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2025.10.14

じゃらんセール依存からの脱却。利益率を高める独自プランと戦略的クーポン設計術

「じゃらんのセールに参加しないと、予約が入らない」――。多くのOTA担当者が、このような「セール依存」とも言える状況に危機感を抱いています。セールは短期的な売上増というカンフル剤にはなりますが、それに頼り切った運用は、気づかぬうちに施設の利益体質とブランド価値を蝕んでいきます。

この記事では、セールを「きっかけ」の一つとして賢く利用しつつも、施設の「基礎体力」となる自律的な集客構造をいかにして築くか、その核心となる「独自プラン」と「戦略的クーポン」の活用法について、深掘りして解説します。


なぜ「セール依存」は危険?その構造的リスクを理解する

セールへの参加は、トラフィックを稼ぎ、短期的な売上を確保する上で有効な手段です。しかし、その効果の裏に潜む構造的なリスクを正しく理解しなければ、長期的な経営を危うくしかねません。ここでは、セール依存がもたらす3つの深刻な副作用について解説します。

利益率の圧迫と顧客単価の低下

セールへの過度な依存がもたらす最大のリスクは、施設の収益構造そのものを悪化させる点にあります。セール期間中の大幅な割引は、当然ながら1予約あたりの利益率を直接的に圧迫します。さらに危険なのは、顧客の中に「この宿はセールで安く泊まるもの」という認識(プライスアンカー)が定着してしまうことです。これにより、通常期の正規価格に対する抵抗感が生まれ、結果として年間を通じた平均顧客単価(ADR)が低下していくという負のスパイラルに陥ります。

ブランド価値の毀損とリピーター育成の阻害

恒常的な安売りは、「安さが魅力の宿」というブランドイメージを市場に植え付けます。施設の持つ独自の魅力や上質なサービスといった、本来価値を感じてほしい部分が霞んでしまい、価格以外の理由で選ばれる機会を失っていきます。また、セールで獲得する顧客は価格に敏感な層が多く、施設のファンとなって再訪してくれる可能性(LTV:生涯顧客価値)が低い傾向にあります。安定した経営の基盤となる、ロイヤリティの高いリピーターの育成を自ら阻害してしまうのです。

需要の先食いとオペレーションの極端化

セール期間中に予約が集中するということは、本来であれば通常期に予約してくれたかもしれない顧客の需要を「先食い」している可能性があります。これにより、セール期間中だけが異常に忙しく、それ以外の期間は閑散とするという、需要の波が極端になります。この状況は、スタッフの配置や食材の仕入れといったオペレーションの平準化を困難にし、サービス品質の低下や従業員の疲弊を招くなど、経営全体に歪みを生じさせる原因となります。

価格ではなく「価値」で選ばれるプラン設計術

セール依存から脱却するための核となるのが、価格競争の土俵から降り、「ここでしか体験できない価値」で顧客に選ばれるための独自プランです。ここでは、単なる思いつきではない、戦略的なプラン設計の思考法を3つのステップで解説します。

「誰に」を明確に。ターゲットペルソナ設定が全ての起点

魅力的なプラン作りの第一歩は、「誰に届けたいのか」を極限まで具体的にすることです。例えば、「記念日プラン」を作るにしても、「漠然と記念日をお祝いしたい人」ではなく、「結婚3周年を迎える30代前半の夫婦。夫が妻へのサプライズを計画しており、予算は〇円前後」といった具体的なペルソナを設定します。ペルソナが明確になることで、プランに含めるべき特典(例:メッセージ付きのホールケーキ、レイトチェックアウト)や、心に響くプラン名、説明文のトーン&マナーが自ずと決まってきます。

プランに「物語」を。体験価値を最大化するコンテンツ造成

顧客はプランの「スペック」ではなく、その先にある「体験」にお金を払います。プランにストーリー性を持たせ、魅力的な体験価値を伝えましょう。例えば、「地元の旬な食材を使った会席料理」という事実だけを伝えるのではなく、宿ニュースやプラン詳細ページで「生産者〇〇さんの畑で採れた朝採れトマトの物語」や「料理長が毎朝市場で目利きする魚介へのこだわり」といったコンテンツを発信します。こうした物語が、料理への期待感を高め、宿泊体験全体の満足度を向上させるのです。

「既存プランのリブランディング」という発想

全く新しいプランをゼロから造成するのは大変な労力を伴います。そこで有効なのが、既存のスタンダードプランなどを、特定のターゲットに合わせて見せ方を変える「リブランディング」です。例えば、スタンダードな2食付きプランに、「お部屋でゆっくり楽しめるボードゲームの貸出」と「夜食のおにぎりサービス」を特典として加え、「【おこもりステイ】温泉と美食で日頃の疲れを癒す大人の休日プラン」といった新しい名前を付ける。これだけで、新たなターゲット層に響く魅力的な商品へと生まれ変わらせることが可能です。

利益を守りながら集客を自動化するクーポン活用術

独自プランの魅力をさらに高め、顧客の予約を後押しするのがクーポンの役割です。しかし、クーポンもまた無計画な配布は利益を圧迫します。ここでは、クーポンを経営課題解決のための戦略的ツールとして活用するための実践法を解説します。

クーポンの目的を明確化する(閑散期/平日/連泊促進)

クーポンを発行する際は、必ず「何の課題を解決するためか?」という目的を明確にしましょう。例えば、「来月の平日の稼働率を5ポイント上げたい」という課題があれば、「平日限定で利用可能」「〇〇円以上で利用可能」といった条件を設定したクーポンを発行します。他にも、「連泊を促進し客単価を上げたい」なら「2泊以上の予約で使えるクーポン」、「稼働率の低い客室タイプを埋めたい」なら「〇〇ルーム限定クーポン」など、解決したい経営課題と配布条件を連動させることが、戦略的活用の第一歩です。

ROAS(費用対効果)を算出し、コストとして管理する

クーポンによる割引は、広告費と同様の「販促コスト」です。したがって、その費用対効果(ROAS)を常に意識する必要があります。例えば、総額10万円分のクーポン(コスト)を発行し、それがきっかけで100万円の予約売上が生まれた場合、ROASは10倍となります。この数値を施策ごとに記録・分析し、「どの条件のクーポンが最もROASが高いか」を把握しましょう。データに基づいてクーポンの内容を最適化していくことで、無駄な割引をなくし、利益を確保しながら販促効果を最大化できます。

独自プランとの相乗効果を狙う「セット販売」思考

最も強力なクーポンの使い方の一つが、売りたい「独自プラン」とセットで訴求することです。例えば、前述した「【おこもりステイ】プラン」の予約を増やしたい場合、「【おこもりステイプラン限定】2,000円OFFクーポン」を発行します。これにより、ユーザーは「この魅力的なプランが、クーポンを使えばさらにお得になる」と感じ、予約へのモチベーションが格段に高まります。クーポンを全プラン対象のばら撒きにするのではなく、特定の高付加価値プランへの誘導装置として活用するのです。

まとめ

じゃらんのセールは、多くの新規顧客と出会うための重要な「機会」であることに間違いありません。しかし、その機会を真のビジネス成長に繋げるためには、セールだけに依存しない、自律的で高収益な集客モデルを構築することが不可欠です。

その核となるのが、価格ではなく「価値」で選ばれるための「独自プランの設計」と、その価値を顧客に的確に届け、予約を後押しする「戦略的なクーポンの活用」です。この2つを両輪として回し、常にデータに基づいた改善を続けることで、貴施設は価格競争の消耗戦から抜け出し、安定した収益基盤を持つ、真に強い施設へと進化することができるでしょう。

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