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値下げが効かない日の見極め方|ホテルの料金判断の順序

2026年8月27日 OTA レベニューマネジメント 国内OTA 海外OTA mint編集部

値下げが効かない日の見極め方|ホテルの料金判断の順序

「売れていない日を見つけたら、まず価格を下げる。それでも埋まらなければ、もう一段下げる。」日別の料金判断を任されている方なら、この手順に心当たりがあると思います。感覚で下げて、結果を検証しないまま翌日も下げる。この繰り返しが、気づかないうちに単価だけを削っていきます。

外部環境も、このやり方が通用しにくい方向に動いています。2026年上期の世界のホテル業績では、の伸びが止まり、増収の主役は(平均客室単価)に移ったと報告されています。稼働で取り切れない局面で値下げを続けても、残るのは下がった単価だけです。

ただし、問題は「値下げするか、しないか」の二択ではありません。下げても埋まらない日と、下げると確実に損をする日は、データで先に見極められます。この記事では、支援先で1か月分の宿泊日を同一条件で集計した実測をもとに、「値下げが効かない日」の見極め方と、単価主導の局面での料金判断の順序を整理します。

値下げが効かない日は、実測で見えてくる

値下げは「効く」ことを前提に打たれることがほとんどです。しかし、本当に効いているかを検証したことがある施設は多くありません。まず、ある支援先で行った集計と、そこから見えた事実を共有します。

同一条件で23日分を集計すると、価格と残室はほぼ無相関だった

ある都市部の中規模ホテルで、宿泊日の1日前時点の価格と残室を、自館と競合とも同じモニタリング情報から取得し、23日分を集計しました。全社が同一時点・同一粒度のデータです。出てきた結果は、現場の想定と逆でした。価格ポジション(競合最安値との差)と相対的な残室(自館−競合平均)の相関係数はマイナス0.13。ほぼ無相関です。

驚いたのは、エリア最安にした日の結果です。最安だった5日のうち、安さが埋まりに効いたと言えるのは1日だけでした。しかもその日は残室1室で、そもそも売る在庫がほぼない日です。残りの日には、自館がエリア最安なのに残室が最も多い、という状態すらありました。競合より千円以上高い施設が先に残り少なくなっている日もあったのです。

この集計から言えるのは、「安くすれば競合より先に埋まる」という関係が、この施設のこの期間には存在しなかったということです(事実)。つまり、値下げで室数を取るという発想は、少なくともこの条件では成立していません(解釈)。この施設では、値下げで室数を取る発想を一度止めるという結論に至りました。

なぜ安くしても先に埋まらないのか

構造から見ると、この結果は不思議ではありません。近年の宿泊予約は、直前化と比較検討の増加が指摘されています。お客さまは複数の媒体を見比べたうえで、価格だけでなく、残室の表示、口コミ、キャンセル条件、写真の印象を総合して選んでいます。価格は比較の要素の1つでしかなく、最安であることは選択の十分条件ではありません。

在庫の構造も影響します。同じ日の残室は施設ごとの販売在庫の規模に左右されるため、社間の絶対比較はそもそも成立しません。見るべきなのは「同じ日・同じ市場で、安い側が先に埋まっているか」という方向だけです。

なお、逆方向の読み間違いにも注意が必要です。この集計では、最高値だった日に自館が最も埋まって見える日がありましたが、それは単価が高かったからではなく、その時期に該当部屋タイプの在庫がほぼ枯れていたためです。「高くした方が埋まる」と読むのも誤りです。データが示すのはあくまで、安さと埋まりの早さの関係が出ていない、という一点に限定されます。

だから判断の前提を変えます。問いを「値下げするか」から「この日は値下げが効く日か」に置き換える。次は、その見極めの基準です。

見極めの基準

無相関でも、損をしている日ははっきりしていました。このセクションでは、実測から導いた2つの基準、「上限の設定」と「判断対象から外す日」を整理します。

上げすぎた日だけが、明確に損をしている

同じ集計で、予約が純減したウィンドウを拾うと、そのすべてが競合より高い日でした。競合平均を大きく超えた日は、例外なく予約が純減しています。一方で、投げ売りに近い水準まで料金を下げた日は、最終的な稼働も4割前後に止まっていました。深く下げても取り返せない、という事実です。

つまり、価格で明確にコントロールできるのは「上げすぎの損」を防ぐことだけです。だから上限だけを先に決めます。「競合平均を大きく超えない」という一本のルールを設けるだけで、純減の多くは防げます。値決めで勝ちに行くのではなく、値決めで損をしない状態を先に作る。これが上限設定の考え方です。

この上限は、需要カレンダーと競合の帯から施設ごとに決めるもので、業界共通の数値はありません。大事なのは、超えたときに何が起きるかを自館のデータで確認してから線を引くことです。

残室がわずかな日は、判断対象から外す

もう1つの基準は、除外です。同じ宿泊日を配信日ごとに追跡すると、残室1〜2室の日に値下げをしても、残室は動いていませんでした。埋まる室数が変わらないので、単価だけが落ちている状態です。売る在庫がほぼない日の値下げは、効果の有無以前に意味がありません。

そこで支援先では、日別の判断を2つの数字だけで行う運用に変えました。1つは自館の残室表示(余裕があるかどうか)、もう1つは一定日数前のが分岐点を超えているかどうかです。分岐点の数値は自館の実績から決めます。この施設では14日前のに分岐点を置き、実績との整合を確認したうえで運用しています。

残室と一定日数前のの2つで仕分ける判断マトリクス

図のとおり、値下げが効くのは「残室に余裕があり、稼働が弱い日」だけです。残室がわずかな日は下げても動かず、稼働が進んでいる日は据え置いても高稼働に届く。日別の判断は、この4象限に落とし込めます。

あわせて、競合の価格ポジションは判断材料から外しました。相関が出ていない指標を毎日見ても、判断はぶれるだけです。見る数字を2つに絞ること自体が、判断のぶれを減らす仕組みになります。

ここまでで、日別の判断は「上限を守る」「効かない日を外す」の2つに絞れました。最後は、単価主導の局面での「順序」の話です。

稼働を確保してから上げる

同じ値上げでも、かけるタイミングで結果は変わります。最後に、定例のレベニュー会議から生まれた「順序」の知見と、値下げに使っていた原資の振り替え先を整理します。

前年の反省から生まれた「稼働→単価」の順序

別の支援先では、市場内の順位を維持していても(販売可能客室1室あたりの売上)が過去最低になり、の下落幅が競合と同水準まで進んでいました。マーケットと同じ速度で下がっている状態です。この施設が選んだのは、値下げで稼働を追うことではなく、順序の変更でした。

前年の年末は、先に値上げをして裏目に出ています。稼働の土台がない値上げは、予約の流入を止めてしまう。その反省から、翌年の年末は「まず稼働を一定水準まで確保してから値上げする」という順序に変えました。あわせて、大型セールの期間は好調日のプランを売り止めて単価の希薄化を防ぎ、媒体間で平均単価に差が出ていたため、割引率の設定も見直しています。

単価主導の局面で必要なのは、値上げの勇気ではありません。上限を決め、効かない日を外し、稼働を確保してから上げるという、順序の設計です。順序が決まっていれば、個別の日の判断に迷う時間は減ります。

値下げの原資は、露出・セール・プラン設計へ振り替える

値下げを止めると、手間と原資が浮きます。この振り替え先を持たないと、結局また値下げに戻ってしまいます。支援先では、セール期を集客の主戦略に据え、値下げに回していた原資をセール設計、露出の強化、連泊プランの設計に集約しました。価格で動かせない需要は、見せ方と条件で取りに行くという発想です。

上限設定・除外・稼働確保・値上げの4手順と原資の振り替え先

図の4手順は、上から順にしか進みません。上限も決まっていないのに日別の微調整を始めると、判断が散らかります。先に構造を決めてから、日々の操作に入る順番です。

この運用を自館で再現するための条件は2つです。1つは、自館と競合が同一時点・同一粒度で取得できる価格モニタリング。もう1つは、自館の一定日数前のを継続して持っておくことです。なお、モニタリングツールがどの部屋タイプの価格を取得しているかは、運用前に必ず確認してください。取得対象がずれていると、比較そのものが成立しません。

最後に1点。販売在庫が月内で変動する施設では、では施策の効果を測れません。売れた分だけ在庫が足されると、は動かないからです。この場合は、評価指標を週次の純増室数(ピックアップ)に切り替えることをおすすめします。

判断を順序と基準に落とせば、担当者が変わっても同じ日に同じ手が打てます。属人の感覚から、仕組みの判断へ。それが単価主導の局面を乗り切る土台です。

まとめ

この記事でお伝えしたかったことは3つです。

・値下げが効かない日は実測で見極められる。価格ポジションと残室の相関はほぼ出ない

・上限を先に決め、残室がわずかな日は判断対象から外す。見る数字は残室と一定日数前のの2つで足りる

・値上げは稼働を確保してから。値下げに使っていた原資は、露出・セール・プラン設計へ振り替える

明日の料金判断から使える基準はシンプルです。その日の残室と、一定日数前のを見て、「この日は下げて効く日か」を確認する。それだけで、単価だけが下がる状態は止められます。

値下げそのものは悪いことではありません。効かない日に使い続けることが問題なだけです。まずは直近1か月分の価格と残室を、自館と競合で同一条件に揃えて並べてみてください。自館の「効かない日」の輪郭は、そこから見えてきます。

読んで「なるほど」で終わらせていませんか?

下げるか迷う前に、その日が“効く日”かどうかを数字で確認していますか。

いま売上を伸ばしている施設と、そうでない施設の差は、「どこで取りこぼしているか」に気づき、「いつ・何をすべきか」を数字で判断できているか。違いはそこだけです。

同じエリア・同じ規模の施設は、すでにデータを見ながら最適なタイミングで手を打ち始めています。一方で「分析する仕組みがない」「何から手をつければいいか分からない」と判断を後回しにしている間も、機会損失は静かに積み上がっていきます。

まずは"自館で実際に何が起きているか"を見るところから。それが、最適なタイミングで最適な一手を選べる施設への第一歩です。

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この記事を書いた人

mint編集部

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ホテルマーケティングコンサルタント

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監修

田代貴彦

株式会社micado 代表取締役

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