「閑散期は、値下げしてでも埋めたほうがよいのでしょうか」。私たちmicadoはホテル・旅館の運用と料金の判断を支援しているので、需要が落ちる時期が近づくと、この質問をよくいただきます。予約が入らない日が続くと、料金を下げる、広告を増やす、とすぐに手を打ちたくなるものです。
ただ、閑散期に予約が入らない原因は、需要の弱さだけではありません。原因を確かめないまま手を打つと、利益を削っても予約が増えない、ということが起きます。この記事では、閑散期に間違えやすい3つの判断と、値下げの前に確かめる順番、閑散期に効きやすい打ち手を整理します。
閑散期に間違えやすい判断は、どれですか?
打ち手の前に、閑散期によく見られる判断の間違いを確かめておきます。どれも、その場では合理的に見えるのが厄介なところです。皆さまの施設では、閑散期に予約が入らないとき、最初に何をしているでしょうか?
1つ目は、まず料金を下げることです
予約が入らないとき、最初に料金を下げる判断は珍しくありません。ただ、私たちは単価を下げる施策を最後の手段だと考えています。需要が弱い日に料金を下げても、そもそも旅行を考えている人が少なければ、予約は思ったほど増えないからです。
さらに、同じエリアの施設が次々に料金を下げると、価格の競争になります。稼働は少し上がっても、1室あたりの売上が下がり、閑散期が終わった後も料金を戻しにくくなります。下げた料金を見た人が、それを施設の本来の価格だと受け止めてしまうからです。
料金を下げる前に、まず写真やプランの見せ方、露出、対象とする人の絞り込みといった、価格以外の打ち手で解決できないかを確かめます。値下げが効く日と効かない日の見極め方は、値下げが効かない日を扱った記事で整理しています。
2つ目は、繁忙期と同じ広告の出し方をすることです
閑散期に予約を取りたいからと、繁忙期と同じ予算と同じ出し方で広告を出す判断もよく見られます。ただ、需要が弱い時期は、広告を見て予約する人の数そのものが少なくなります。同じ費用をかけても、予約1件あたりの獲得費は上がりやすくなります。
広告を出すなら、誰に、どの日のために出すのかを絞ります。稼働が低い特定の日に、その日を探している人へ向けて表示を強める広告であれば、費用を抑えて効果を確かめられます。予算の上限は必ず決め、広告費を予約件数で割った獲得費を確かめます。
売上やだけで判断すると、利益が残っていないことに気づけません。手数料や割引を差し引いた後に残る額で判断します。広告を増やしても予約が頭打ちになっているなら、追加の費用は回収できていません。
3つ目は、閑散期のすべての日を同じように扱うことです
閑散期と呼ばれる時期の中にも、予約が入る日と入らない日があります。週末や地域の行事がある日は、閑散期でも埋まることがあります。それにもかかわらず、閑散期のすべての日に同じ割引をかけると、割引がなくても売れたはずの予約まで安く売ることになります。
閑散期の判断は、時期ではなく日ごとに行います。予約の入り方を日ごとに見て、埋まりそうな日は料金を保ち、本当に弱い日だけに手を打ちます。
その日の残室の割合に応じて料金を動かすルールを決めておくと、判断が担当者の感覚に左右されにくくなります。たとえば残室が半分を切ったら料金を上げ、2割を切ったらさらに上げる、といったルールです。閑散期でも、埋まり始めた日には上げる方向の判断が必要です。
値下げの前に、何から確かめればよいですか?
閑散期に予約が入らないと、需要が落ちたからだと考えがちです。ただ、需要の話をするのは、他の原因を確かめてからです。私たちは、予約が伸びない原因を上から順に確かめる順番を決めています。皆さまは、需要のせいにする前に、どこまで確かめているでしょうか?
在庫と販売条件、価格、露出の順に確かめます
最初に確かめるのは、在庫と販売条件です。閑散期の日の在庫がきちんと出ているか、最低泊数の制限やプランの販売期間が意図どおりかを見ます。閑散期は予約が少ないため、設定の漏れに気づきにくい時期でもあります。
次に価格です。周辺の施設と比べて高すぎないか、反対に安すぎて取れたはずの売上を逃していないかを確かめます。料金だけでなく、割引やクーポンが重なって意図より安く売れていないかも見ます。
そのうえで、露出と見せ方を確かめます。施設ページが検索結果に出ているか、写真や説明が古いままになっていないか、閑散期に来る人に合ったプランがあるかです。ここまで確かめて問題がなければ、ようやく需要の弱さを原因として扱います。
閑散期の需要を、去年と今年で比べます
需要が原因だと考えるときも、思い込みで決めず、数字で確かめます。去年の同じ時期の予約の入り方と、今年の入り方を並べます。去年も同じように弱かったのであれば、それはその時期の性格です。今年だけ弱いのであれば、何かが変わっています。
今年だけ弱い場合は、周辺の施設の料金の動き、地域の行事の日程のずれ、交通の変化などを確かめます。去年あった特別な需要がなくなっただけ、ということもあります。去年の数字に特別な需要が含まれていないかも、あわせて見ておきます。
予約が入る時期も比べます。宿泊日のどのくらい前に予約が入っているかが、去年より直前に寄っているなら、早い時期の予約を取りこぼしている可能性があります。
他の媒体に移っただけではないかを確かめます
特定ので予約が減っていても、施設全体では減っていないことがあります。予約が別のや公式サイトに移っただけであれば、閑散期の問題ではなく、媒体の配分の問題です。予約が伸びない原因を土台から確かめる考え方は、じゃらんの集客を扱った記事でも整理しています。
そのため、媒体ごとの予約を見る前に、施設全体の予約件数と売上を確かめます。全体が減っていなければ、慌てて料金を下げる必要はありません。全体が減っている場合に限り、閑散期の打ち手を考えます。
この確かめ方を飛ばすと、ある媒体で値下げをした結果、別の媒体や公式サイトの予約がそちらへ移るだけ、ということも起きます。公式サイトより安い料金がに出れば、公式サイトから予約していた人まで、へ移ってしまいかねません。媒体ごとの料金の差は、閑散期こそ崩さないように見ておきます。

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ホテルの閑散期に効きやすい打ち手は、何ですか?
原因を確かめて、需要の弱さに手を打つと決めたら、打ち手を選びます。私たちは、閑散期の打ち手を、先の予約を取りにいく根本の改善と、直前の予約を取りにいく延命の処置に分けて考えています。皆さまの施設の閑散期の打ち手は、どちらに偏っているでしょうか?
先の予約を、早い時期から取りにいきます
根本の改善は、閑散期の予約を早い時期から積み上げることです。宿泊日の何十日も前に予約すると割引になる早割のプランを用意し、セールへの参画と組み合わせて後押しします。先の期間だけを対象にしたクーポンやポイントを出す方法もあります。
需要が弱いと分かっている先の期間は、あらかじめ手頃な料金で販売しておく方法もあります。直前になってから下げるより、早い時期に計画して出したほうが、価格の競争に巻き込まれにくくなります。
海外ので、連泊を条件にした割引や、国ごと、客室ごとの割引を組み合わせ、国内の閑散期と時期がずれる海外からの需要を取りにいく方法もあります。どの打ち手も、閑散期に入ってからでは間に合いません。数か月前から準備を始め、閑散期の前に予約を積み上げておくことが前提です。
直前の打ち手は、下限を決めて使います
延命の処置は、直前の予約を取りにいく打ち手です。日付を指定して表示を強める広告、直前の予約を対象にしたクーポンやポイント、直前の予約専用のプランなどがあります。周辺の施設の動きを毎日確かめ、素早く対応することも含まれます。稼働の低い日を探している人に絞って届けられるのが、この種類の打ち手の利点です。
直前の打ち手を使うときは、守りたい下限の料金を先に決めます。割引を重ねるうちに下限を割ってしまうと、閑散期が終わった後まで影響が残ります。直前の打ち手だけで閑散期を乗り切ろうとすると、毎年同じことの繰り返しになり、閑散期の構造は変わりません。直前の打ち手は、先の予約を取りにいく打ち手を補うものとして使い、閑散期の終わりには、どちらの打ち手でどれだけ取れたかを振り返ります。
ここは率直にお伝えします
閑散期をなくす打ち手はありません。需要が弱い時期があること自体は、施設の努力では変えられない部分もあります。私たちが目指すのは、閑散期を埋め切ることではなく、利益を削らずに、取れる予約を取りこぼさないことです。
また、閑散期の打ち手は、施設の立地や客層によって効き方が違います。他の施設で効いた打ち手が、自社でも効くとは限りません。同じのセールでも、施設によって効果が分かれることを私たちは見てきました。打ち手を1つずつ試し、効果を確かめながら進めることをおすすめします。複数の打ち手を同時に始めると、どれが効いたのかが分からなくなります。閑散期の失敗例と打ち手は閑散期の戦略を扱った記事、値下げに頼らず需要をつくる考え方は閑散期の需要創出を扱った記事でも整理しています。

まとめ
閑散期に間違えやすい判断は、まず料金を下げること、繁忙期と同じ広告の出し方をすること、閑散期のすべての日を同じように扱うことの3つです。単価を下げるのは最後の手段で、判断は時期ではなく日ごとに行います。
値下げの前に、在庫と販売条件、価格、露出の順に確かめ、需要は去年と今年で比べ、他の媒体に移っただけではないかも確かめます。打ち手は、早い時期から先の予約を取りにいく根本の改善を軸にし、直前の打ち手は下限の料金を決めて使います。
読んで「なるほど」で終わらせていませんか?
施策は思いついても「どの順で・いつやるか」で止まっていませんか。いま売上を伸ばしている施設と、そうでない施設の差は、「どこで取りこぼしているか」に気づき、「いつ・何をすべきか」を数字で判断できているか。違いはそこだけです。
同じエリア・同じ規模の施設は、すでにデータを見ながら最適なタイミングで手を打ち始めています。一方で「分析する仕組みがない」「何から手をつければいいか分からない」と判断を後回しにしている間も、機会損失は静かに積み上がっていきます。
まずは”自社で実際に何が起きているか”を見るところから。それが、最適なタイミングで最適な一手を選べる施設への第一歩です。
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