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OTA 販売促進

2025.11.10

なぜ付加価値プランはキャンセルされない?心理×データからわかる理由を解説

OTA、特に「まずは無料で仮押さえ」が可能な海外OTAの運用において、異常に高いキャンセル率は多くの施設の経営を圧迫する「予約キャンセル」問題となっています。直前でのキャンセルは、本来得られるはずだった収益(機会損失)だけでなく、再販コストも発生させ、収益性を著しく低下させます。

この記事では、OTA運用3年以上のマネージャー層向けに、なぜ「素泊まり」のような通常プランは簡単にキャンセルされ、特典を組み込んだ「付加価値プラン」はキャンセルされにくいのか、私たちが保有するデータと3つの心理的原理から徹底解剖します。価格競争から脱却し、予約の「質」を高めるための思考法を解説します。

宿泊施設の「予約キャンセル」問題

OTA運用における高キャンセル率、通称「予約キャンセル」問題は、特にコロナ禍以降の旅行スタイルの変化に伴い、深刻化しています。ユーザーは複数の施設を同時に「仮押さえ」し、宿泊日が近づくにつれて最も条件の良い一つに絞り込む行動が一般化しました。

特に海外OTAでは、無料キャンセルポリシーが主流であるため、ユーザーはキャンセルに対する心理的ハードルが極めて低くなっています。この状況下で、「素泊まり」や「朝食付き」といったシンプルなプランは、他施設との比較が非常に容易です。

例えば、「Aホテル 素泊まり 10,000円」と「Bホテル 素泊まり 10,000円」は、価格と立地、写真だけで比較されます。もし直前に「Bホテルが9,000円のセールを始めた」場合、ユーザーは躊躇なくAホテルをキャンセルし、Bホテルに乗り換えます。これは、プラン自体に「その施設でなければならない理由(独自性)」が欠如しているために起こる、構造的な問題なのです。

データで実証。「付加価値」がキャンセルを防ぐ

では、この「予約キャンセル」問題に対して打つ手はないのでしょうか。私たちが数百の施設改善で蓄積した「データ分析」によると、とても興味深い事実が浮かび上がっています。

それは、特典や特別な体験を組み込んだ「付加価値プラン」は、価格が同じ、あるいはそれ以上の「通常プラン(素泊まりなど)」と比較して、キャンセル率が約半分にまで低下するという明確な傾向です。

この傾向は、Booking.comにおけるGenius(リピーター)特典が付与された予約など、何らかの「特別な価値」が提供されると認識されたプランでも同様に見られます。これは、ユーザーが「価格」ではなく「価値」で予約を判断した場合、その予約の「質(=キャンセルされにくさ)」が劇的に向上することを示しています。次章では、なぜこのような差が生まれるのか、その心理的メカニズムを深掘りします。

なぜ付加価値プランはキャンセルされにくいのか?

付加価値プランのキャンセル率が低い理由は、単に「お得だから」という単純なものではありません。そこには、ユーザーが予約を確定し、それを維持しようとする強力な心理的原理が働いています。ここでは、OTA担当者が理解すべき3つのメカニズムを解説します。

心理的原理①:比較の土俵から降りる「独自性」

最も強力な原理が、他施設との「比較を困難にする」効果です。「素泊まり 10,000円」は、どのOTAでも、どの競合施設とも簡単に価格比較が可能です。これは、プラットフォーム上で「コモディティ(均質化された商品)」として扱われている状態です。

しかし、「【地元人気エステ60分+特製ディナー付】ご褒美リトリートプラン 25,000円」というプランはどうでしょうか。競合施設が「【スパ30分+通常ディナー付】23,000円」というプランを出していたとしても、エステの内容、ディナーの質、ブランドイメージが異なるため、単純な価格比較ができません。

ユーザーは「部屋」という“モノ(商品)”を予約しているのではなく、「特別な体験」という“コト(価値)”を予約しています。その結果、施設側は価格競争の土俵から降りることができ、ユーザーは「もっと安い宿」を探す動機そのものが弱まるのです。

心理的原理②:購入意思の「明確化」

「素泊まり」を予約するユーザーの動機は、「とりあえず宿を確保したい」という曖昧なものであるケースが少なくありません。そのため、より良い条件が見つかれば安易に乗り換えます。

一方で、付加価値プランを選ぶユーザーは違います。「なんとなく」ではなく、「その特典(例:特別なディナー、スパ、レイトチェックアウト)が欲しい」という、極めて明確な目的意識を持って予約ボタンを押しています。

この「購入意思の明確化」が重要です。ユーザーは「この宿の、このプランでなければならない」という強い動機を持っているため、宿泊そのものへの期待値が予約時点で非常に高まっています。その結果、自己都合による安易なキャンセル(予約キャンセル)には至りにくいのです。

心理的原理③:損失回避の心理

人間は「何かを得る喜び」よりも、「何かを失う苦痛」を強く感じる傾向があります。これを「損失回避バイアス」と呼びます。付加価値プランは、この心理に巧みに作用します。

「素泊まりプラン」をキャンセルしても、「また別の素泊まりプランを探せばいい」と考えるため、損失の感覚はほとんどありません。しかし、「【1日3室限定】最上階への客室アップグレード」を予約した場合、「もしこのプランをキャンセルしたら、この特別な体験は、もう二度と同じ条件で手に入らないかもしれない」という心理が働きます。

この「予約を手放すことへの抵抗感」が、キャンセルボタンを押す直前の強力なストッパーとなります。独自性が高く、魅力的なプランであればあるほど、この損失回避の心理は強く作用します。

今すぐできる付加価値プランの作り方

付加価値プランがキャンセル防止に有効であることはご理解いただけたかと思います。しかし、「特典を付けるとコストがかかる」と考える必要はありません。既存のリソース(資産)を組み合わせるだけで、魅力的なプランは今すぐ作れます。

大切なのは、「ユーザーが何を求めているか」を考え、それを「特典」として言語化することです。例えば、高額なコストをかける必要は一切ありません。

・「アーリーチェックイン14時+レイトチェックアウト12時」のセット
・「館内レストラン・売店で使える利用券1,000円分付き」
・「2ランク客室アップグレード」
・「駐車場代無料&選べるウェルカムドリンク付き」

これらは、施設側にとって追加の原価がほとんど発生しない(あるいはコントロール可能な)特典です。しかし、ユーザーにとっては「通常プランにはない明確な価値」として映ります。特に「アーリーチェックイン+レイトチェックアウト」は、清掃オペレーションの調整さえ可能であれば、非常に強力な付加価値となります。

まずは、自施設が持つ既存のリソースを棚卸しし、それをターゲットユーザーが喜ぶ「特典」として組み合わせることから始めてみてください。

まとめ

OTA、特に海外OTAにおける「予約キャンセル」による高キャンセル率問題は、施設の収益性を圧迫する深刻な課題です。この問題の根本原因は、「素泊まり」プランなどが他施設と容易に比較できるコモディティとなっている点にあります。

私たちが持つデータ分析からも、特典や体験を組み込んだ「付加価値プラン」は、通常プランに比べてキャンセル率が著しく低いことが実証されています。その背景には、「比較の土俵から降りる独自性」「購入意思の明確化」、そして「損失回避の心理」という3つの強力な心理的メカニズムが存在します。

高額なコストをかけた特典は不要です。「客室アップグレード」や「レイトチェックアウト」など、既存のリソースを組み合わせるだけでも、価格競争から脱却し、予約の「質」を高めることは可能です。ぜひ本記事を参考に、キャンセルに強い「指名買い」されるプラン造成に取り組んでください。

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