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レベニューマネジメント

2026.03.05

2026.02.27

高単価で稼ぐか、安売りで埋めるか。RevPAR思考で明確な答えを出すプラン戦略

「客室単価を上げたら、稼働率が落ちて、結局売上が下がってしまった」「逆に、稼働率を追って安売りしたら、忙しいだけで全く利益が出なかった」という「二律背反」の悩みに直面していませんか。

ADR(単価)とOCC(稼働)は、多くの場合トレードオフ(反比例)の関係にあります。このどちらか一方だけを追う「単眼思考」こそが、収益の最大化を妨げる最大の壁です。施設の真の収益力を示すのは「RevPAR(販売可能客室収益)」であり、この指標を最大化する「バランス感覚」こそがマネージャーの腕の見せ所です。

この記事では、単価と稼働のジレンマを克服し、「同一の在庫(客室)」から収益を最大化するための、戦略的な「複数プラン設計」の思考法を徹底解説します。

ADR(客室平均単価)を牽引するプラン

施設の収益性、ひいてはブランド価値を高める上で、ADR(客室平均単価)を引き上げる「攻め」のプラン設計は不可欠です。しかし、これを戦略なく行うと、稼働率とのバランスを失い、かえって収益を悪化させる危険も孕んでいます。

ADR(Average Daily Rate)は、その日に「実際に売れた客室」の「平均単価」を示します。計算式は「売上 ÷ 販売客室数」です。この数値を引き上げるためには、当然ながら「より高い単価のプラン」を「より多く」販売する必要があります。ADRは、施設が提供する価値が、市場(顧客)にいくらで受け入れられているかを示す指標とも言えます。

ADRを牽引するためのプランとは、「価格」ではなく「価値」で選ばれるプランです。

・「アップグレード客室」プラン:露天風呂付き客室、スイートルーム、高層階確約など、ハード(客室)の優位性を価格に転換したプラン。

・「高付加価値」プラン:記念日(ケーキやシャンパン付)、美食(最上級の食事)、特別な体験(エステや地域のアクティビティ付)など、ソフト(体験)の優位性を価格に転換したプランです。

これらの高単価プランを販売する上で不可欠なのが、最も安価な「スタンダードプラン(集客用のプラン)」の存在です。顧客は、このスタンダードプランの価格を「基準(アンカー)」として、高単価プランの価値を判断します。

「なぜこんなに高いのか」と疑問を持たれることではなく、「スタンダードプランに◯◯円追加するだけで、これだけの体験(価値)が得られるのか」という「お得感(=アップセル)」をロジカルに訴求することです。

ここでよくあるケースとしては、ADRを追求するあまり、高単価プラン「だけ」のラインナップにしてしまうことです。市場には「価格重視」の顧客が常に一定数存在します。彼らの受け皿となる「スタンダードプラン」が存在しない、あるいは高すぎると、彼らは比較検討の土俵から貴施設を外し、離脱してしまいます。

結果として、「ADRは高いが、稼働率が極端に低い」という「高単価な空室」だらけの状態を招きます。これは、施設全体の収益力を示す「RevPAR(=ADR × OCC)」が著しく低下していることを意味し、経営的には失敗です。

RevPAR(販売可能客室売上)を意識する

ADR(単価)という「販売した客室」の指標だけを見ていては、経営の半分しか見ていません。常に、「販売可能な全ての客室(空室も含む)」を分母とした、施設全体の「真の収益力=RevPAR」を意識しなければなりません。

RevPAR(Revenue Per Available Room)は、「販売可能な全客室」1室あたりの「平均売上」を示す、ホテル経営における最重要指標(KPI)です。

計算式は「ADR(客室平均単価) × OCC(客室稼働率)」、あるいは「総売上 ÷ 総販売可能客室数」で求められます。

ADRが「単価」の指標であるのに対し、RevPARは「単価」と「稼働」の両方を掛け合わせた「収益力」の指標です。ADRが高くても稼働率が低ければRevPARは低く、逆に稼働率が高くてもADRが低すぎればRevPARは上がりません。

このRevPARの構造を理解すると、戦略は「単価一辺倒」ではあり得ないことが分かります。例えば、需要の弱い閑散期の平日において、高単価(ADR 30,000円)に固執し、稼働率20%で終われば、RevPARは6,000円です。

しかし、この日に戦略的に価格を下げ、ADR 15,000円で稼働率80%を達成できれば、RevPARは12,000円となります。

つまり、ADRを半分に下げてでも、稼働率を最大化した方が「施設全体の収益(RevPAR)は2倍になる」という日が存在するのです。

稼働率を「埋める」ための価格訴求プランも必要

RevPARを最大化するためには、前述した「ADR牽引プラン(高単価・高価値)」とは対極にある、「OCC(稼働率)担保プラン」が不可欠です。

これらは、「素泊まりプラン」「早割プラン」「直前割プラン」「連泊割引」など、価格弾力性の高い顧客(価格重視層)に訴求し、「空室を埋める(=機会損失を防ぐ)」役割を担うプランです。これらが存在することで、需要の弱い日でもRevPARの「下限」を支えることができます。

レベニューマネジメント(RM)の神髄は、このトレードオフ(反比例)の関係にあるADRとOCCの「最適バランス」を探ることにあります。

「単価を上げれば、稼働は下がる」「稼働を取りにいけば、単価は下がる」。この現実の中で、どちらか一方を追うことではありません。需要予測に基づき、「ADR × OCC = RevPAR」が最大化される「最適点」を、「毎日」探し、意思決定することなのです。

チャネル(媒体)×料金×ターゲットの最適化

「ADR牽引プラン(収益用)」と「OCC担保プラン(集客用)」という役割の異なる2種類の武器(プラン)が揃いました。ここからは、これらのプランを「いつ」「どこで(チャネル)」「誰に(ターゲット)」使い分けるか、という「利益設計」の実践となります。

RevPARを「稼働率」の側面から担保したい日(例:閑散期の平日)の戦略です。
この日は、価格弾力性の高いターゲット(ビジネス客、価格重視層)にアプローチする必要があります。そのため、集客力が最も高い「OTA(楽天、じゃらん等)」というチャネルを活用し、「低単価プラン(素泊まり等)」の在庫を供給します。

これにより、自施設のADRは一時的に下がりますが、空室のまま売上ゼロになる「機会損失」を防ぎ、施設全体のRevPAR(=売上)を最低限確保します。

RevPARを「単価」の側面から最大化したい日(例:週末、繁忙期)の戦略です。
この日は、価格弾力性が低いターゲット(レジャー客、記念日客)が「高くても泊まりたい」と動く日です。ここで安売り(低単価プラン)をする必要は一切ありません。

まず、手数料(コスト)が高く、安売りイメージに繋がりやすいOTAへの「低単価プラン」の供給は停止(在庫コントロール)します。そして、最も利益率の高い「公式サイト」というチャネルで、「高付加価値プラン(ADR高)」の在庫比率を高めて販売し、利益の最大化を図ります。

「集客用」と「収益用」の複数プランを使い分けること

結論は明確です。「1つのスタンダードプラン」や「1つの価格」で、全ての需要、全ての日、全てのチャネルに対応しようとすること自体が、収益最大化の機会を逃しています。

自施設の「同一在庫」に対し、「集客用プラン」と「収益用プラン」という役割の異なる複数のプランを設計することです。

そして、需要予測に基づき、これら複数の武器を「日別に」「チャネル別に」戦略的に使い分け、ADRとOCCの最適バランスを日々追求し、「RevPAR」という最終的な収益を最大化すること。それこそが、感覚的な価格調整から脱却した、真のレベニューマネジメント(利益設計)です。

まとめ

「単価を上げたい」という現場の目標と、「収益力を上げたい」という経営の目標は、しばしば対立するように見えます。しかし、本質は「バランス」です。

ADRを牽引する「高付加価値プラン(収益用)」は、施設の利益とブランド価値を創出します。

OCCを担保する「シンプルプラン」は、機会損失を防ぎ、RevPARの下限を支えます。

どちらが優れているわけでもなく、どちらも「RevPAR最大化」という共通のゴール(=経営)のために不可欠な「役割」を担っています。「1つの在庫」に対して、意図的に複数の「役割」を持ったプランを設計し、それを需要に応じて戦略的に使い分ける。この「利益設計」の視点を持つことこそが、中〜上級者マネージャーに求められる思考のOSなのです。

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