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ホテルマーケティング 売上改善

2025.04.01

2025.04.01

ホテルがADR(客室平均単価)を上げる方法とは?価格競争から脱する戦略・戦術を解説

目次

ホテル経営においてADR(客室平均単価)の向上は収益最大化の鍵です。しかし、闇雲な値上げは逆効果。本記事では、価格競争に陥ることなくADRを向上させるための具体的な戦略と戦術を解説します。ADRの基礎知識から、客室・サービスの価値向上、効果的な販売チャネル戦略、顧客セグメンテーションまで、実践的な施策例を網羅。よくある失敗例とその対策も紹介することで、持続可能な収益構造の構築をサポートします。この記事を読めば、単に「高く売る」のではなく「価値に見合った価格で売る」方法を理解し、収益性向上を実現するための具体的な行動が見えてきます。

「ADR(客室平均単価)」とは?基礎知識と算出方法

ADR(Average Daily Rate)とは、客室平均単価のことで、ホテルの収益性を測る上で重要な指標の一つです。一言で言えば、1部屋あたり1泊でどれだけの売上を得ているかを示す数値です。単に「宿泊単価」と呼ぶ場合もあります。

ADRは、ホテル経営の効率性や収益性を評価するだけでなく、競合他社との比較や、今後の価格戦略策定にも役立ちます。RevPAR(販売可能客室単価)やGOPPAR(販売可能客室粗利益)といった他の指標と組み合わせて分析することで、より多角的な視点からホテルの業績を把握することが可能です。

ADRの算出方法

ADRの計算式は非常にシンプルです。

基本的な算出式▶︎ADR = 宿泊売上 ÷ 販売客室数

例えば、1日の宿泊売上が50万円で、販売客室数が100室だった場合、ADRは5,000円となります。

期間を指定したADRの算出

特定の期間、例えば1ヶ月間のADRを計算する場合も、同様の考え方です。1ヶ月間の宿泊売上を販売客室数で割ることで算出できます。

例えば、1ヶ月間の宿泊売上が1,500万円で、販売客室数が3,000室だった場合、ADRは5,000円となります。

なぜADRを把握することが重要なのか?

ADRを把握することで、ホテル経営における様々な意思決定に役立てることができます。

例えば、
・適切な価格設定ができているかの判断
・販売促進施策の効果測定
・競合他社との比較分析
・将来的な収益予測…..などが挙げられます。


価格競争に陥りやすい宿泊業界においては、ADRを適切に管理し、向上させることが収益性確保に不可欠です。低いADRで稼働率を上げるよりも、適切なADRで安定した収益を確保する方が、長期的な経営戦略として重要です。客室単価を上げるためには、客室の付加価値を高める、効果的なプロモーションを行う、ターゲット顧客層を明確にするなど、様々な戦略が必要となります。OTA(オンライン旅行代理店)や自社ウェブサイトなど、販売チャネルごとのADRを分析することも重要です。

また、季節変動やイベント開催時など、需要の変化に応じてADRを調整することで、収益を最大化することができます。適切なレベニューマネジメントを実施することで、需要の変動に柔軟に対応し、常に最適な価格で客室を提供することが可能になります。

ADRを上げるために必要な考え方

ADR(Average Daily Rate:客室平均単価)を向上させるためには、従来の「価格競争」という考え方から脱却し、「価値を高めて適正価格で売る」という視点への転換が不可欠です。
価格だけで勝負しようとすると、値下げ競争の泥沼に陥り、収益性を悪化させる可能性があります。真のホテル経営の成功は、適切な価格でサービスを提供し、お客様に満足していただくことで実現します。

1.「安く売る」から「価値を高めて適正価格で売る」への転換

価格競争に巻き込まれると、薄利多売の状態になり、サービスの質を維持・向上させるための投資が難しくなります。結果として顧客満足度が低下し、長期的な経営の安定を損なう可能性があります。
一方、「価値を高めて適正価格で売る」という発想は、顧客に特別な体験や満足を提供することに焦点を当てます。快適な客室、質の高いアメニティ、きめ細やかなサービスなど、顧客にとっての価値を高めることで、価格に見合う、あるいは価格以上の満足感を提供し、結果としてADRの向上に繋がります。

2.売上の最大化 = ADR × 稼働率 という考え方

ホテル経営における売上は、ADRと稼働率の掛け算で決まります。つまり、売上を最大化するためには、ADRと稼働率のバランスを考慮する必要があります。稼働率を高く維持しつつADRを向上させることが理想ですが、安易な値引きで稼働率を上げるだけでは、長期的には収益性を損なう可能性があります。適切な価格設定と効果的なプロモーション戦略によって、ADRと稼働率の最適なバランスを見つけることが重要です。

2-1. レベニューマネジメントの重要性

レベニューマネジメントとは、需要予測に基づき、価格や販売チャネルを動的に調整することで、収益を最大化するための手法です。例えば、需要が高い時期には価格を上げ、需要が低い時期には価格を下げることで、常に最適な価格で販売することができます。
また、販売チャネルごとに異なる価格を設定することで、各チャネルの特性に合わせた販売戦略を展開することも可能です。レベニューマネジメントシステムを導入することで、これらの複雑な価格調整を自動化し、効率的に収益を向上させることができます。

3.長期的に「単価>稼働率」を意識すべき理由

短期的な視点では、稼働率を重視して低価格で販売することに魅力を感じるかもしれません。しかし、長期的な視点で考えると、「単価>稼働率」を意識することが重要です。高い単価で販売できれば、より多くの利益を確保し、設備投資やサービス向上に再投資することができます。これにより、ホテルの魅力を高め、更なる顧客獲得と単価向上に繋がる好循環を生み出すことができます。
また、高い単価で宿泊する顧客は、リピーターになる可能性も高く、LTV(顧客生涯価値)の向上にも貢献します。高単価を実現するためには、顧客体験の向上、ブランドイメージの構築、ターゲット顧客の明確化など、多角的な戦略が必要となります。顧客にとっての「価値」を明確に伝え、価格に見合う、あるいは価格以上の満足を提供することで、長期的な「単価>稼働率」の実現を目指しましょう。

3-1. 顧客ロイヤルティの向上

高単価戦略は、価格に敏感ではない、質の高いサービスを求める顧客層をターゲットにします。このような顧客は、一度満足度の高い体験をすると、リピーターになりやすく、ホテルへのロイヤルティも高まります。結果として、安定した収益基盤を築き、持続的な成長を実現することに繋がります。

【施策例①】客室・サービスの価値向上

ADR(客室平均単価)の向上には、価格に見合う、あるいはそれ以上の体験価値を提供することが最も重要です。高品質なアメニティの導入や、睡眠の質を重視した高級寝具の採用、快適な室内設備の整備など、物理的な快適性の向上に加え、パーソナライズされた接客や地域文化を取り入れた体験型サービスの提供など、顧客一人ひとりの期待を超える“滞在価値”の創出が求められます。これらの積み重ねにより、「この価格でも納得」「このホテルだから選ぶ」と思ってもらえる信頼感が生まれ、結果的にリピーターや口コミ増加によるブランド強化にもつながり、安売りに頼らないADRの安定化を実現できます。


【施策例②】販売チャネルの最適化

ADRを向上させるためには、どのチャネルで、どのように販売するかという“流通戦略”の見直しが不可欠です。自社公式サイトでの直販を強化することでOTA手数料を削減し、価格調整の自由度も確保でき、特典付きプランや会員制度を通じて高単価のリピート予約を狙えます。一方で、OTAや旅行代理店、SNS経由など外部チャネルもターゲットごとに戦略的に活用することで、幅広い層へのアプローチと露出を確保できます。チャネルごとに訴求内容や価格を最適化し、複数チャネルが競合しないようバランスよく設計することで、予約単価の向上とともに収益性の最大化を図ることが可能です。


【施策例③】価格戦略の見直し

単なる値上げではなく、需要に応じて価格を柔軟に調整する「ダイナミックプライシング」や、滞在価値に応じた価格設定、プラン構成の工夫といった“戦略的価格設計”がADR改善には欠かせません。ハイシーズンとローシーズンの料金差を明確にし、イベント開催日や地域需要の変動に応じてリアルタイムで価格を見直すことで、最大限の売上を確保できます。また、付加価値の高いパッケージプランや最低価格保証の導入により、顧客の満足度と信頼を損なうことなく価格上昇を受け入れてもらえる体制が整います。価格を「上げる」のではなく、「最適化する」ことで、収益性を高めながら顧客との良好な関係性も維持できるのです。


【施策例④】ブランディングの取り組み

ブランドイメージを確立することは、価格競争に巻き込まれず、選ばれる理由をつくる上で極めて重要です。ホテルが提供する体験の核となるコンセプトを明確にし、それを客室デザイン、接客、ロゴ、写真、言葉の一つひとつにまで落とし込み、一貫した世界観を構築することで、顧客の感情に訴える独自のブランドが完成します。SNSやインフルエンサー、口コミなどを通じたストーリーテリングによって、ホテルに“共感”してもらえる接点を増やし、ファンづくりとロイヤルカスタマーの獲得に繋げることで、価格ではなく価値で選ばれるホテルとなり、結果的に単価を引き上げる力を持つことができます。


【施策例⑤】客層のセグメンテーション

すべての顧客に同じサービス・同じ価格でアプローチするのではなく、年齢、目的、地域、消費傾向などに応じて顧客をセグメント化し、それぞれに合ったプラン設計やプロモーションを行うことがADRを上げる近道です。例えば、ビジネス利用客には快適なワークスペースや朝食付きプランを、ファミリー層にはキッズアメニティやファミリールームを用意するなど、セグメントごとのニーズに応じた「売り方の工夫」が重要です。さらに、行動データや過去の予約履歴を活用したパーソナライズによって、価格に納得してもらえる施策が可能になり、適正価格でもしっかり選ばれるホテルを目指すことができます。

よくある失敗とその対策

ADR向上を目指す中で、陥りやすい失敗とその対策について解説します。

「値上げしたら予約が減った」の落とし穴

ADRを上げるために単純に値上げをした結果、予約数が大幅に減少し、結果的に全体の収益が下がってしまうケースは少なくありません。これは、価格設定と顧客が感じる価値のバランスが崩れたことが原因です。値上げを行う際には、客室やサービスの価値向上、新たな付加価値の提供など、価格に見合うだけの体験を提供することが不可欠です。例えば、アメニティのグレードアップ、無料Wi-Fiの提供、レイトチェックアウトサービスの導入などが考えられます。また、ターゲット顧客層を明確にし、彼らが求める価値を提供することで、価格への納得感を高めることができます。

対策:値上げに見合う価値の提供と明確な顧客ターゲティング

値上げを検討する際は、顧客視点に立ち、価格に見合う価値を提供できているかを徹底的に検証しましょう。既存顧客へのアンケート調査や競合他社の価格調査なども有効です。顧客セグメントごとに最適な価格設定を行うことも重要です。例えば、早期予約割引や連泊割引などを導入することで、価格に敏感な顧客層を取り込みつつ、平均単価の向上を図ることができます。また、OTA(オンライン旅行代理店)や自社ウェブサイトなど、販売チャネルごとに価格戦略を最適化することも効果的です。

「サービスと価格が釣り合わない」と感じさせない工夫

顧客はホテルの価格と提供されるサービスのバランスを常に評価しています。価格に見合わないサービスを提供していると、「割高感」を抱かれ、顧客満足度が低下するだけでなく、リピート率の低下にも繋がります。価格設定に見合う、あるいは価格以上のサービスを提供することで、顧客ロイヤルティを高め、持続的な収益成長を実現できます。例えば、きめ細やかな接客、顧客のニーズに合わせたサービス提供、清潔で快適な客室環境の維持などが重要です。

対策:顧客体験の向上とサービス品質の徹底管理

顧客一人ひとりに寄り添ったサービスを提供することで、価格以上の価値を感じてもらうことが重要です。例えば、顧客の好みや過去の宿泊履歴を参考に、パーソナライズされたサービスを提供することで、特別な体験を提供できます。また、従業員教育を徹底し、高いホスピタリティスキルを身につけることで、顧客満足度を高めることができます。サービス品質を維持・向上させるためには、定期的な顧客アンケートの実施や、ミステリーショッパーによる調査なども有効です。顧客からのフィードバックを積極的に収集し、改善に繋げることで、顧客ロイヤルティの向上に繋がります。

顧客レビューの重要性と対策

現代において、顧客レビューはホテル選びにおける重要な判断材料となっています。好意的なレビューは新規顧客の獲得に繋がり、ADR向上にも貢献します。逆に、否定的なレビューはホテルのイメージを損ない、予約数減少に繋がる可能性があります。顧客レビューは、ホテルのサービス品質を客観的に評価する貴重な情報源であり、経営改善に役立てることができます。

対策:積極的なレビュー管理と顧客対応

顧客レビューは、ホテルの評判管理において非常に重要です。すべてのレビューに目を通し、感謝の言葉と共に返信することで、顧客との良好な関係を築くことができます。否定的なレビューに対しては、真摯に対応し、改善策を提示することで、顧客の信頼回復に努めることが重要です。また、レビューサイトの活用や、自社ウェブサイトでのレビュー掲載など、積極的に顧客の声を可視化することで、ホテルの透明性を高め、顧客の安心感を醸成することができます。さらに、顧客レビューを分析することで、サービスの改善点や顧客ニーズの把握に繋げ、より効果的なADR向上戦略を策定することができます。例えば、朝食の質に関するレビューが多い場合は、メニューの見直しや食材の改善を検討するなど、具体的な対策を講じることが重要です。顧客の声を真摯に受け止め、サービス向上に繋げることで、持続的なADR向上を実現できます。

ADR向上は「高く売る」ではなく「価値を正しく伝える」こと

ADRを向上させるためには、単に宿泊料金を上げるのではなく、ホテルが提供する価値を顧客に正しく伝え、理解してもらうことが重要です。価格設定は、その価値に対する対価として設定されるべきです。顧客が「この価格を支払うだけの価値がある」と納得すれば、ADR向上は自然な流れとなります。

価値を正しく伝えるための具体的な方法

それでは、どのように価値を伝えれば良いのでしょうか?いくつかの具体的な方法を以下に示します。

1. ターゲット顧客の明確化とペルソナ設定

誰に何を提供したいのかを明確にすることが重要です。ターゲット顧客を絞り込み、具体的なペルソナを設定することで、彼らのニーズや価値観に合わせた情報発信が可能になります。例えば、ビジネスパーソン向けには利便性や快適さを、ファミリー層にはエンターテイメント性やキッズフレンドリーなサービスをアピールするなど、ターゲットに合わせた訴求が効果的です。

2. ストーリーテリングによる共感

ホテルの歴史やコンセプト、地域との繋がりなどをストーリーとして伝えることで、顧客の共感を呼び、ホテルへの愛着を育むことができます。例えば、創業者の想い、地域貢献活動、ユニークなサービスの誕生秘話などを紹介することで、単なる宿泊施設ではなく、特別な体験を提供する場所としての価値を伝えることができます。

3. ビジュアルコンテンツの活用

高品質な写真や動画は、ホテルの魅力を直感的に伝える強力なツールです。客室の広さやアメニティの充実度、レストランの料理、景観の美しさなどを視覚的に訴求することで、顧客の購買意欲を高めることができます。InstagramやYouTubeなどのSNSを活用し、魅力的なビジュアルコンテンツを発信することも重要です。

4. ウェブサイトの最適化

ホテルの公式ウェブサイトは、顧客との重要な接点です。見やすく分かりやすいデザイン、モバイルフレンドリーな設計、多言語対応など、ユーザーエクスペリエンスを向上させることで、顧客の満足度を高め、予約 conversion rateの向上に繋げることができます。SEO対策を施し、検索エンジンでの上位表示を目指すことも重要です。

5. 口コミサイトの活用と顧客対応

トリップアドバイザーや楽天トラベルなどの口コミサイトは、顧客の宿泊体験を知る上で貴重な情報源です。良い口コミはホテルの信頼性を高め、新規顧客の獲得に繋がります。ネガティブな口コミにも真摯に対応し、改善につなげることで、顧客との信頼関係を構築することができます。顧客からのフィードバックを積極的に収集し、サービス向上に役立てることも重要です。

6. スタッフの教育とホスピタリティ

ホテルの価値を伝えるのは、 最終的にホテルスタッフです。顧客一人ひとりに寄り添った丁寧な接客、きめ細やかなサービス提供、そして温かいおもてなしは、顧客満足度を高め、リピーター獲得に繋がります。スタッフ教育に力を入れることで、ホテル全体のサービスレベル向上を目指しましょう。

これらの方法を組み合わせ、顧客にホテルの真の価値を伝えることで、価格競争に巻き込まれることなく、ADRを向上させることができるでしょう。重要なのは、「高く売る」ことではなく、「価値に見合った価格で売る」こと、そしてその価値を顧客に正しく理解してもらうことです。

まとめ

本記事では、ホテル経営において欠かせない収益指標であるADR(客室平均単価)を、価格競争に陥ることなく向上させる方法について、基本知識から実践的な戦術までを体系的にご紹介しました。

まず、ADRとは「宿泊売上 ÷ 販売客室数」で算出される指標であり、ホテルの収益性を高める上で極めて重要です。しかし、単に価格を上げるだけでは顧客離れを招くリスクがあり、「価格に見合った価値の提供」が大前提となります。

さらに、ADR向上に失敗しがちな落とし穴(例:値上げによる予約減少、価値と価格のミスマッチ)や、それらに対する具体的な改善策についても触れ、より実践的な理解を深めました。

結論としては、ADR向上の鍵は「高く売る」ことではなく、「価値を見せ、理解してもらい、納得して選んでもらう」こと。
ターゲットに合わせた戦略的な施策を積み重ねることで、価格に頼らず収益を最大化できるホテル経営が実現します。

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