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2025.05.09
ホテルのイベント、季節ごとの催しや食事会、ワークショップなど、様々な形で実施されていることと思います。しかし、その取り組みが一時的な賑やかしで終わり、本来持つべき効果を発揮できていないケースも少なくありません。これからの時代、ホテルの集客、認知度向上、そしてファンづくりにおいて、イベントは極めて重要な戦略的役割を担います。
本記事では、ホテルマーケティングをご支援する立場から、イベントを単なる点ではなく、ホテルの成長に繋がる線として捉えるための考え方、そして成功に導くための具体的な企画ステップ、さらには効果を測定し次に活かす方法まで、実践的なノウハウをお伝えします。「イベント企画、何から手をつければいいのだろう?」「実施したイベントの効果がよく分からない」といったお悩みを持つホテル関係者の皆様にとって、具体的な行動へのヒントとなれば幸いです。
ホテルが時間と労力をかけてイベントを開催する意義は、どこにあるのでしょうか。現代のマーケティング環境を踏まえ、戦略的なイベント企画が持つ独自の価値を改めて確認しましょう。
写真や文章だけでは、ホテルの持つ本質的な魅力、例えば空間の心地よさ、スタッフの細やかな心遣い、料理の繊細な味わいを完全に伝えることは困難です。イベントは、お客様に五感を通してホテルの雰囲気を直接感じてもらう場を提供します。このようなリアルな「体験価値」の提供は、お客様の記憶に深く刻まれ、ブランドへの理解と共感を育む上で、他のどんなプロモーションよりも強力な手段となり得ます。
ホテルという場所は、特に用事がなければ訪れる機会がない、と感じる人も少なくありません。イベントは、普段ホテルを利用しない層や、まだ貴ホテルを知らない潜在顧客にとって、気軽に足を運んでもらうための絶好の「最初の接点」となります。宿泊やレストラン利用といった本格的な利用の前に、まずイベントに参加してもらうことで、ホテルの雰囲気を知る「トライアル(お試し)」の機会を提供できるのです。この最初の好印象が、将来の顧客獲得に繋がる可能性を秘めています。
心に残るイベント体験は、参加者の「参加してよかった」「楽しかった」というポジティブな感情、すなわち「共感」を生み出します。そして現代では、その共感がSNSを通じて自然な形で「拡散」されることが期待できます。参加者自身が発信するリアルな体験談や写真は、企業発信の広告よりも強い説得力を持ち、費用をかけずにホテルの魅力を広めてくれる可能性があります。イベント企画段階から、SNSでの共有を意識することも有効です。
イベントは新規顧客だけでなく、既存顧客との関係性をより深めるためにも非常に有効です。日頃の感謝を伝えたり、会員限定の特別なイベントを提供したりすることで、顧客のホテルに対する愛着や信頼感、すなわち「エンゲージメント」を高めることができます。エンゲージメントの高い顧客は、リピート利用してくれるだけでなく、良い口コミを発信してくれる「ファン」となり、ホテルの長期的な成長を支える大切な存在になってくれるでしょう。
効果的なイベントを企画するための出発点は、「このイベントを通じて何を達成したいのか」という目的、つまりゴールを明確に設定することです。目的が曖昧では、企画内容が定まらず、実施後の効果検証もできません。
まずは、今回のイベントで最も達成したい成果を具体的に定義しましょう。それは、新規顧客への認知度向上でしょうか。それとも、特定のシーズンや曜日のレストラン利用促進でしょうか。あるいは、新しい宿泊プランの魅力を伝えることかもしれませんし、地域社会との良好な関係を築くことかもしれません。目的が具体的であるほど、企画の方向性は定まり、成功の基準も明確になります。
目的を定めたら、その達成度を測るための具体的な指標を設定することが重要です。最終的な目標達成指標(KGI: Key Goal Indicator)と、そこに至るプロセスを測る重要業績評価指標(KPI: Key Performance Indicator)を設定することで、イベントの成果を客観的に評価し、改善に繋げることが可能になります。
例えば、認知度向上が目的なら、KPIとしてSNSでの関連投稿数やメディア掲載数、接触者数を設定し、KGIとしてイベント後のブランド認知度調査結果を見る、といった具合です。集客や売上向上を目指すなら、KPIに参加申込数やアンケートでの利用意向率を設定し、KGIとしてイベント経由の予約数や売上額を追跡します。体験価値向上やファン化が目的なら、KPIに参加者満足度やSNSでのポジティブな言及数、KGIとしてリピート率の変化などを設定することが考えられます。
目的と成果指標が明確になったら、具体的な企画プロセスに進みます。ここでは、成功確率を高めるための重要なステップを解説します。
最初のステップは、設定した目的に基づき、「誰に」対してイベントを届けたいのか、そのターゲット像(ペルソナ)を具体的に描くことです。年齢、性別、ライフスタイル、興味関心などを詳細に設定し、そのターゲットがどのような情報や体験を求めているのかを深く理解します。
次に、ターゲットの心に響き、かつホテルの個性や強みを活かせるイベントの核となる考え方、「コンセプト」を明確にします。そして、そのコンセプトに基づいた具体的な企画内容を練り上げます。季節感を活かした企画、地域の文化や産業と連携した企画、食やアート、ウェルネスをテーマにした企画など、独自性と魅力のあるアイデアが求められます。
企画内容が固まったら、実現に向けた詳細な「実施計画」を作成し、準備を着実に進めます。会場の確保、必要な備品やコンテンツの手配、運営スタッフの配置と役割分担、そして予算の管理など、多岐にわたる項目をリストアップし、スケジュールに沿って進捗を確認します。同時に、設定したターゲットにイベント情報を届け、参加を促すための「集客プロモーション計画」も具体化します。
イベント当日は、計画に基づいたスムーズな運営が参加者の満足度に直結します。受付から案内、プログラムの進行、トラブル発生時の対応まで、スタッフ全員が共通認識を持ち、連携して動ける体制を整えておくことが肝心です。また、参加者アンケートの実施や、SNS投稿の呼びかけなどを通じて、参加者とのコミュニケーションを図り、イベント全体の満足度を高める工夫も求められます。
イベントを実施して終わり、では非常にもったいないです。成果をきちんと測定・分析し、その学びを次に活かすプロセスが、イベントを継続的な成功に導きます。
イベント終了後には、必ず事前に設定したKGIやKPIに基づいて効果測定を行いましょう。参加者数、売上といった数値データだけでなく、アンケートでの感想やSNS上のコメントといった定性的な情報も重要な評価材料です。これにより、イベントの成果と課題を客観的に把握することができます。
効果測定の具体的な方法としては、参加者へのアンケート調査、SNSモニタリング、ウェブサイトのアクセス解析、予約データの分析などが考えられます。これらの結果を分析し、「目的は達成できたか」「企画内容はターゲットに響いたか」「運営はスムーズだったか」などをチームで振り返ります。そして、明らかになった改善点を次のイベント企画や、ホテル全体のマーケティング施策に反映させていく。このPDCAサイクルを意識的に回すことが、イベントの質を着実に向上させ、より大きな成果へと繋げていくために不可欠です。
最後に、ホテルイベントをより成功に導くために、特に意識したい重要なポイントを3つ挙げます。
美しいロビー、洗練されたレストラン、質の高いサービス、ブランドイメージなど、ホテルが元々持っている有形無形の資産、すなわち「ホテルらしさ」をイベント企画に最大限活かすことを考えましょう。他の会場では真似できない、ホテルならではの特別な体験を提供することが、強力な差別化となります。
イベントは、参加者との良好な関係を築くための絶好の機会です。一方的に情報を提供するだけでなく、質疑応答の時間、体験コーナー、参加者同士やスタッフとの交流タイムなどを設け、双方向のコミュニケーションが生まれるような工夫を取り入れましょう。また、イベント後もメールマガジンやSNSを通じて関係性を維持していく視点も大切です。
イベント参加という体験を、その場限りで終わらせず、次のアクション、すなわち宿泊やレストラン利用、リピート訪問に繋げるための「導線」を意識的に設計しましょう。イベント参加者限定の割引プランの案内、次回来館時に使えるクーポンの提供、メールマガジンへの登録促進などが考えられます。イベントをきっかけとした長期的な関係構築を目指します。
ホテルが実施するイベントは、単なる集客手段の一つではありません。戦略的に企画・実行することで、広告では伝えきれない深い体験価値を提供し、顧客との強い絆を育み、ホテルのブランドイメージを高めることができます。それは、ホテルの未来を創るための重要な「投資」と言えるでしょう。
もちろん、魅力的なイベントを継続的に実施していくことは簡単ではありません。しかし、この記事でご紹介した考え方やステップを参考に、まずは小さな一歩からでも始めてみることが大切です。
「自社のホテルに合ったイベントのアイデアが欲しい」「企画から集客、運営までサポートしてほしい」 もし、イベント企画に関して具体的なお悩みやご要望がございましたら、ぜひ私たちmicadoにご相談ください。貴ホテルの状況と目標を丁寧にヒアリングし、データに基づいた最適なイベント戦略をご提案させていただきます。
厳しい競争環境の中で、貴ホテルの価値を高め、お客様に選ばれ続けるために。私たちと一緒に、記憶に残る素晴らしいイベントを創り上げていきませんか?
最後に、宿泊施設の魅力を最大限に引き出し、適切なターゲットに届けるためには、データに基づいた現状分析が欠かせません。
☑︎自社のマーケティング施策が本当に効果を発揮しているのか?
☑︎競合と比べて強みや課題はどこにあるのか?
☑︎OTAやSNSの運用は最適化されているのか?
こうした疑問に対して、定量的なデータと専門的な視点から導き出された答えがあると、次の一手も自信を持って打つことができます。
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