ると、経由の予約と公式サイトへのアクセスに相関が出ることがあります。で見つけて、公式サイトで確かめて、どちらかで予約する。この流れがある以上、の露出を落とすと公式サイトの流入も一緒に落ちる可能性があります。
ただし、すべての施策が公式サイトの流入を連れてくるわけではありません。短期のキャンペーンは公式サイトの訪問につながりにくく、長期・複数日にわたるキャンペーンのほうが流入を促すという観測があります。自館の施策の期間と、公式サイトのアクセス推移を重ねれば、どちらのタイプかは確かめられます。連動しているなら、は集客の入口として機能しています。その場合、露出を落とす判断は慎重に行う必要があります。

図の3つを足し、その媒体経由の売上で割ると実質手数料が出ます。契約上の率のままでは比べられません。
見直すときの手順
判定とコストの確認が済んだら、動かし方です。ここにも順番があり、飛ばすと数字が読めなくなります。
まず、分母を確定させる
支援の現場で実際にあった話です。比率を3〜5ポイント伸ばす提案を進めていた最中に、「そもそも今の比率が本当に20%なのかを把握していない」ことが分かりました。目標の議論をしながら、分母が確定していなかったわけです。
比率を測るには、3つのデータが要ります。媒体別の実手数料率、それも販促の上乗せまで含めた率。媒体別の販売実績。そして、宿が負担しているポイントとクーポンの費用。この3つが揃わないと、増えた分が純増なのかチャネルシフトなのかも確定できません。
社内資料のあいだで比率が20%と23%のように食い違うこともあります。そういうときは、最新の数字を暫定採用したうえで、表記の揺れがあること自体を記録に残し、対象施設・期間・分母を統一するところから始めます。
観測の是正から始める
意外に思われるかもしれませんが、最初に手をつけるべきなのは施策ではなく、数字の見方です。
micadoが打ち手を登録している一覧に「観測の是正」という項目があります。内容は、前年比の定義を揃えること、そして各社とを合算して施設全体で見ることです。この施策の記録が面白いのは、コストが「無料」、可逆性が「即戻せる」、貢献度が「高」と並んでいる点でした。
何も買わず、いつでも戻せて、効果は大きい。にもかかわらず多くの施設で後回しになっています。定義が揃っていない数字で前年比を出しても、増えたのか減ったのかすら確定できません。比率の議論を始める前に、まずここを通します。
検証の仕方も決めてあります。定義を揃えたあとに出てくる目標との差額を、観測した事実のほうへ反映させる。数字を作り直すのではなく、見方を直した結果として目標そのものが変わる、という扱いです。
動かす順番は、下から積む
実際に配分を動かすときの順序も決まっています。①で売上を安定させる、②ブランドを構築する、③ブランドの力での売上も伸ばす、④公式サイトと予約エンジンを最適化する、⑤リピート戦略を回す、⑥外の露出を作る、という6段です。
順番が重要で、で売れる状態を作らないままへ投資するのは非効率です。は限られた枠の中での競争ですが、公式サイトや広告は自由度が高いぶん難易度も上がります。運用そのものの設計は予約が伸びるホテルのOTA運用|手数料に負けない戦略設計で扱っています。
チャネルを移すときも、シェアの小さいほうから段階的に動かします。各施策で、追加の値引きと広告費と手数料の合計が、回避できた手数料と増分粗利を上回っていないかを確認し、崩れた時点で止めます。
なお海外には、規制で一部に掲載できなくなった52室の独立系ホテルが、稼働をほぼ維持したままへ移行したという報告があります。ただし業界メディアのスポンサード記事で第三者の検証はなく、原票にも「通常環境での再現性は別途検証が必要」とあります。自ら止めた場合に同じ結果になる保証はありません。
まとめ
この記事でお伝えしたかったことは3つです。
・依存は比率ではなく4条件(売上80%以上/業務の大半/手数料と販促費20%以上/1社45%以上)で判定する。どの条件が点灯しているかで打ち手が変わる ・は集客手段として見れば必ずしも高くない。実質手数料を4項目で出し、他の手段と同じ物差しに載せてから比べる ・見直しは分母の確定と観測の是正から。移行はシェアの小さいチャネルから段階的に進める
まずは直近1年の媒体別売上を並べて、最大の1社が全体の何割かを出してみてください。依存しているかどうかは、そこから判定できます。
読んで「なるほど」で終わらせていませんか?
“○○とは”は分かっても、自館に当てはめるとどうかは数字を見るのが近道です。いま売上を伸ばしている施設と、そうでない施設の差は、「どこで取りこぼしているか」に気づき、「いつ・何をすべきか」を数字で判断できているか。違いはそこだけです。
同じエリア・同じ規模の施設は、すでにデータを見ながら最適なタイミングで手を打ち始めています。一方で「分析する仕組みがない」「何から手をつければいいか分からない」と判断を後回しにしている間も、機会損失は静かに積み上がっていきます。
まずは”自館で実際に何が起きているか”を見るところから。それが、最適なタイミングで最適な一手を選べる施設への第一歩です。
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