「訪日外国人の予約は入るようになったけれど、どの国に向けて何を続ければよいのか決められない」。私たちmicadoはホテル・旅館の運用とマーケティングを支援しており、についてこうした相談をよくいただきます。の市場は、為替や航空便、国と国との関係で大きく動きます。去年うまくいったやり方が、今年も同じように効くとは限りません。
この記事は、向けマーケティングの施策を並べるのではなく、変化しやすい市場をどう読み、自社の料金や在庫、発信の向け先をどう決めるかを扱います。施策の全体像はインバウンド集客の7つの施策を扱った記事に任せ、ここでは市場の読み方と、それを予約につなげる判断に絞ります。
訪日外国人の市場は、何が変わりやすいのですか?
最初に、の市場が国内の市場とどう違うのかを押さえます。違いが分かると、どの数字を見ていればよいかも決まります。皆さまの施設では、訪日外国人の予約を国内の予約と分けて見ているでしょうか?
国・地域の構成は、為替や航空便、国と国との関係で動きます
訪日外国人の数は、日本の側の努力だけでは決まりません。円安が進めば日本への旅行は割安に感じられ、予約が増えやすくなります。地方空港に新しい国際線が飛べば、その国からの旅行者が周辺の地域に一気に増えることもあります。
反対に、国と国との関係が悪くなると、その国からの旅行がまとまって取り消されることがあります。これまでにも、外交の関係が冷え込んだ時期に、特定の国からの訪日旅行が短い期間で大きく減ったことが何度かありました。こうした変化は、施設がどれだけ良い発信をしていても避けられません。だからこそ、の予約は、国・地域ごとに分けて見ておく必要があります。全体の件数だけを見ていると、ある国の減少を別の国の増加が隠してしまい、変化に気づくのが遅れます。
予約の時期と泊数、予約する場が国内とは違います
訪日外国人の予約は、国内の顧客よりも早い時期に入ることが多く、泊数も長くなりやすい傾向があります。飛行機を先に押さえてから宿泊先を決める人が多いためです。また、国や地域によって長い休みの時期が違います。中華圏の旧正月や、欧米の夏の長い休暇のように、国内の連休とは別の時期に需要の山が来ます。
予約の場も違います。国内の旅行者は楽天トラベルやじゃらんを使うことが多い一方、訪日外国人はBooking.com、Expedia、Agoda、Trip.comといった海外のや、Googleの検索と地図から施設を探します。どの国の人がどの場で探しているかによって、在庫を出す先も、写真や説明文の書き方も変わります。海外のごとの役割は、海外OTAの4媒体の役割を扱った記事で整理しています。
旅行者が求めるものも、旅の回数と時期で変わります
同じ国からの旅行者でも、日本に初めて来る人と、何度も来ている人では求めるものが違います。初めての人は、有名な都市や観光地を効率よく回れる場所を選びがちです。何度も来ている人ほど、地方の町や食、温泉、地域ならではの体験に関心を向ける傾向があると言われます。
そのため、市場全体で訪日外国人が増えていても、自社の地域に来る人の顔ぶれは、都市部とは違う動き方をします。自社に泊まっている訪日外国人が、初めての旅で立ち寄っているのか、何度目かの旅で目的地として選んでいるのかによって、伝えるべき内容も変わります。前者には駅や空港からの行き方と周辺の見どころ、後者には自社で過ごす時間の価値を伝えると、選ばれる理由がはっきりします。
市場の変化を、自社の予約でどう読み取りますか?
次に、市場の変化を自社の数字で確かめる方法です。ニュースで訪日外国人が増えたと聞いても、それが自社に届いているかは別の話です。全体の動きと自社の動きを並べて初めて、取りこぼしが見えてきます。皆さまの施設では、国・地域別の予約を月ごとに並べた表があるでしょうか?
国・地域別に、件数と単価、泊数、予約の時期を並べます
まず、の管理画面や予約の一覧から、訪日外国人の予約を国・地域別に分けます。並べる項目は、予約の件数、1泊あたりの単価、泊数、宿泊日の何日前に予約されたかの4つです。これを月ごとに並べると、どの国からの予約が増えているか、どの国がどの時期に早く予約を入れているかが見えてきます。
この表から分かるのは、件数の多い国が、必ずしも売上に効いている国ではないということです。件数は少なくても、泊数が長く単価が高い国があれば、その国に向けた発信を厚くする価値があります。反対に、件数は多くても直前の予約が中心の国は、国内の需要が弱い日を埋める相手として考えられます。国ごとの違いを、件数だけでなく4つの項目で比べることが、向け先を決める出発点になります。
口コミと問い合わせの言葉から、求められていることを拾います
数字と合わせて見たいのが、訪日外国人が書いた口コミと、予約の前後に届く問い合わせです。海外のやGoogleの口コミには、英語をはじめさまざまな言語で、良かった点と困った点が具体的に書かれています。翻訳機能を使えば、言語が読めなくても内容はつかめます。国ごとに分けて読むと、褒められる点と不満の出る点が国によって違うことにも気づけます。
問い合わせで何度も聞かれることは、説明が足りていない部分です。駅からの行き方、大きな荷物の置き場、食事の制限への対応、支払いの方法などが典型です。同じ質問が続くなら、の説明文や公式サイトに先に書いておくことで、迷って予約をやめる人を減らせます。口コミで褒められている点は、その国の人に向けた写真や紹介文の最初に置く候補になります。
公的な統計と並べて、自社に届いていない需要を見ます
自社の数字だけでは、市場が伸びているのに自社が取り込めていないのか、市場そのものが縮んでいるのかが分かりません。そこで、公的な統計と並べます。日本政府観光局(JNTO)は国・地域別の訪日外客数を毎月公表しており、観光庁の宿泊旅行統計調査では、都道府県ごとの外国人の延べ宿泊者数を見られます。
たとえば、自社のある県で台湾からの宿泊者が増えているのに、自社には台湾からの予約がほとんど入っていない場合は、取りこぼしがある可能性が高いと考えられます。その国の人が使う予約の場に在庫を出しているか、その言語で説明が読めるかから確かめます。統計の数字の読み方は、旅行動向の数字の読み方を扱った記事で詳しく紹介しています。

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読み取った変化を、どう予約に変えればよいですか?
最後に、読み取った変化を、料金と在庫、発信の向け先に落とします。の予約を増やすときに大切なのは、国内の顧客との兼ね合いと、特定の国に頼りすぎないことの2つです。皆さまの施設は、訪日外国人の予約が急に減ったときに、どの層で埋めるかを決めているでしょうか?
料金と在庫は、国内の需要とぶつかる日とぶつからない日で分けます
訪日外国人の予約は早い時期に入るため、先に入った予約で在庫が埋まり、国内の需要が強い日に高い料金で売れたはずの客室がなくなることがあります。そこで、国内の連休や繁忙日のように国内の需要とぶつかる日は、海外のに出す在庫や料金を慎重に決めます。反対に、国内の需要が弱い平日や閑散期は、海外の長い休暇と重なれば、訪日外国人が埋めてくれる大切な日になります。去年の宿泊日ごとの予約を、国内と海外に分けて並べておくと、どの日に在庫をどちらへ寄せるかを前もって決めやすくなります。
料金を国内向けと海外向けでどう分けるかは、為替や各国の物価も関わる判断です。客室や食事の内容を変えずに料金だけを大きく分けると、比べられたときに不信感を持たれることもあるため、プランの中身で差をつける方法も含めて検討します。考え方は国内とインバウンドの二重価格戦略の記事で扱っています。
1つの国に頼らず、2〜3の国・地域に分けて育てます
予約の多い国に発信を集中させると、短い期間では効率が良く見えます。ただ、その国からの旅行が国際情勢や航空便の減便で止まると、予約が一度に落ちます。私たちは、主に向ける国を1つに決めたうえで、時期や旅の仕方が異なる国・地域を2つほど育てておくことをおすすめしています。
たとえば、旧正月に動く中華圏と、夏に長く滞在する欧米を組み合わせると、需要の山が分かれ、1年を通した稼働が安定しやすくなります。どの国を育てるかは、先ほどの国・地域別の表と、地域に来ている国の統計を見て決めます。国ごとに使うSNSも違うので、発信の向け先も合わせて分けます。訪日旅行者に向けたSNSの使い分けは、インバウンド向けSNS運用の記事で紹介しています。
ここは率直にお伝えします
国・地域別のデータは、によって出し方が違い、公式サイトからの予約では国が分からないこともあります。すべての予約を同じ精度で分けるのは難しいのが実情です。また、客室数の少ない施設では、国ごとの件数が少なく、月ごとの増減に意味を見いだしにくいこともあります。その場合は、3か月ごとにまとめて傾向を見るほうが判断を誤りにくくなります。完璧な表を作ることより、同じ形で続けて記録することを優先してください。
そして、ある国からの予約が急に増えたときほど、すぐに追いかけないことです。一時的な為替や話題によるものか、続く変化かを、2〜3か月の推移で確かめてから発信や在庫を動かしても遅くありません。慌てて在庫を寄せすぎると、国内の顧客を逃すことになるからです。

まとめ
向けマーケティングでは、施策を増やす前に、変化しやすい市場をどう読むかが成果を分けます。訪日外国人の市場は、為替や航空便、国と国との関係で国・地域の構成が動き、予約の時期や泊数、予約する場も国内とは違います。
自社の予約を国・地域別に、件数・単価・泊数・予約の時期の4つで並べ、公的な統計と比べて取りこぼしを見つけます。そのうえで、国内の需要とぶつかる日とぶつからない日で料金と在庫を分け、1つの国に頼らず2〜3の国・地域を育てます。急な変化は2〜3か月の推移で確かめてから動いてください。
読んで「なるほど」で終わらせていませんか?
施策は思いついても「どの順で・いつやるか」で止まっていませんか。いま売上を伸ばしている施設と、そうでない施設の差は、「どこで取りこぼしているか」に気づき、「いつ・何をすべきか」を数字で判断できているか。違いはそこだけです。
同じエリア・同じ規模の施設は、すでにデータを見ながら最適なタイミングで手を打ち始めています。一方で「分析する仕組みがない」「何から手をつければいいか分からない」と判断を後回しにしている間も、機会損失は静かに積み上がっていきます。
まずは”自社で実際に何が起きているか”を見るところから。それが、最適なタイミングで最適な一手を選べる施設への第一歩です。
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