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渾身の料理写真を投稿し、インサイトの「プロフィールへのアクセス数」は増えている。 それなのに、自社サイトの予約数(CV)がピクリとも動かない。 もし心当たりがあるなら、それは貴館のプロフィール画面が、お客様に「お帰りください」と言っているのと同じ状態かもしれません。
SNS上のプロフィールは、宿泊施設におけるエントランスであり、 ここで信頼感を与えられなければ、お客様はOTAで価格比較を始めたり、近隣の競合施設へ流れてしまいます。 本記事では、現場スタッフの努力を「予約」という成果に結びつけるための、宿泊業特有のプロフィール設計とブランド構築術について解説します。
フロントにお客様が立った時、ボロボロの制服で無言だったらどうなるでしょうか? Instagramのプロフィール画面も同じです。ここが整っていないことは、見込み客を無言で追い返す「機会損失の垂れ流し」を意味します。
ユーザーは「箱根 旅館」「新宿 ホテル」のように、まずエリアで検索します。 アカウント名(太字部分)が英語のおしゃれな表記だけになっていませんか?
これでは検索に引っかかりません。 「【公式】箱根温泉 〇〇旅館|露天風呂付客室」のように、エリア名と強み(検索されやすいワード)を必ず盛り込んでください。OTAで検索する前の層をここで捕まえることが、手数料削減の第一歩です。
限られた文字数でスペックを羅列しても、OTAの設備一覧には勝てません。 書くべきは、滞在によって得られる「体験(ベネフィット)」です。 「全10室・源泉掛け流し」ではなく、「全10室。24時間、お好きな時に湯守りこだわりの源泉を独占」と書く。ターゲットを「静寂を求める大人」に絞ることで、ミスマッチによる低評価口コミも未然に防げます。
また予約導線としては、リンクまとめツール(Linktree等)は便利ですが、選択肢が多いと顧客は迷います。 特に繁忙期やセール期間中は、公式サイトの「プラン一覧ページ」や「おすすめプラン詳細」への直リンク一本に絞る勇気も必要です。 「予約はこちら」のボタンを押したのに、公式サイトのトップページに飛ばされ、そこからまた予約フォームを探させる……このひと手間が、離脱の最大の原因です。
「1泊5万円」の高級旅館のアカウントに、画質の荒い写真や、原色使いの派手な文字入り投稿が並んでいたら、お客様はどう思うでしょうか? 「この宿、本当に5万円の価値があるの?」と疑念を抱かせた瞬間、予約の可能性は消滅します。
SNS担当者がシフト制で変わる場合、投稿のクオリティにバラつきが出がちです。 ・フィルターは「この数値」に固定 ・文字入れフォントは「明朝体」のみ ・料理写真は「自然光」で「真上」から撮らない(シズル感を出すため斜め45度) こうした独自のレギュレーション(規定)を設けましょう。誰が撮っても「当館らしい」写真になる仕組み作りが、ブランドの一貫性を守ります。
例えば、台風やキャンセルの発生時、焦って手書きの張り紙をスマホで撮り、「本日空室でました!」と投稿していませんか? その1枚が、丁寧に積み上げてきた高級感あるフィード(一覧画面)を台無しにします。
緊急告知は24時間で消える「ストーリーズ」だけに留めるか、あらかじめデザインされた「空室告知用テンプレート」を用意しておくこと。焦りが見える投稿は、足元を見られ、ブランド価値を毀損します。
プロフィールに訪れた人が見るのは、最新の投稿1枚ではなく、並んだ9枚〜12枚の画像群です。 「料理の寄りの写真」ばかりが並んでいないか? 「スタッフの集合写真」が続いていないか? ・料理 → 客室 → 風景 → スタッフ → 料理 といったローテーションを組み、全体で一つの雑誌を作る意識で投稿順序をコントロールしてください。
ハイライト機能は、過去のストーリーズを保存しておくだけの場所ではありません。 予約を迷っているお客様の「最後のひと押し」を行い、かつフロントへの電話問い合わせを減らすための手段です。
忙しいチェックイン時間帯に「駐車場はありますか?」という電話対応に追われていませんか? これらは全てハイライトの「Q&A」にまとめておきましょう。
「よくあるご質問」として、駐車場へのルート動画や、お子様ランチの写真、送迎バスの時刻表を格納しておく。これにより、お客様の不安を解消すると同時に、現場スタッフの業務負荷を軽減できます。
文字や静止画では伝わりにくい「部屋の広さ」や「窓からの眺望」を、動画でルームツアーとして紹介し、ハイライトに「客室タイプ」として保存します。 スタンダード客室とデラックス客室の違いを動画で見せることで、「せっかくなら広い方にしよう」というアップセル(単価向上)を自然に促すことができます。
また、「伊勢海老の活き造り」や「地酒飲み比べセット」など、別注料理の魅力を動画で紹介し、「お料理」ハイライトへ。 チェックイン時の口頭説明だけでは頼まないお客様も、事前にSNSでシズル感のある動画を見ていれば、「これも予約しておこう」となります。これは、当日の厨房オペレーションを安定させる上でも有効な施策です。
Instagramのプロフィール画面構築は、単なる「デザイン」の話ではありません。 「いかにOTAに逃げられず、自社サイトで予約してもらうか」 「いかに電話問い合わせを減らし、現場の生産性を上げるか」 「いかにADR(単価)に見合うブランド価値を感じてもらうか」 という、経営課題に直結する重要な業務です。
今日から、SNS運用を「広報」ではなく「集客・接客の一部」と捉え直してください。 プロフィールを整え、導線を磨き上げることは、おもてなしの玄関口を掃き清めることと同じです。その一手間が、明日の予約台帳を埋める確実な一歩となります。