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2025.10.23

2025.10.23

Trip.comの価格ジレンマ?価格不整合が引き起こすリスクと対処法を解説

Trip.comは中華圏からの集客に絶大な効果を発揮する一方、施設が意図しない価格が市場に出回り、利益を圧迫するという深刻なジレンマを抱えています。この記事では、その複雑な価格決定の仕組みを解き明かし、コントロール不能な状況から脱却するための戦略的アプローチを、具体的な手順と共に解説します。

Trip.comの価格もコントロールが難しいのか

Trip.comが強力な集客ツールであることは間違いありません。しかし、その裏側では、施設の収益性を脅かす複雑な価格決定メカニズムが働いています。なぜ施設が設定したはずの価格が、意図しない形でユーザーに提示されてしまうのか。その構造的な要因を深く理解することが、問題解決の第一歩となります。

自社原資での割引やクーポンを積極的に展開

Trip.comは、プラットフォームとしての市場シェアを拡大するため、自社の利益を原資とした割引クーポンを非常に積極的に配布します。これは、施設側が設定した価格からさらに値引されることを意味します。ユーザーにとっては魅力的ですが、施設にとっては「自分たちが知らないところで価格が下がっている」という状況を生み出す最初の要因です。

メタサーチ上で他のOTAより安い価格を提示

彼らの得意戦略の一つが、GoogleホテルやTrivagoといったメタサーチ(横断検索サイト)上での価格競争です。競合OTAよりも1円でも安い価格を提示することで、価格比較を行っているユーザーを自社サイトへと強力に引き込みます。この集客手法は効果的である一方、施設のブランド価値や価格の正当性を損なう大きなリスクをはらんでいます。

「ホールセラー」による価格の不統一

さらに問題を複雑にしているのが、「ホールセラー」の存在です。これは、施設が直接契約しているわけではない、第三者の旅行会社(特に海外の業者)が、Trip.comに卸しているケースです。この場合、ホールセラーが設定した安価な卸値が、Trip.com上に表示されてしまうことがあります。

意図せぬ価格が市場に出回り価格競争の引き金に

これら複数の要因が絡み合うことで、施設が全くコントロールできない価格が市場に流通してしまいます。そして、その安値が新たな基準となり、他のOTAや顧客からの値下げ要求に繋がり、結果として施設全体での収益性を悪化させる、負のスパイラルを引き起こす引き金となるのです。

コントロールの難しさがもたらす集客課題

Trip.comの価格コントロールの難しさは、単なる「安売り」の問題では済みません。それは、施設の利益構造や顧客との信頼関係といった、経営の根幹を揺るがしかねない深刻な課題へと直結します。ここでは、この問題が引き起こす3つの主要な経営課題を具体的に解説します。

予約は入るが、想定ADRを大きく下回り利益率が低下

Trip.com経由での予約数は確かに増えるかもしれません。しかし、その多くが意図せぬ割引後の価格であるため、本来得られるはずだった客室単価(ADR)を大きく下回ります。結果として、稼働率は上がるものの、売上や利益は想定ほど伸びず、「忙しいだけで儲からない」という最も避けたい状況に陥ってしまうのです。

国内OTAとの価格差が生まれるリスク

楽天トラベルやじゃらんnetといった国内OTAを利用する主要な顧客層が、メタサーチなどで自施設を検索した際に、Trip.comで大幅に安い価格が表示されているのを発見したらどう思うでしょうか。「いつも使っているサイトは割高なのか」という不信感に繋がり、長年かけて築き上げてきたロイヤルカスタマーとの信頼関係を著しく損なう危険性があります。

価格が下がっているチャネルの特定が難しい

価格の不整合が起きていることは認識できても、Trip.comの自社クーポンなのか、特定のホールセラーなのか、あるいは他の要因なのかを特定するのは極めて困難です。原因が特定できなければ、的確な対策を打つこともできず、問題が放置されたまま状況が悪化していくという、後手に回った対応を余儀なくされます。

状況を打開するための戦略的アプローチ

この複雑な問題に対し、ただ手をこまねいていてはなりません。状況を正確に把握し、一つずつ原因を潰していく地道な作業と、より上位の視点での戦略的な判断が求められます。ここでは、このジレンマを打開するための具体的な4つのステップを提示します。

全販売チャネルの洗い出しとホールセラー契約の確認

まず最初に行うべきは、自施設の客室在庫がどのような経路で販売されているかを完全に可視化することです。サイトコントローラーの契約先だけでなく、過去に契約した海外の旅行会社やホールセラーとの契約が残っていないか、徹底的に洗い出してください。Trip.comに在庫を供給している契約が見つかるケースは少なくありません。

メタサーチでの定期的な自社価格の監視

問題の早期発見には、定期的な市場観測が不可欠です。最低でも週に一度は、GoogleホテルやTrivagoなどのメタサーチで自施設名を検索し、Trip.comがどのような価格で販売しているかを定点観測する習慣をつけましょう。スクリーンショットなどで記録を残しておくと、Trip.comの担当者と交渉する際の客観的な証拠となります。

価格不整合の発見と担当者への是正要請

メタサーチの監視などで、自社が設定した価格との不整合を発見した場合は、Trip.comの担当マーケットマネージャーに連絡し、価格の統一(レートパリティの遵守)を強く要請してください。特に、原因がホールセラー在庫である可能性が高い場合は、その供給を停止するよう働きかけることが重要です。

インバウンド専用プランによる市場の切り分け

より根本的な解決策として、Trip.comを完全に「中華圏インバウンドへの入り口」と再定義するアプローチがあります。Trip.comではインバウンド向けの特典を付けた専用プランのみを販売し、国内OTAとは異なる料金体系を構築するのです。これにより、国内市場との直接的な価格比較を避け、価格競争から一線を画すことが可能になります。

まとめ

Trip.comの強力な集客力は魅力的ですが、その裏に潜む価格コントロールの難しさは、施設の収益性とブランド価値を著しく毀損するリスクをはらんでいます。このジレンマを克服するためには、まず自社の販売チャネルを完全に把握し、メタサーチでの価格監視を徹底することが不可欠です。そして、価格の不整合を発見した際には断固として是正を求め、将来的には国内市場と切り分けたインバウンド専用の料金戦略を構築するなど、多角的かつ戦略的なアプローチが求められます。

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