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2025.05.01
ホテル業界において、「閑散期」は多くの経営者やマーケティング担当者の頭を悩ませる課題です。客足が遠のき、稼働率が低下するこの時期を、単なる「耐え忍ぶべき期間」と捉えていては、持続的な成長は見込めません。
しかし、視点を変えれば、閑散期はホテルのブランド価値を高め、熱心なファンを育て、未来の安定収益に繋げるための絶好のチャンスとなり得ます。
本記事では、ホテルマーケティングのプロフェッショナル集団である私たちmicadoが、割引だけに頼らず、閑散期をホテルの”強み”に変えるための本質的な集客戦略を徹底解説します。よくある失敗例から学び、明日から実践できる具体的な5つの戦略、そして最新のDXトレンドまで、未来を見据えた閑散期対策のすべてをお伝えします。
「閑散期だから売上が落ちるのは仕方ない」と考えてしまうのは危険です。閑散期の対策不足は、単なる一時的な売上低下にとどまらず、ホテル経営の根幹を揺るがしかねない問題を引き起こします。
閑散期の売上減少は、固定費の負担割合を高め、利益率を大幅に悪化させます。さらに、稼働率の低下はスタッフのモチベーションやサービス品質維持、将来の繁忙期への体制作りにも影響を及ぼします。
一方で、閑散期は丁寧な顧客対応や新サービスを試す貴重な時間です。顧客と向き合い関係性を深め、ロイヤルカスタマーを育成する絶好の機会。スタッフ教育やオペレーション改善にも集中できます。
目先の稼働率のために安易な値下げや場当たり策に走ると、利益率は低下し、「安いホテル」のイメージが定着するリスクが。価格で選ぶ顧客はリピーターになりにくく、長期的な安定収益には繋がりません。「ブランド価値向上」と「ファン育成」の視点が不可欠です。
閑散期をどう捉え、どう対策するかは、ホテルの未来を左右する重要な経営戦略なのです。
良かれと思った施策が、逆効果になっていることも。多くのホテルが陥る失敗パターンと、micadoが警鐘を鳴らす理由を解説します。これらの「落とし穴」を知ることが成功の鍵です。
安易な割引は消耗戦を招き、利益率を著しく低下させます。「安さ」だけが選択理由となり、ホテルの価値が伝わらず、「安い時しか泊まらないホテル」に。時間をかけて築いたブランド価値を自ら毀損する行為です。
OTAへの過度な依存は、手数料で利益率を圧迫するだけでなく、顧客データをホテル側で活用しにくくします。顧客との直接的な関係構築が難しくなり、独自の魅力伝達やリピーター育成の機会を失い、依存から抜け出せなくなります。
その場しのぎのキャンペーンは継続性がなく、根本解決になりません。労多くして効果測定も曖昧になりがち。「待てば安くなる」と顧客が学習し、通常価格での予約をためらう可能性も生じます。
これらの失敗パターンに共通するのは、「短期的な稼働率向上」のみを目的とし、「長期的な視点(ブランド価値、利益率、ファン育成)」が欠けている点です。では、どうすれば閑散期でも「売上」と「ブランド」を両立させることができるのでしょうか?
私たちmicadoは、付け焼き刃のテクニックではなく、ホテルの本質的な価値を高め、持続可能な成長を促す戦略を重視します。閑散期を乗り越え、未来への飛躍に繋げるための「micado流」戦略を今回は5つ、ポイントを絞ってご紹介します。
閑散期だからこそ、あえてターゲットを絞り込みます。特定の強いニーズを持つ顧客層に深く響く高付加価値プランを提供し、「このホテルだから泊まりたい」という動機を創出。価格競争から脱却し、顧客満足度と単価向上を目指しましょう。
例)
・ワーケーション特化: 充実した仕事環境+リフレッシュできる特典で、集中と休息を両立したい層へ。
・ペット連れ専門: 専用設備やサービスを充実させ、「ペットと気兼ねなく最高の思い出を作りたい」ニーズに応える。
・ウェルネス/静養: スパやヘルシーな食事などを組み合わせ、「自分と向き合う静かな時間」を求める層へ。
利益率が高く、貴重な顧客データを直接獲得できる自社サイト経由の予約(直販)比率を高めます。データを活用した関係構築やブランドコントロールが可能になり、OTA依存からも脱却しやすくなります。また、独自特典のポイント: 単なる最低価格保証ではなく、自社サイト予約ならではの「体験価値」を提供することが重要です。
例: レイトチェックアウト、客室アップグレード、館内利用券、限定アメニティ、次回割引など。「公式サイト予約が一番お得で特別」という認識を浸透させます。
ホテル単体では提供できない、その土地ならではのユニークな体験を地域と連携して創出します。他ホテルとの圧倒的な差別化、新たな顧客層の開拓、地域貢献に繋げることが重要です。
例)
・食: 地元農家との収穫体験、漁港直送の特別ディナー、酒蔵見学ツアーなど、生産者の顔が見えるストーリーと共に提供。
・文化・アート・自然: 近隣施設との連携(美術館、工房)、地域イベント連動、自然体験ツアーなど、その土地の魅力を最大限に活かす。
成功の鍵は、Win-Winの関係構築と、魅力を「ストーリー」として伝えることです。
閑散期ならではの魅力(静けさ、季節の風景や味覚など)を積極的に発信し、「オフシーズンだからこそ行きたい」という潜在顧客のニーズを掘り起こします。ネガティブなイメージを「特別な時期」へと転換させ、SEO効果や将来の見込み客との接点も増やします。
例)
閑散期の静かな環境、美しい景色、旬の味覚、インドアでの楽しみ方などを具体的に描写。
ブログ、SNS(写真・動画)、顧客の声(UGC)などを活用し、多角的に魅力を伝える。
ホテルにとって最も大切な資産である「ファン(ロイヤルカスタマー)」との関係性を深め、LTV(顧客生涯価値)を高めます。ファンは閑散期の安定収益や良質な口コミに繋がり、持続的な成長に不可欠です。
例)
・会員限定プランやシークレットセール、新プランの先行予約案内。
・誕生日・記念日のパーソナルな対応、利用履歴に基づくアップグレード。
・支配人との懇親会など、限定イベントへの招待による特別感の演出。
・「あなたは特別な存在です」というメッセージを伝え、ロイヤリティを高めます。
これらの戦略は、単体でも有効ですが、組み合わせることで相乗効果が期待できます。自社の強みやターゲットに合わせて最適な戦略を選択・実行することが重要です。
閑散期対策の効果を最大化し、より効率的に顧客との関係性を築くためには、デジタル技術の活用、すなわちマーケティングDX(デジタルトランスフォーメーション)が不可欠です。ここでは、閑散期対策と親和性の高い最新のDXトレンドを3つご紹介します。
CRMシステムや予約システムに蓄積された顧客データを分析することで、閑散期に反応しやすい顧客セグメントを特定できます。例えば、「過去に閑散期の平日に連泊したビジネス客」「ペット同伴プランを利用したことがある顧客」「スパ利用額が高い顧客」といった具体的なグループを見つけ出し、それぞれの嗜好に合わせたプランや特典情報を、メールマガジンやWeb広告などでピンポイントに配信します。勘や経験頼りではなく、データに基づいたアプローチにより、閑散期のプロモーション効果を飛躍的に高めることが可能です。
自社サイトにAIチャットボットを導入することで、24時間365日、顧客からの問い合わせに自動で対応できます。「閑散期限定プランの内容について詳しく知りたい」といった定型的な質問に即座に回答し、顧客満足度の向上と予約離脱の防止に繋がります。FAQ対応だけでなく、空室確認から予約完了までをシームレスに行えれば、自社サイト経由の直販予約を強力に後押しします。多言語対応ならインバウンド需要の取り込みにも有効です。
マーケティングオートメーション(MA)ツールを活用すれば、閑散期を含む顧客とのコミュニケーションを自動化・効率化できます。例えば、予約前の見込み客へのステップメール配信、滞在後のサンクスメールやリピート促進オファー、休眠顧客への特別なオファー配信などを自動化。少ない労力で継続的に顧客との接点を持ち、関係性を維持・強化(ナーチャリング)することが可能になります。
これらのDXツールは、導入して終わりではありません。データを分析し、PDCAサイクルを回しながら改善を続けることで、その効果を最大化できます。
閑散期は、多くのホテルにとって厳しい時期であることは事実です。しかし、それは同時に、自社のブランドを見つめ直し、顧客との絆を深め、未来への投資を行うための貴重な時間でもあります。
この記事でお伝えしてきたように、閑散期対策の鍵は、安易な割引に頼らないことです。目先の稼働率だけを追うのではなく、
・自社の提供価値を磨き、ターゲットに響く体験を創出する
・顧客データを活用し、パーソナルな関係性を築く
・地域と連携し、独自性を強化する
・閑散期ならではの魅力を積極的に発信する
・ファン(ロイヤルカスタマー)を大切に育て、長期的な関係を築く
といった、本質的な取り組みが重要になります。そして、これらの取り組みを効率的かつ効果的に進める上で、データ分析やデジタル技術(DX)の活用が強力な武器となります。
閑散期は、コスト削減だけを考える期間ではありません。未来の売上と、ホテルの持続的な成長基盤を作るための「仕込み」の期間なのです。
閑散期対策にお悩みでしたら、ぜひ一度、micadoにご相談ください。共に、閑散期をホテルの新たな”強み”へと変えていきましょう。