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2025.10.14

2025.10.14

じゃらんセール戦略の最適解。利益率を高める割引率の算出法とセグメント別アプローチ

じゃらんが年間を通じて開催する各種セールは、莫大なトラフィックを生み出し、施設の売上を飛躍的に向上させる絶好の機会です。しかしその一方で、安易な値下げは利益率の圧迫とブランド価値の毀損という、深刻な副作用を伴う両刃の剣でもあります。

この記事では、「セールにただ参加する」というステージから脱却し、セールを施設の経営目標達成のための「戦略的ツール」として使いこなすための、プロフェッショナルな思考法と具体的な戦術を解説します。


利益を削るだけの消耗戦にしない。「割引率」の戦略的設定基準

セール戦略において最も頭を悩ませるのが「割引率」の設定です。競合の価格に引きずられて値下げ合戦に陥れば、たとえ満室になっても利益は残りません。ここでは、感覚的な判断を排し、データに基づいて自施設の「最適水準」を見極めるための視点を解説します。

限界利益から算出する「下限割引率」の死守

割引率を決める大前提として、「これを下回ったら売れるほど赤字になる」という最低ライン(下限価格)を正確に把握しておく必要があります。その基準となるのが「限界利益」です。1室売れた時に追加で発生するコスト(リネン代、水道光熱費、アメニティ代、食事の原価など)を算出し、販売価格がこれを下回らないように割引率の上限を設定します。このラインを死守することが、利益なき繁忙を防ぐための絶対条件です。

ADR(平均客室単価)を意識した稼働率と単価の最適バランス

セール期間中は稼働率を最大化したいという心理が働きますが、過度な割引でADRを大きく下げてしまっては、全体の売上(RevPAR:販売可能な客室あたりの収益)は向上しません。例えば、1万円の部屋を100%稼働させる(売上1万円)より、2万円の部屋を60%稼働させる(売上12,000円)方が収益は高くなります。セール期間中であっても、年間の目標ADRを大きく毀損しないか、という視点を持ち、稼働率と単価の最適なバランスポイントを常に意識しましょう。

競合の価格ではなく「自施設の提供価値」を基準にプライシングする

競合施設が大幅な割引を打ち出すと、追随したくなるのが人情です。しかし、本来価格とは自施設が提供する独自の価値(USP:Unique Selling Proposition)に基づいて決定されるべきです。例えば、特別な眺望や高品質な食事といった強みがあるにも関わらず、それを持たない競合と同じ土俵で価格競争をする必要はありません。セール時であっても、「私たちの施設はこの価値を提供しているから、この価格が適正だ」という自信を持つことが、ブランド価値を守る上で不可欠です。

全方位の"ばら撒き"から脱却する。「セグメント別」参加戦略

【micadoエッセンス】で強調されている通り、セールの効果を最大化する鍵は「セグメンテーション」にあります。すべての顧客に同じ割引を提供するのではなく、ターゲットとする顧客層(セグメント)に合わせて、響くプランや特典を設計することで、無駄な割引を抑制し、顧客満足度と利益率を同時に高めることが可能です。

【ファミリー層】特典の付与で単価を維持する

ファミリー層のニーズは、単純な安さよりも「子どもが楽しめ、親が楽をできる滞在」にあります。そこで、宿泊料金を直接割り引く代わりに、「お子様料金無料」「添い寝幼児の施設利用料サービス」「夕食時のお子様ドリンクバー無料」といった特典を付けたセールプランを造成します。これにより、施設の売上単価を維持しつつ、ファミリー層にとっての「お得感(滞在価値)」を最大化することができます。

【カップル・夫婦】高付加価値プランを造成

記念日や特別な旅行で利用することの多いカップル・夫婦層には、価格以上の「体験価値」が響きます。例えば、「記念日ケーキとシャンパン付きプラン」や「貸切露天風呂60分サービス付きプラン」などをセール限定で造成します。これらのプランは、特典の原価を考慮しても、通常プランより高い単価で販売することが可能です。セールをきっかけに、施設の新たな高付加価値プランのテストマーケティングの場として活用する、という視点も有効です。

【シニア・平日利用】段階的割引を設計

比較的日程に融通の利くシニア層や、平日のビジネス・ワーケーション需要に対しては、連泊を促進する割引設計が効果的です。「2連泊で〇%OFF、3連泊以上で〇%OFF」といった段階的な割引を設定することで、稼働の平準化と顧客単価の向上を同時に狙うことができます。セールによる集客効果を、施設にとって最も価値のある「連泊需要」に転換させる戦略です。

じゃらんセールで売上最大化とブランド維持の両立

セールは単発の売上を作るための「消費活動」ではありません。正しく設計すれば、未来の優良顧客を育てるための「投資活動」となり得ます。ここでは、短期的な成果と長期的な成長を両立させるための戦略的思考を解説します。

セールを新規顧客獲得の「集客商品」と位置付ける

マーケティングの観点では、セール商品は、新規顧客にまず試してもらうための「集客を目的とした商品」と位置づけられます。ここでの主目的は、利益を出すこと以上に、将来リピーターになってくれる可能性のある顧客との最初の接点を作ることです。このマインドセットを持つことで、目先の割引額に一喜一憂するのではなく、獲得した顧客の質や、その後の再訪に繋がるか、という長期的な視点でセールの成果を評価できるようになります。

セール経由客をリピーターへ。CRMへの戦略的接続が鍵

セールで獲得した新規顧客を、一見さんで終わらせないための仕組みが不可欠です。宿泊後のサンクスメール配信はもちろんのこと、じゃらんのR-mail(メルマガ)機能を活用し、顧客リストとして管理しましょう。そして、「セール期間限定ではなく、いつでもご利用いただけるリピーター様限定の特典」を案内するなど、継続的なコミュニケーションを通じて関係を構築します。セールという「点」の施策を、CRM(顧客関係管理)という「線」の戦略に繋げることで、投資効果は何倍にもなります。

口コミ投稿を促し、セール効果を「施設の資産」として蓄積する

セール期間中は、通常期よりも多くの顧客が宿泊します。これは、多くの「口コミ」を獲得する絶好のチャンスです。チェックアウト時の声かけや、サンクスメールでの依頼を通じて、一件でも多くの口コミ投稿を促しましょう。セールによって得られた多数の新しい口コミは、セール終了後も残り続ける、施設の信頼性を証明する貴重な「デジタル資産」となります。この資産が、未来の通常期の予約転換率を高め、持続的な集客力の基盤となるのです。

まとめ

じゃらんのセールは、もはや「参加するか、しないか」の二択で考える時代ではありません。「いかに戦略的に活用し、自施設の経営目標達成に結びつけるか」が問われています。

その最適解は、データに基づき算出した「死守すべき割引率」を定め、全方位へのばら撒きではなく、ターゲット顧客に深く響く「セグメント別のアプローチ」を徹底することにあります。そして、セールを単なる短期的な売上作りの場としてではなく、未来の優良顧客を獲得し、口コミという資産を蓄積するための「戦略的投資」と位置づけることが重要です。

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