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2025.12.22

2025.12.22

【GA4で期間比較の分析方法】ホテル・旅館が意思決定をしやすくするデータの見極め方

公式サイトのGA4レポートを開き、「先月よりアクセス数が減った」「CVRが下がった」と、短期的な数字の変動に一喜一憂してはいないでしょうか。
この記事では、宿泊施設のマーケティング責任者が必ず押さえるべき、GA4の「期間比較」の技術について徹底的に解説します。

なぜ「前年同月比」が基本なのか、そして「前月比」はどのような場合に有効なのか。施策の成果を正しく判断し、データに基づいた戦略的な意思決定を行うための分析アプローチを身につけていきましょう。

基本は「前年同月比」で比較をすること

GA4分析の基本は「比較」にありますが、宿泊業における「比較の軸」は、他業界と大きく異なります。その最大の理由は、ビジネスの根幹にある「季節性(シーズナリティ)」の存在です。

例えば、1年で最も需要が高まる8月(繁忙期)と、需要が落ち着く9月(閑散期)のセッション数やCVRを「先月比」で比較しても、そこから得られる知見はほとんどありません。

「先月より下がった」という事実は、単なる季節変動の結果であり、サイト改善の失敗や施策の不備を示すものではない可能性が非常に高いのです。したがって、宿泊業の分析の鉄則は、「同じ季節条件」で比較すること、すなわち「前年同月比」を絶対的な基本とすることです。

GA4のレポート画面上部にある「期間」設定で、「比較」をオンにし、「前年(例:2024年8月1日~8月31日)」と「現在の期間(例:2025年8月1日~8月31日)」を選択します。

これにより、すべての指標(セッション数、ユーザー数、直帰率、CVR、売上)が前年同月と並べて表示されます。
例えば、「セッション数は前年比+15%だが、CVRは前年比-0.2%」といったファクト(事実)を掴むことができます。この「前年同月」という共通のモノサシの上で初めて、「我々の施策は正しかったのか」という評価が可能になります。

「前年よりCVRが改善したか」を指標とする

この「前年同月比でのCVR(予約率)の改善」です。例えば、半期に一度の大きなサイトリニューアルや、年間を通じたコンテンツマーケティングの成果を測る場合、その投資対効果は「前年同月比のCVRが、季節変動(需要の増減)や流入数の増減に関わらず、どれだけ底上げされたか」で判断すべきです。

「前年比でアクセス数は減ったが、CVRが上がった結果、直販売上は増加した」という状況は、サイト改善が成功したことを示しています。このように、季節要因を排除した「サイトの基礎体力=CVR」の変化を捉えることが重要です。

ただし、「前年同月比」も万能ではありません。比較する際には、その数字に影響を与えたであろう「特殊要因」の有無を確認する、定性的な視点が不可欠です。

例えば、前年のゴールデンウィーク(GW)は日並びが良く10連休だったが、今年は飛び石連休だった場合、単純なCVR比較はできません。また、前年は「全国旅行支援」のような大規模な需要喚起策があった、あるいは「感染症の拡大」「自然災害」といったネガティブな要因があった場合も同様です。これらの「特殊要因」を把握した上で、データの変動幅を解釈・補正する「分析の解像度」がマーケターには求められます。

「前月比」で見るべき短期施策の効果

「前年同月比」がサイト全体の「健康状態」や「基礎体力」を見るための長期的な指標であるのに対し、「前月比(あるいは前週比)」は、特定の「短期施策」の効果を即座に判定するための短期的な指標として活用します。

「前月比」や「前週比」が最も有効に機能するのは、開始日と終了日が明確な、短期的なマーケティング施策の効果を測る場面です。

・特定の週末に限定したSNS広告の出稿
・会員向けのメルマガ配信(例:タイムセール告知)
・インフルエンサーとのタイアップ企画の公開
・特定のブログ記事の公開

こうした「瞬間風速」を測りたい場合に、前年同月と比較しても施策の効果はノイズに埋もれてしまいます。この場合は、「施策実施前」と「実施後」を比較する「前月比(Month over Month)」や「前週比(Week over Week)」が適しています。

例えば、11月第2週(11/10~11/16)に新しいInstagram広告キャンペーンを実施したとします。この場合、GA4で比較期間を「11月10日~11月16日(実施週)」と「11月3日~11月9日(直前の週)」に設定します。

そして、「流入元/メディア」が「instagram.com / cpc」のセグメントで、セッション数、CVR、直帰率が「前の週」と比べてどう変化したかを見ます。「セッション数は2倍になったが、CVRが半減した」のであれば、広告で集客したユーザー層と、ランディングページ(LP)の魅力がミスマッチしている、という仮説が立ちます。

「前月比」で数値が悪化した場合、すぐに見直す

短期施策の分析(前月比・前週比)の目的は、「早期発見・早期改善」のサイクルを回すことです。前述の例で「CVRが半減した」というファクトが掴めたら、広告費を無駄に使い続ける前に、即座に「アクション」を起こさねばなりません。

「広告のクリエイティブ(写真や文言)が、誘導先のプランと合致しているか?」「ターゲット層(例:20代カップル)に対して、誘導先のLP(例:ファミリー向けプラン)が適切か?」などを点検し、週明けには改善策(例:広告クリエイティブの変更、LPの差し替え)を実行します。このスピード感が、短期施策の成否を分けます。

キャンペーン影響と「要因」の切り分け

期間比較を行う上で、分析者が最も陥りやすい罠が「要因の混同」です。数字が変動した際、その理由が「外部要因(キャンペーンなど)」によるものなのか、「内部要因(サイト改善など)」によるものなのかを、冷静に切り分けて判断する技術が求められます。

例えば、9月にサイトリニューアル(内部要因)を実施し、同時に「リニューアル記念・全プラン10%OFF」の割引キャンペーン(外部要因)を行ったとします。

その結果、9月のCVRが「前年同月比」で2倍になったとしても、「サイトリニューアル(UX改善)のおかげでCVRが2倍になった!」と判断するのは早計です。

その成果のほとんどは、「10%OFF」という強力な価格フック(外部要因)によるものである可能性が高いからです。本当に知りたい「サイト改善(内部要因)の純粋な効果」は、このキャンペーン要因に隠れてしまっています。

分析例:キャンペーン期間と、その前後を比較する

この「要因」を切り分ける(推測する)ためには、比較期間をさらに細かく設定します。

・A期間:キャンペーン開始前(例:8月)
・B期間:キャンペーン実施中(例:9月)
・C期間:キャンペーン終了後(例:10月)

もし、C期間(キャンペーン終了後)のCVRが、A期間(開始前)と比べて明確に高い水準(例:前年比CVR +0.5%)を維持できているならば、それは価格フック(外部要因)がなくなった後も残った成果、すなわち「サイトリニューアル(内部要因)によるCVRの底上げ効果」であると推測できます。

GA4の「比較を追加」機能は、2つだけでなく、3つ以上の期間(やセグメント)を同時に比較表示させることが可能です。(※レポートの種類によります)

例えば、当月(例:2025年9月)のデータを見る際に、「vs 前月(2025年8月)」と「vs 前年同月(2024年9月)」を同時に設定します。

こうすることで、「前月比ではアクセスが減った(=季節要因)が、前年同月比ではアクセスもCVRも増えている(=施策の成果)」といった、多角的な判断が可能になります。短期的な変動(ノイズ)に惑わされず、長期的なトレンド(シグナル)を掴むために、複数の時間軸で比較するクセをつけましょう。

まとめ

GA4の「期間比較」は、単なる過去との数字比べではありません。それは、宿泊業特有の「季節性」というバイアスを取り除き、自分たちの施策(サイト改善、広告、キャンペーン)が本当に「直販率」という成果に繋がったのかを判断するための、最も重要な「分析のモノサシ」です。

「先月比」で短期的な施策の反応(副作用)を見極めつつ、常に「前年同月比」でサイトの基礎体力(CVR)が向上しているかという「本質的な成果」を追う。この2つの時間軸を使い分けることこそが、感覚的な運用から脱却し、データに基づいた戦略的な意思決定を行うマーケティング責任者の「技術」なのです。まずはGA4を開き、貴施設の「前年同月」のCVRと比較することから始めてください。

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