「の予約を増やしたいので、海外に載せてみた。けれど予約はほとんど入らない」。私たちmicadoはホテル・旅館の運用を支援していますが、海外についてはこうした相談を繰り返し受けてきました。原因の多くは、媒体の選び方ではなく、載せたあとの運用にあります。海外は、国内と同じ感覚で掲載情報を整え、同じ感覚で割引を出すと、思ったように動きません。
この記事は、海外で対策を始める施設に向けた入口です。国内との違い、Booking.com・Expedia・Agoda・Trip.comの4つの媒体が得意なこと、始める順番を整理し、媒体ごとの詳しい記事へご案内します。
海外は、国内と何が違うのですか?
最初に、海外を国内と同じものとして扱わないための前提をそろえます。仕組みが似ているぶん、違いに気づかないまま運用してしまうことが多いからです。皆さまの施設では、海外の管理画面を、国内と同じ頻度で開いているでしょうか?
登録しただけでは、予約は増えません
海外への掲載は、手続きそのものは難しくありません。施設の情報を登録し、審査や確認が済めば、世界中の旅行者が検索できる状態になります。ただ、私たちが繰り返しお伝えしているのは、掲載は出発点にすぎないということです。検索結果には同じエリアの施設が数多く並び、何もしなければ下のほうに埋もれます。
まず整えたいのは、写真、客室の説明、設備の情報、キャンセル規定といった掲載情報です。これは費用がかからず、ほかの施設もやっている「載せるなら押さえるべきこと」なので、私たちは最優先に置いています。海外の旅行者は、日本の施設の慣習を知らない前提で読みます。食事の有無、客室の広さ、大浴場の利用方法、チェックインの時間など、国内向けなら書かなくても伝わることを、言葉と写真で補う必要があります。海外に載せるメリットと、運用の手間というデメリットの全体像は、海外OTA運用のメリット・デメリットの記事で整理しています。
見え方と負担が、国内と違う3つの点
運用を始めると、国内との違いが3つの点で表れます。1つ目は料金の見え方です。海外では、税や為替の扱いによって、国内の媒体と同じ料金を設定しても割高に見えることがあります。私たちが価格の原因を洗い出すときにも、海外の税や為替を含めた表示が割高になっていないかを、確認する項目の1つにしています。国内の媒体と並べて安く設定したつもりでも、旅行者の画面では高く見えている可能性があるので、実際の表示を一度は旅行者の側から確かめてください。
2つ目は負担の構造です。海外には、会員向けの割引や、検索結果での露出を強める代わりに手数料が上乗せされるプログラム、クリック課金の広告があります。契約の率だけでなく、上乗せを含めた実質の負担で見る考え方は、OTA手数料の上乗せの記事で扱っています。
3つ目は予約の動き方です。媒体によっては直前のキャンセルが多いなど、国内とは傾向が違うことがあります。キャンセル規定は媒体の特性に合わせて設計し直すのが安全です。国内と同じ規定をそのまま使うと、直前の空室を埋め直す手間が増えることがあります。
4つの海外は、それぞれ何が得意ですか?
海外と一口にいっても、媒体ごとに強い顧客層と、運用で効く施策が違います。ここではBooking.com、Expedia、Agoda、Trip.comの4つを取り上げ、私たちが運用の点検で見ている観点から特徴を整理します。皆さまの施設に泊まってほしいのは、どの国や地域の旅行者でしょうか?
Booking.comとExpedia
Booking.comでは、会員向けの割引であるGeniusへの参加を、まず押さえるべき施策としています。各の会員向け施策は確実に実行する、というのが私たちの運用の原則だからです。そのうえで、露出を強めるプログラムに参加するかどうかを判断します。全体の流れはBooking.comで予約を集める方法の記事、露出を強めるプログラムの判断はBooking.comの露出強化の記事、手数料の見方はBooking.comのコミッション管理の記事で扱っています。複数のを併用すると割引が二重にかかることがあるので、設定の定期的な確認も欠かせません。
Expediaは、航空券などと組み合わせるパッケージのに力を入れている媒体です。私たちは点検項目に、パッケージのへの参加と、クリック課金型の広告であるTravel Adsを手動で管理しているかを入れています。の使い方はExpediaのプロモーション活用の記事、Travel Adsの仕組みはExpedia TravelAds入門の記事をご覧ください。
AgodaとTrip.com
Agodaは、アジア圏の旅行者からの予約を伸ばしたい施設が検討することの多い媒体です。掲載順位を上げる手段としてAGXという仕組みがあり、私たちは点検の際に、AGXとほかのを併用したときに手数料が意図せず二重に乗っていないかを事前に確かめています。また、Agodaの割引率がほかのより意図せず高くなり、媒体間の価格の整合が崩れていないかも確認します。集客に使える機能の整理は、Agodaの集客機能の記事で扱っています。
Trip.comは、中国・香港・台湾といった中国語圏からのを取り込む媒体として位置づけています。大型のセールへの参加や、検索結果やおすすめの枠での露出を強めるスポンサー広告が、主な打ち手になります。どの販促機能をどの順に使うかは、Trip.comの販促機能の記事で整理しています。

どの媒体でも、掲載情報、会員向け施策、露出の3つを押さえるところから始めます。
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どの媒体から、どの順番で始めればよいですか?
4つの特徴が分かっても、すべてに同時に手を広げると、どれも中途半端になりがちです。私たちが支援で勧めているのは、狙う顧客層から媒体を選び、1つの媒体で運用の型を作ってから広げる進め方です。皆さまの施設では、海外の運用に、毎月どれくらいの時間を割けるでしょうか?
1つの媒体で型を作ってから広げます
最初の一歩は、泊まってほしい国や地域を決めることです。中国語圏を狙うならTrip.com、アジア圏ならAgoda、欧米を含めて幅広く狙うならBooking.comやExpediaというように、狙う顧客層が決まれば、優先する媒体が絞れます。すでに公式サイトや国内に海外からの予約がある施設は、その国籍の傾向が手がかりになります。
媒体を決めたら、掲載情報を整え、会員向け施策に参加し、そのうえで掲載順位を上げる広告かのどちらかを実行します。海外では露出を上げる手を何も打たないと、検索結果で埋もれやすいからです。は一律の割引ではなく、連泊の条件や国別、閑散期や平日といった条件を付けて強弱をつけます。宿泊の数日前に案内のメールを送り、アクセスやチェックインの方法を伝えておくと、当日の問い合わせや行き違いを減らせます。1つの媒体でこの流れが回るようになってから、2つ目の媒体に広げます。
ここは率直にお伝えします
私たちの支援の現場では、海外に複数掲載しているのに、どの媒体からどれだけ予約が来ていて、販促費をいくら使っているのかを、媒体ごとに把握できていない施設が珍しくありません。媒体を増やすほど管理画面が増え、料金の更新漏れや割引の重なりも起きやすくなります。
一方で、正直に書くと、海外の手数料の率やプログラムの条件は、契約や時期によって変わります。そのため、この記事では各社の手数料の相場は載せていません。自社の契約書と管理画面の請求明細を出発点にしてください。プログラムへの参加で上乗せされる率も、明細で項目ごとに確かめます。また、海外からの予約の増え方は、立地や客室の構成、狙う国によって大きく違い、ほかの施設で伸びた媒体が自社でも伸びるとは限りません。まず1つの媒体で試し、自社の数字で確かめてから広げるのが確実です。国内向けと海外向けの料金をどう分けるかは、国内とインバウンドを分ける二重価格の記事で扱っています。

狙う、整える、広げるの順に進めると、手を広げすぎずに海外からの予約を育てられます。
まとめ
海外は、登録しただけでは予約が増えません。料金の見え方、負担の構造、予約の動き方が国内と違うことを前提に、まず掲載情報を海外の旅行者に伝わる形に整えます。
媒体ごとの得意分野は異なり、Booking.comは会員向けの割引と露出のプログラム、Expediaはパッケージと広告、Agodaはアジア圏と順位を上げる仕組み、Trip.comは中国語圏とセール・広告が軸になります。狙う顧客層から媒体を1つ選び、掲載情報、会員向け施策、露出の順で型を作ってから広げる。この順番で進めれば、海外を継続的な売上の柱として育てられます。
読んで「なるほど」で終わらせていませんか?
施策は思いついても「どの順で・いつやるか」で止まっていませんか。いま売上を伸ばしている施設と、そうでない施設の差は、「どこで取りこぼしているか」に気づき、「いつ・何をすべきか」を数字で判断できているか。違いはそこだけです。
同じエリア・同じ規模の施設は、すでにデータを見ながら最適なタイミングで手を打ち始めています。一方で「分析する仕組みがない」「何から手をつければいいか分からない」と判断を後回しにしている間も、機会損失は静かに積み上がっていきます。
まずは”自社で実際に何が起きているか”を見るところから。それが、最適なタイミングで最適な一手を選べる施設への第一歩です。
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