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稼働を上げても減収になる構造|量と値段を分ける設計

2026年9月7日 OTA レベニューマネジメント 販売促進 柴田 京華

稼働を上げても減収になる構造|量と値段を分ける設計

は上がっている。でも売上が伸びない」。ここ数年、この感覚を持つ施設が増えています。感覚ではなく、構造として起きていることです。

米国の2026年上期のデータでは、高級帯は客室単価10.1%増と稼働3.4ポイント増を同時に達成して(販売可能客室あたり売上)が15.9%増えた一方、エコノミー帯は稼働が全価格帯で最大の伸び(4.6ポイント増)を記録しながら、客室単価9.3%減で減収になりました。稼働を取った側が減収になり、単価を取った側が増収になった。解説ではこの分断を「誰が旅行するかの差ではなく、値上げをどこまで受け入れてもらえるか=価格許容度の差」と整理しています。

米国の価格帯別データを日本の中規模施設にそのまま当てはめることはできません。ただ、「稼働を上げる施策が減収を加速させる構造」は、日本の現場でも起きています。この記事では、その構造と、「量を取る層」と「値段を取る層」を分ける設計を整理します。

を第一KPIにすると、減収に気づきにくい

まず構造から見ます。売上は「客室単価()×(OCC)×販売できる客室数」で決まります。はこの3要素の1つにすぎません。ところが現場では、が最も目に見えやすく、日々の会話に上がりやすい数字です。

稼働を上げる施策が単価を削る仕組み

稼働を上げる最も手軽な手段は値下げです。値下げはたしかに稼働を動かします。ただ、値下げで取った稼働は、取った分だけ単価を削ります。エコノミー帯のデータが示すように、稼働が最大に伸びても、単価の下落がそれを上回れば減収です。を第一KPIに置く運用では、この「上がっているのに減っている」状態に、月次の集計まで気づけないことがあります。

売上の分解の式 客室単価××販売できる客室数

さらに注意が必要なのは、販売在庫が月内で変動する施設です。売れた分だけ在庫が足される運用では、の分母が動くため、では施策の効果自体を測れません。が横ばいでも、室数売上は伸びているかもしれないし、その逆もあり得ます。

外部データの教訓、課題は稼働ではない

外部データの解説は、エコノミー帯の課題を「稼働を上げることではなく、追加の需要がどの価格まで利益になるかを見極めること」と指摘しています。稼働を追うか、単価を追うかではなく、「追加の1室が利益になる境界」を把握しているかどうかが分かれ目です。

量の層と値段の層を分けて設計する

では、どう設計するか。micadoが支援する現場の実例から見ていきます。

顧客構造は二層で見る

ある支援先の顧客分析では、「1名のお客さまで稼働を作り、グループ・高付加価値のお客さまで売上を作る」という二層の構造が確認されました。件数を作る層と売上を作る層は、同じ客ではありません。この2つを同じ価格・同じプランで取りにいくと、どちらかを必ず取りこぼします。

分けると、設計が変わります。量を取る層には稼働の土台を作る役割を、値段を取る層には単価と利益を作る役割を持たせ、価格とプランを層ごとに設計する。「全部の客に全部の価値を売る」のではなく、「どの層に、何を、いくらで」を分けるのです。

量を作る層と値段を作る層の二層構造

相対価格で稼働を読む

もう1つの実例です。ある支援先では、自社と競合の価格と残室を同一時点・同一粒度で定点取得し、相対価格(自社の最低価格が競合の中央値より何%高いか)と稼働の関係を曜日別に追っています。実測では、市場中央値より上に置いた平日は稼働5%前後で実質的に売れず、中央値より下では稼働が桁違いに変わりました。

ここから分かるのは、稼働は自社の価格の絶対値ではなく、市場の中での相対位置で動くということです。そして、競合各館が値上げしている日は「需要日」のシグナルとして外から読めます。値下げの判断を自社の稼働だけで行うのではなく、市場の中での位置で行う。これが「量と値段の両立」の実務です。

減収の構造から抜けるための3つの確認

最後に、自社がこの構造に入っていないかを確認する手順を3つ置きます。

確認1:稼働と単価を別々に見ているか

月次の報告で、・客室単価・室数売上を分けて見ているかを確認します。だけが上がって単価が下がっている月は、成長ではなく構造の悪化です。2つを掛けた室数売上で見るのが最低条件です。

確認2:層ごとの単価と室数を把握しているか

「どの層が、いくらで、何室」を分けて見ているかを確認します。1名客と、グループ・高付加価値客で、単価も予約の入り方も違います。全体平均で見ていると、層の崩れに気づけません。

確認3:追加の1室の利益境界を把握しているか

変動費を込みで、「この価格以下で売ると、売れるほど利益が削られる」境界を把握しているかを確認します。稼働を上げる施策を打つ前に、その施策で取れる価格が境界を上回るかを確かめる。これが「追加の需要がどの価格まで利益になるか」の実務です。

まとめ

この記事でお伝えしたかったことは3つです。

は売上の3要素の1つにすぎない。稼働を上げる施策が単価を削り、減収を加速させる構造はデータでも確認されている

・件数を作る層と売上を作る層は同じ客ではない。「量の層」と「値段の層」を分けて、価格とプランを設計する

・稼働は絶対価格ではなく市場の中の相対位置で動く。値下げの判断は、自社の稼働だけでなく相対価格で行う

価格許容度の差は、価格帯の差ではなく設計の差です。まずは直近3ヶ月のと客室単価を並べてみてください。「上がっているのに減っている」が見えたら、それが設計を変える合図です。

読んで「なるほど」で終わらせていませんか?

施策は思いついても「どの順で・いつやるか」で止まっていませんか。いま売上を伸ばしている施設と、そうでない施設の差は、「どこで取りこぼしているか」に気づき、「いつ・何をすべきか」を数字で判断できているか。違いはそこだけです。

同じエリア・同じ規模の施設は、すでにデータを見ながら最適なタイミングで手を打ち始めています。一方で「分析する仕組みがない」「何から手をつければいいか分からない」と判断を後回しにしている間も、機会損失は静かに積み上がっていきます。

まずは“自社で実際に何が起きているか"を見るところから。それが、最適なタイミングで最適な一手を選べる施設への第一歩です。

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この記事を書いた人

柴田 京華

柴田 京華

マーケティングコンサルタント

シティホテル→旅館マーケティング会社→株式会社micadoで、SNS運用×SEO・MEO対策×広告戦略を担当!デジタルマーケティングを通じて、ホテル・旅館の魅力をより多くのお客様に届けるために、Web広告やSNS、公式サイト運用を通じて集客支援を行っています。これまで培ったホテル業界での経験とマーケティングの知見を活かし、宿泊施設様の収益最大化とブランド価値向上に貢献できる情報を発信していきます!

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監修

田代貴彦

株式会社micado 代表取締役

マーケティング支援実績700社以上