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2023.11.21
2021.07.17
約3年以上に渡る新型コロナウイルスの影響によって、特にホテル・旅館では苦しい時期が続いておりましたが、2022年10月のインバウンド解禁によって、国内需要の回復が見受けられています。
むしろ昨今では、「人材不足」を課題として悩まされる施設が多く、コロナ禍のように稼働率の底上げをした販売よりも、宿泊単価を上げて売上を伸ばす販売にシフトしている印象です。
ここ数年のキーワードは「ホテルマーケティングの強化」だと予想されるなか、今回の記事では費用をかけてでも外部の業者にマーケティングを依頼するべき理由や、どのようなことを依頼すべきなのかについて対談形式で進めていきます。
さまざまな実績を持つ国内トップクラスのホテルマーケターである株式会社micadoの代表取締役兼社長の田代 貴彦(たしろ たかひこ)と、メディア編集長&年間売上300%の実績を誇るOTAプロフェッショナルの渡邉で、現在の宿泊業界について紐解きながら、有益な情報をお届けします!
渡邉:始めていきましょうか!まず、「費用をかけてでも外部に依頼すべき理由」という本題に入る前に、ここ最近でマスク着用も任意になり、本格的にアフターコロナのフェーズに入ってきたかと思いますが、リアルな宿泊情勢はいかがでしょうか? コンサルタントという立場で読者の皆さまにお伝えしていただけますか?
田代:はい。アフターコロナの兆しが見えてきたのは22年10月のインバウンド解禁からの印象がありますが、急速に2019年(コロナ前)のマーケットに戻ってきていますね。インバウンドのシェアを見ると、中国人以外は19年の水準まで戻ってきていて、これから少しずつ訪日外国人の数が増えていくのは確実です。ただ違う点を挙げると、圧倒的な人手不足が浮き彫りになっていて、「自動化」や「外注」が今後のキーワードになるかと思います。
渡邉:ありがとうございます!確かに、首都圏のインバウンド需要はコロナ前に戻ってきている感覚はあるんですけど、地方はこれから…って感じですね。人手不足はかなり深刻な状況だと思っていて、私が担当しているクライアントの約半数は、課題として抱えています。
田代:これからの宿泊業界の流れとしては、海外企業の新規開業による参入や民泊需要の回復などが予想されていて、地域によって価格崩壊が起きる可能性も十分にありますね。宿泊に対する価値って目に見えづらいですが変動しやすいので、競争優位性を保つためにはホテルマーケティング力を付けることが重要です。
渡邉:宿泊における価値の変動は、すごい共感できます。良くも悪くも販売料金を調整できるビジネスだからこそ、同じ地域に新しいホテル・旅館が参入してくると、魅力の上げ下げはありますよね。
田代:2019年にmicadoを創業してから、メディアやセミナーを通して、多くのホテル・旅館さまにマーケティングの重要性について発信してきましたが、まだ足りていないかと思っています。マーケティングって売上に貢献するだけではなく、認知を上げることを目的にしたり、ホテルブランド自体を再構築したり、何年後、何十年後にもあるべき姿で生き残り続けるためにやるべきことなんですよね。
渡邉:とてもわかります…!!今回のテーマでもある費用をかけてでも外部の業者にマーケティングを依頼するべき理由にも関わってきますね。
田代:はい。費用をかけてでも外注依頼すべき理由としては、最近になって私も改めて痛感したことなのですが、宿泊業界にはマーケティングに精通した人財が少なく、自社のみで0〜1、1〜100にしていくことが難しいからです。
ホテルマーケティングに特化した宿泊施設は国内でも数えられるくらいで、それ以外のホテル・旅館さまは、これからマーケティングのノウハウを蓄積していく段階なのではないかと思っています。
実際に、私が某大手ホテル会社様の会議に参加したり、セミナー登壇をさせていただいて、どのようなことをしたいのか構想はあるものの、マーケティング活動に絡めていく手段を知らないことが大きな問題だと感じました。
マーケティングは仕組みづくりから重要ですし、仕組みを作ってからのマーケティング戦略を実行するのはそれ以上に重要な部分です。失敗と成功を繰り返していくのがマーケティングのいろはではありますが、そもそもの方向性を間違えてしまうと、ホテルブランドにも影響しかねないので、第三者であるコンサルタントやホテルマーケティングに特化した業者に依頼すべきだと考えています。
渡邉:たしかに。直近の売上が悪いからマーケティングをしないと….という施設さまが半数以上のイメージですが、実行する施策が戦略的に考えられていないと、消費者のイメージを損ねる可能性もありますよね?
田代:現代ではWeb検索が当たり前の時代なので、SNSやWeb広告など、いろいろな方に向けて認知は獲得しやすくなっていますが、興味を持ってもらえるかは別の話です。いかに、知ってもらってから興味を惹かせるかの施策が必要ですし、そこから宿泊予約を獲得するとなるとハードルが一気に上がります。
認知から目的の達成までの流れをスムーズにし、売上に繋げるためには、たった1回のマーケティング施策ではなく、より戦略性の高いマーケティングを継続して実行しなければいけません。特に、今の時代では、消費者の情報収集能力は高くなっているので、目には触れさせてもスルーされることは珍しくありませんからね。
渡邉:非常にホテルマーケティングの重要性が伝わってきます…。SNSとかなら簡単に発信できちゃいますが、良さそうなコンテンツを投稿するのではなく、誰に向けて何を届けるか(伝えるか)が大切っていうことですね!
田代:そうですね。SNSのよくある事例としては、”自分たちが良いと思ったコンテンツを発信している”という傾向にあります。ホテル・旅館に携わっているので、良い部分も悪い部分も知っているから、良い部分を選びやすくなってしまうんですよね。
これは決して悪いことではないのですが、このようなコンテンツ投稿を続けてしまうと、施設側が発信したい情報のみが増えてしまい、検索するユーザーが求めている情報と異なる可能性が高くなってしまいます。
Web上で行動するユーザーは、右にも左にも振り向きやすいので、少し違うかな…と思われてしまうと離れていってしまいうので、誰に向けて何を届けるかを決めることが重要なんですよね。
ホテル・旅館のコンサルティング業者などに何を依頼すべきか?
渡邉:では、ここからは「第三者であるコンサルタントやホテルマーケティングに特化した業者に依頼すべきこと」や、「依頼を考えているけど何をお願いすればいいか迷っている施設さまはどうするべきか。」というテーマに移りますが、こちらについては何かポイントなどはありますか?
田代:そうですね。コロナ禍とアフターコロナで「何を優先するべきか?」は変化していますね。とはいえ、先ほどもお伝えしたように、多くのホテル・旅館で人材不足が課題になっていることや、宿泊業界にはマーケティングに精通した人材が少ないので、今までOTAのみで集客していた施設さまの場合は、何をしたいかを明確にする必要があります。
例えば、Web上での認知度を向上させたいのであればSEO対策、SNSマーケティング、Web広告の運用などあります。一方、自社のWebサイトで直販比率を増やしたい場合は、サイトに訪れているユーザーの行動分析をして、サイト内の予約導線を見直したり…など。
やらなければいけないことは本当にいっぱいあるんですけど、今何をすべきかが可視化できていない施設さまが多いので、依頼する内容がはっきりしないんだろうなと思っています。
渡邉:確かにその通りだと思います!ホテル業界って良くも悪くも良いサービスやツールが揃いすぎているから、それだけ揃えれば満足しちゃっているホテル・旅館も少なくないですよね。
田代:ちょうどデジタル社会が浸透している時代で、チャットボットやポップアップ機能、マーケティングオートメーションなどが出てきていますが、導入して満足する企業って多くいるんですよね。
ホテル業界でいうと、チャットボット機能などが特にそうですが、便利なのはもちろんわかるんですけど、実際にうまく活用できている施設さまってかなり少ないんじゃないですか?
これも事例を出すと、チャットボットという便利なツールは、電話の問い合わせを減らすためにWeb上でお客様の質問だったり、予約手続きのサポートや誘導などができるんですけど、出すタイミングやページなどによっては邪魔になり、マイナスな印象を与えることもある。ということです。
つまり、Web上のユーザーにとって最適化されていないので、こういったのは専門の業者に依頼して改善していく必要があります。
渡邉:おー!まさにおっしゃる通りですね!まとめると、「何を依頼すべきかは自社で明確にしてから頼むべき」ということですね?
田代:そちらの方が我々のようなコンサルティング企業からすると、どのようなサービスを提供するのがベストなのか提案しやすいですね。ですが、やりたいことがあっても、どのような課題を解決すべきかわからない施設さまも、ヒアリングをさせていただければ目標に対して何をすべきかはわかりますね。
渡邉:では、第三者であるコンサルタントやホテルマーケティングに特化した業者に依頼するときのポイントってありますか?
田代:それももちろんあります。ホテル・旅館側が専門業者に依頼するときのポイントとしては、「第三者の意見も取り入れること」です!
渡邉:…..!!!!。と言うと、どういうことでしょうか?
田代:「やりたいこと」と「できること」は相対しないってことですね。
渡邉:あぁ。(何か….コンサルタントっぽい!!!?)
田代:これも冒頭でお話ししたように、「今どのフェーズにいるべきでやるべきことが変わる」っていうのは覚えてますか?
渡邉:もちろんです!
田代:ここでも事例を出しますね。例えば、「公式サイトで直販を増やしたいから、各ページの予約導線を見直してほしい」というホテルがいるとしましょう。実際にWebサイトに訪れているユーザーの行動を見ると、トップページから客室ページだけを見てサイトを離脱する傾向があることがわかりました。他の料理ページやお風呂ページなどを閲覧することなく離脱しているということは、何かしらの原因があるのは明らかです。
それを踏まえて、現状の改善施策としては予約導線を見直すことではなく、サイトの滞在時間をもっと長くして情報収集や検討熟度を上げるためのページレイアウトやデザインなどを変える必要があることが言えます。また、公式サイトのレイアウトやデザインを変更する手前に、サイトに訪問するユーザーのアクセス数が少なければ、まずはWeb集客力を向上することが最初にやるべきだとも言えますね。
渡邉:つまり、公式サイトの直接予約増加をするにも、取り組む手順があるということですね!
田代:はい。公式サイトで直販を増やすにあたっての懸念点としては、OTAで閲覧してから公式サイトに遷移したときにユーザーの印象が悪くなってしまうこと。もう一つは、予約をすることが決定して、公式サイトを訪れたけど予約完了までのステップが長かったり、サイト内の読み込み時間が長すぎるとOTAで予約される可能性もあります。
直販を獲得できるチャンスはたくさんあると思うのですが、些細なキッカケで、ユーザーの行動は変化してしまいます。Web上におけるユーザーの行動パターンはさまざまななので、分析データを踏まえて、どういった施策から着手していくべきかを詰めていくことが重要なんですよね。
渡邉:宿泊業界に関わっている方からすると、とても身近なアドバイスですね。貴重な情報をありがとうございます!
これからの宿泊情勢について
渡邉:最後に、これからの宿泊情勢の動向について少しだけ予測しませんか?
田代:面白いですね。
渡邉:では、今後の宿泊情勢をズバリ!どのような動きがあるとお考えですか?(笑)
田代:一言で表すと「ホテルマーケティングでの弱肉強食」ですかね。
渡邉:詳しくお願いします!
田代:マーケティングが上手いホテルはどんどん成長していき、遅れをとってしまう施設は衰退していくと予想しています。マーケティングでバズは期待できますが、継続的に安定した集客をするためには、地道な取り組みが欠かせません。検索エンジンやSNSなどの媒体を活用して、ユーザーとの接点を作っていき、興味を持ってもらえるようなアプローチを行い、しっかりと効果検証をすることです。
渡邉:なるほど。時代は常に進んでいるけど、自分達のフェーズに合わせて適切なマーケティングをしましょう!ということですね?
田代:そうです。再びコロナのような世界的なパンデミックが起きなければ、日本の宿泊市場はもっと成長していくので、今できることを常に取り組めばいいと思います。
渡邉:ありがとうございます! かなり刺激的でホテル・旅館に携わっている方々は、身に沁みるテーマだったんじゃないですかね? では、最後に全国のホテル・旅館に向けて一言お願いします!
田代:最後までお読みいただきありがとうございました。私が今回の対談を通して伝えたかったのは、ホテルマーケティングの外注をご検討されているようであれば、宿泊業界や宿泊情勢について熟知している企業とのお付き合いを推奨したいということです。
もしご縁があれば、ぜひmicdaoのお問い合わせフォームよりご連絡をいただき、みなさまの目標達成をご一緒させてください!
最後に
“ただ何かに取り組む”だけではなく、次に活かせる施策を行っていくことが今後のホテル・旅館運営に欠かせない….ということがわかりました。いかに戦略性のあるマーケティング施策を実践することが重要だと実感できますよね!
今回は当インタビュー記事を一読されたホテル・旅館さまに、何かしらのキッカケを与えられたら、渡邉は満足です!
次回も濃厚なコンテンツを配信していきますので、これからも定期的に「編集長のおすすめ記事」をご愛読してください!