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魅力的な公式サイトを構築しても、Googleの検索結果でOTAの下に埋もれてしまっては、直販予約には繋がりません。なぜ検索順位が上がらないのか。その答えは、サイトの「内部SEO」設定にあるかもしれません。
本記事では、宿泊施設のマーケティング責任者様向けに、専門的かつ技術的な「内部SEO」のポイントを絞って解説します。検索エンジンに好かれ、指名検索や地域検索で上位表示を獲得し、直販率を高めるための土台作りを学びます。
SEOの基本でありながら、最も奥が深いのが「タイトルタグ」と「H1タグ」の設定です。これらは、Google(検索エンジン)とユーザー(お客様)の両方に「このページが何であるか」を伝える最も重要なシグナルであり、ここの最適化なくして上位表示はあり得ません。
「タイトルタグ」(<title>)は、Googleの検索結果一覧や、ブラウザのタブに表示されるテキストです。これは、検索ユーザーに対して「このページをクリックする理由」を提示する「検索結果の顔」であり、クリック率(CTR)に直接影響します。
一方、「H1タグ」(<h1>)は、実際にページを訪れたユーザーが目にする「ページ内の大見出し」です。ユーザーに「あなたが探している情報はこのページにあります」と瞬時に理解させ、離脱を防ぐ役割があります。
この2つは、似ている必要はありますが、完全に一致させる必要はありません。タイトルタグは「検索ユーザーを惹きつける」こと、H1タグは「訪問したユーザーを安心させる」ことを最優先に設計します。
クリックされるタイトルタグは、ユーザーの検索意図と自施設の強みを両立させています。まず、「【公式サイト】」と明記することで、OTAの広告やまとめサイトと差別化し、安心感を与えます。これは指名検索時に極めて有効です。
次に、「〇〇旅館(施設名)」という固有名詞。そして、その後に「|(パイプ)」などで区切り、そのページが提供する具体的な価値(例:「絶景露天風呂」「旬の会席料理」「〇〇駅徒歩1分」)を記述します。これにより、ユーザーは検索結果一覧を見るだけで、そのサイトを訪れるメリットを瞬時に判断できます。
H1タグは、タイトルタグのように装飾的である必要はありません。むしろ、そのページの主題(テーマ)を、簡潔かつ具体的に示すべきです。
例えば、タイトルタグが「【公式サイト】〇〇旅館|全室露天風呂付き客室で過ごす休日」だとしたら、H1タグはシンプルに「客室のご案内」や「露天風呂付き客室」とします。これにより、クリックして訪問したユーザーは「客室のページで間違いない」と即座に認識し、安心してコンテンツを読み進めることができます。H1タグでのキーワードの詰め込みは不要です。
最も多い技術的な失敗は、サイト内の全ページのタイトルタグが、施設名(例:「〇〇ホテル」)だけで統一されてしまっているケースです。これでは、Googleの検索エンジン(クローラー)は、トップページと客室ページ、料理ページの区別がつきません。
「〇〇ホテル」という同じ“顔”のページが複数存在することになり、「どのページが『客室』の検索結果にふさわしいか」を判断できず、結果としてどのページの検索順位も上がらないという最悪の事態を招きます。全てのページに、そのページ固有の、具体的なタイトルタグを設定することは、内部SEOの絶対条件です。
内部SEOにおいて、コンテンツ(記事)を増やすことと同様に重要なのが、Googleという「機械」が理解できる“言葉”で、自施設の情報を正確に伝えることです。そのための専門的な技術が「構造化データ」であり、これが宿泊業のローカル検索(MEO)や指名検索の表示に大きく影響します。
構造化データ(またはスキーママークアップ)とは、Webページに記述する専用のコード(タグ)のことです。これは人間のユーザーには見えませんが、検索エンジンに対して「この文字列は、施設の“住所”です」「この数字は、“評価点”です」と、情報の“意味”を正確に伝える役割を果たします。
Googleは、この構造化データを読み取ることで、あなたのサイトが「宿泊施設」であることを100%正確に認識できます。これにより、検索結果画面で評価点(星)や価格帯、住所などが通常よりリッチに表示される(リッチリザルト)可能性が高まり、CTRの向上に直結します。
世の中には多くの構造化データの種類がありますが、宿泊施設が最低限、トップページ(または施設概要ページ)に実装すべきものが「LodgingBusiness」(宿泊事業)スキーマです。
ここには、Googleビジネスプロフィール(GBP)と完全に一致した、正確なNAP情報(Name=施設名、Address=住所、Phone=電話番号)を記述します。さらに、「priceRange(価格帯)」、「aggregateRating(口コミの平均評価点と評価数)」といった情報を記述することで、Googleは貴施設を「信頼できる宿泊施設」としてデータベースに登録しやすくなります。
「LodgingBusiness」に加えて、実装すべき強力なスキーマが2つあります。一つは「FAQPage」(よくある質問)スキーマです。FAQページにこれを実装すると、検索結果画面で質問と回答がアコーディオン形式で表示されることがあり、他社より圧倒的に目立つことができます。
もう一つは「Event」(イベント)スキーマです。「【春休み限定】いちご狩り体験プラン」や「夏休み花火大会」といった期間限定の情報をイベントとしてマークアップすることで、検索結果に日付と共に表示され、時事的な検索ニーズを捉えることができます。
「コード」と聞くと、マーケティング責任者の方は「制作会社に依頼しないと無理だ」と諦めてしまうかもしれません。しかし、もし貴施設のサイトがWordPressで構築されている場合、専門的なSEOプラグイン(All in One SEOやRank Mathなど)を利用することで、管理画面上からこれらの構造化データを設定できる場合があります。
これらのツールは、GUI(グラフィカルな操作画面)で「施設名」や「住所」を入力するだけで、裏側で適切なコードを自動生成してくれます。コード知識がなくても実装できる道があることを知り、制作会社や担当者に確認してみる価値は十分にあります。
宿泊施設のサイトにとって、魅力的な「写真(画像)」は予約率を左右する最も重要なコンテンツです。しかし、この画像がSEOの観点から最適化されていないケースが非常に多く見受けられます。また、サイト内の「ページの繋がり(内部リンク)」の設計も、SEOとUX(予約導線)の両方に影響する重要な要素です。
Googleは、ページ上のテキストだけでなく、「画像」そのものも検索対象としています(Google画像検索)。その際、Googleが「この画像が何の写真か」を判断する最初の手がかりが、「ファイル名」です。
デジタルカメラで撮影したままの「DSC001.jpg」や「IMG_001.png」といったファイル名では、Googleに何も伝わりません。サイトにアップロードする前に、必ず「ryokan-rotenburo-sunset.jpg(旅館-露天風呂-夕焼け.jpg)」のように、具体的で分かりやすい英語(またはローマ字)のファイル名に変更するべきです。これは地道ですが、非常に効果の高い施策です。
「altタグ(代替テキスト)」は、画像が表示されなかった場合に代わりに表示されるテキストであり、また、目の不自由な方が利用するスクリーンリーダー(読み上げソフト)が使用する重要な情報です。そして同時に、Googleが画像の文脈を理解するためにも利用されます。
ここには、ファイル名と同様に「その画像が具体的に何を表しているか」を簡潔な日本語で記述します。例えば「夕焼けを望む露天風呂」や「A5ランク和牛のサーロインステーキ」といった具体的な記述が求められます。
内部リンクとは、自サイト内のページ同士を繋ぐリンクのことです。この設計が、SEOとCVR(予約率)の両方を左右します。
SEOの観点では、トップページなどの評価が高いページから、客室ページや料理ページといった重要な下層ページへリンクを適切に貼ることで、サイト全体の評価が循環し、各ページの順位が上がりやすくなります。
CVR(UX)の観点では、ユーザーの行動を「予測」してリンクを設置します。例えば、「客室紹介」ページを読み終えたユーザーが次に行う行動は「この客室に泊まれるプランを探す」ことです。したがって、客室紹介ページの最後には、必ず「この客室に泊まれるプラン一覧はこちら」といった形で、「予約(プラン)ページ」への内部リンクを設置し、予約導線を作ることが不可欠です。
SEOを意識するあまり、やりすぎてしまうのは逆効果です。例えば、altタグに「露天風呂 温泉 旅館 夕焼け 絶景 おすすめ」といったように、単語を羅列する「キーワードの詰め込み」は、Googleからスパム行為とみなされる可能性があります。altタグは、あくまで「自然な説明文」であるべきです。
同様に、SEO評価を高めたいからといって、本文の文脈と全く無関係なページへの内部リンクを乱発することも、ユーザー体験を損ね、Googleからの評価を下げる原因となります。全ての内部リンクは、「ユーザーが次に知りたい情報へ、自然に誘導するため」に設計するというUXの視点を忘れてはなりません。
本記事では、宿泊施設が取り組むべき「内部SEO」の技術的なポイントを3つ解説しました。まず、検索結果でクリックされ、ユーザーに内容が伝わる「タイトル」と「H1」の最適化。次に、Googleに宿の情報を正確に伝える「構造化データ(スキーマ)」の実装。最後に、見落としがちな「画像SEO」と、予約導線を設計する「内部リンク」の整備です。
これらの技術的な土台は、一度設定すれば終わりではなく、プラン変更やサイト改善のたびに見直すべき「資産」です。この土台を固めることが、OTAに頼らず、公式サイトの検索順位と直販率を同時に引き上げるための、最も確実な第一歩となります。