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媒体の勢力図が変わっている|OTAへの予算配分を見直し

2026年9月24日 OTA 販売促進 河野 雄大

媒体の勢力図が変わっている|OTAへの予算配分を見直し

「卸売が伸びているらしい」「あの媒体が強くなっているらしい」。業界の勢力図が動いているという話は、定期的に入ってきます。ただ、その話を聞いて自館が何をすべきかは、ニュースの中には書かれていません。

媒体の営業から届く提案書も同じです。あれはメニューの一覧であって、投資判断ではありません。判断材料は、自分で作るしかない。作らないまま構成比だけを眺めていると、実際には何が起きているのか分からないまま配分だけが動いていきます。

この記事では、勢力図の変化が同じ媒体の中でも起きているという構造、自館の配分に落とすために分母を揃える方法、そして四半期に一度の棚卸しの手順を整理します。読み終えたとき、次の四半期に何を確認すればいいかが決まっている状態になります。

勢力図の変化は、同じ媒体の中でも起きている

媒体別の売上を並べると、変化は媒体と媒体のあいだで起きているように見えます。実際には、1つの媒体の内側でも起きています。

卸売は「別の販売面」ではなく、同じ媒体に同居している

新規開業の投資判断で媒体のポテンシャルを分析するとき、micadoは国内上の売上を2つに切り分けます。ひとつは広告が届くチャネル、つまり国内の一般利用者への販売。もうひとつは広告が届かないチャネルで、の提携先、海外のエージェント、そしてホールセラー経由の販売がここに入ります。

この切り分けが効くのは、卸売が「別の販売チャネル」ではなく「同じ媒体の中に同居している別の経路」だからです。媒体別の売上だけを見ていると、両方が1つの数字に混ざります。広告を打っても届かない売上と、届く売上が合算されたままでは、媒体の評価そのものがずれます。

つまり勢力図を見るときの単位は、媒体名ではありません。その媒体の中の、どの経路が伸びているのかまで降りる必要があります。

媒体の仕様変更で、意図しない経路に在庫が流れる

2026年7月、楽天トラベルが国内向けと向けの販売を統合しました。支援の現場では、この直後に、国内向けに作ったプランが海外の提携サイトへ自動的に配信されているのではないか、という疑いが出ました。同じチェーンの別施設でも同じ事象が確認されています。

暫定の対処としては、向けに別の料金を設定し、上で販売を止める形を取りました。ただ、ここで重要なのは対処法ではありません。施設が意識していない経路に、自館の在庫と価格が流れることがある、という事実のほうです。

媒体側の仕様は、こちらの都合とは無関係に変わります。変わったときに気づけるかどうかは、日頃どの単位で数字を見ているかで決まります。

同じ媒体の中で、チャネルが逆向きに動く

もう1つ、見落としやすい動きがあります。支援先の分析では、同じ時期に国内経由が前年を超え、海外経由は鈍化していました。エリアの需要が落ちたことが背景にあります。

このとき媒体別の合計だけを見ていると、全体はほぼ横ばいに見えます。中身が入れ替わっているのに、数字は動かない。そして翌年、が戻ったときに国内側の落ち込みが表面化します。

構成比だけでカニバリを判断しないのも同じ理由です。自社予約の構成比が下がっていても、件数では増えていることがあります。比率と実数は別の話として並べます。

なお、micadoが売上不振の原因を7つのレイヤーに分けて上から潰すとき、この「他チャネルへの移行」は下のほうに置いています。上のレイヤーを潰さないまま移行の話に飛ぶと、需要が減ったのか経路が変わったのかを取り違えたまま配分を動かすことになります。

勢力図は、媒体の中でも動いている

図の3つは、どれも媒体別の合計を見ているだけでは気づけません。分ける単位を変えるところから始まります。

自社の配分に落とすには、分母を揃える

構造が分かったら、次は自館の数字です。ここでつまずく原因は、たいてい分母にあります。

実質手数料は、4項目を足して媒体経由売上で割る

媒体のコストを契約上の手数料率だけで見ている施設は少なくありません。実際には、基本手数料に、ポイントの原資、広告費、クーポンの原資が乗ります。この4つを足して、その媒体経由の売上で割ったものが実質手数料です。

契約上は1割でも、実質では2割から3割に達しているケースがあります。ある媒体の定義で言えば、契約手数料に任意参加のプログラムの上乗せと割引原資を足す形になります。「任意参加」という言葉が示すとおり、上乗せしているコストの大半は施設側が選んで出している費用です。つまり、自分たちで下げられる数字でもあります。

月次で一枚の表にして、媒体ごとに並べる。これをやらないと、どの媒体が本当に高いのかが分かりません。手数料の中身を需要と取引に分けて考える整理は「直接予約」の定義が変わる|手数料を需要と取引に分けて考えるで扱っています。

広告の「射程」を分けないと、原資率を読み違える

広告費の評価にも、同じ分母の問題があります。

micadoが使う指標は、販促原資率です。広告費を、その広告が届く範囲の売上で割ります。目安として国内では20%以内、25%を超える設計は原則として見送ります。

ここで分母に媒体の総取扱を使ってしまうと、数字は実態より良く見えます。先ほどの切り分けのとおり、媒体経由の売上には広告が届かない経路の分が混ざっているからです。広告で動かせない売上まで分母に入れれば、原資率は当然下がります。

実際、冬のリゾートでは国内上の売上の大半が海外経由という測定例もありました。この状態で総取扱を分母にすると、広告の効率を大幅に過大評価することになります。分母を1つ変えるだけで、見送るべき提案が通ってしまいます。

媒体の役割は、名前ではなく自館の実績で決める

配分を決める前に、それぞれの媒体が自館にとって何をしている媒体なのかを定義します。micadoが使う軸は3つです。予約の、顧客層、そして販促コスト。

大事なのは、媒体名から役割を決めないことです。「この媒体は直前予約に強い」という一般論ではなく、自館の実績でそうなっているかを見ます。同じ施設でも媒体によって単価が1割前後ずれることがあり、その差が割引率の設計から来ているのか、客層の違いから来ているのかで打ち手が変わります。

オーナーからこう問われたことがあります。「総売上1億のためのチャネルなのか、1,000万のチャネルなのか分からないまま100万円を投下するのは気持ち悪い」。これは正しい問いです。答えるには、媒体の中を経路ごとに分けて、それぞれがいくらを作っているかを出すしかありません。

四半期に一度、棚卸しする

最後に、運用の手順です。棚卸しは、確認にかかる時間で仕分けると回しやすくなります。

まず、10分で終わる確認から

すぐ終わるものから潰します。

ひとつは価格の整合です。同じ日、同じ条件で、公式と主要の表示価格差が±2%以内に収まっているか。もうひとつはチャネル別の週次の推移です。国内と海外の合計が前年並みで構成比だけが変わっているなら、それは需要の増減ではなくチャネル間の移行と判断できます。

どちらも自分の手で10分あれば確認できます。micadoの原因リストでも、この2つは「自力で即取得」に分類されていて、誰かに依頼する必要がありません。その場で開いて、その場で終わる項目です。

移行だと分かった場合の打ち手も決まっていて、手数料込みの実質単価で媒体配分を組み直す、という方向になります。原因を確認しないまま全面的に値下げすることは、社内の施策記録で明確に禁止しています。

時間がかかる確認は、依頼して待つ

一方で、その場では取れない項目もあります。ここは正直に書いておきます。

卸売やエージェントに渡した価格が、どの販売面にいくらで出ているか。これを確認する基準は「エージェント経由の実勢価格が、価格の80%以上に収まっているか」と置いていますが、取得の難易度は高く、先方への依頼から1〜2週間はかかる項目に分類しています。自分で検索して終わる話ではありません。

アロットも同じです。に公開している室数が総室数の30%以上になっていないか、保持されている分が期日どおりに戻っているか。これも依頼して確認する側の項目になります。

時間がかかると分かっているなら、四半期の棚卸しを始めるときに真っ先に依頼を出す。待っているあいだに、10分で終わる確認を済ませます。

増やす・維持・絞るに、2つの軸を足す

最後の判断です。媒体ごとに増やすか、維持か、絞るかを決めますが、効果の見込みだけで決めません。2つの軸を足します。

1つ目は可逆性です。広告の予算配分はコストが低く、すぐ戻せます。検証も媒体別の費用対効果を前後で比べれば済みます。一方、料金の調整はコストが高く、副作用があり、戻すのに時間がかかります。同じ「配分の見直し」でも、性質がまったく違います。

2つ目は追跡できるかどうかです。手数料を上乗せして掲載順位を上げるタイプのプログラムは、効果を直接測れない分類に入れています。測れないものは、増やすか絞るかの判断ができません。

そして、広告を触る前に確認することがあります。の提携先経由の売上が、前年から大きく落ちていないか。ここは最大のレバーになりやすい場所です。広告の配分を動かすより先に、こちらを直したほうが効くことがあります。

棚卸しは、確認にかかる時間で仕分ける

図の3段は、そのまま四半期の作業手順になります。依頼を先に出すことだけ、順番を守ってください。

まとめ

この記事でお伝えしたかったことは3つです。

・勢力図の変化は媒体間だけでなく、1つの媒体の中でも起きている。卸売や海外エージェントは別の販売面ではなく、同じ媒体に同居している別の経路 ・配分を決める前に分母を揃える。実質手数料は基本手数料・ポイント・広告費・クーポン原資の4つを足して媒体経由売上で割り、広告の原資率は届く範囲の売上で割る ・棚卸しは確認にかかる時間で仕分ける。時間のかかる依頼を先に出し、10分で終わる確認を並行させる。判断には可逆性と追跡可否を足す

まずは直近の四半期について、媒体別の売上を「広告が届く経路」と「届かない経路」に分けてみてください。配分の議論は、そこから始まります。

読んで「なるほど」で終わらせていませんか?

比較はしても「自館にとっての正解」は数字を見ないと決まりません。いま売上を伸ばしている施設と、そうでない施設の差は、「どこで取りこぼしているか」に気づき、「いつ・何をすべきか」を数字で判断できているか。違いはそこだけです。

同じエリア・同じ規模の施設は、すでにデータを見ながら最適なタイミングで手を打ち始めています。一方で「分析する仕組みがない」「何から手をつければいいか分からない」と判断を後回しにしている間も、機会損失は静かに積み上がっていきます。

まずは”自館で実際に何が起きているか”を見るところから。それが、最適なタイミングで最適な一手を選べる施設への第一歩です。

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この記事を書いた人

河野 雄大

河野 雄大

マーケティングコンサルタント

シティホテル→グローバルホテル→株式会社micadoで、OTA運用×デジタルマーケティング×メディア編集者を担当しております!OTA運用やレベニューマネジメントなどの経験をもとに、全国のホテル・旅館様のお役に立てるような情報をお届けできる情報を発信していきます。

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監修

田代貴彦

株式会社micado 代表取締役

マーケティング支援実績700社以上