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OTA レベニューマネジメント

2026.03.27

2026.03.27

「去年こうだったから」はもう通用しない。需要予測を武器にするレベニューマネジメントの思考法

「去年のGWは満室だったから、今年も強気で値上げしよう」「最近、予約の入りが鈍いから、少し価格を下げて様子を見よう」。もし、レベニューマネジメント(RM)が、こうした「感覚」や「昨年の経験則」だけで行われているとしたら、それは非常に危険な状態かもしれません。

本記事では、なぜRMにおいて「需要予測」が核心的な役割を果たすのか、そして「感覚」による予測がいかに多くの機会損失を生み出しているかを徹底的に可視化します。

RMにおける「需要予測」の役割

レベニューマネジメント(RM)の成否は、需要予測の精度で9割決まる、と言っても過言ではありません。予測なきRMは、羅針盤を持たずに航海に出るのと同じです。まず、RMにおける需要予測の「役割」を再定義します。

これはRMの基本定義です。しかし、この定義には「需要予測」という言葉が含まれていません。なぜなら、RMの実行そのものが、需要予測を前提としているからです。この「適切な」という判断の「根拠」こそが、需要予測なのです。

・「適切な価格」とは? → 予測される需要の「強弱」に応じた価格です。

・「適切な顧客」とは? → その価格で泊まってくれる顧客層です。

・「適切なタイミング」とは? → 需要が動き出すタイミング、あるいは高単価の顧客が動き出すタイミングです。

つまり、需要予測という「羅針盤」がなければ、価格が適切かどうかの判断すらできず、RMはただの「場当たり的な価格調整」に成り下がってしまいます。

需要予測とは、単に「満室になるかどうか」を占うものではありません。「将来の特定の日(例:90日後の土曜日)」に、「どれくらいの需要(予約数)」が、「最終的にいくらの平均単価」で見込まれるかを、データに基づいて算出するロジカルな作業です。この予測値(=ゴール)があるからこそ、現状(オンハンド)との差分が見え、打つべき戦略が明確になります。

需要予測が「強い(=満室予測)」と出れば、「安売りによる機会損失」を防ぐために価格を引き上げ、安いプランの在庫を絞る戦略が取れます。逆に予測が「弱い(=空室予測)」と出れば、「高値のまま空室を抱える機会損失」を防ぐために、価格を下げたり、特典を付けたりして稼働を確保する戦略が取れます。

「感覚」による予測の限界

多くの施設が、この最も重要な「需要予測」を、「担当者の感覚」に依存してしまっているという深刻な課題を抱えています。利益責任を負うマネージャーは、その「感覚」がいかに脆(もろ)く、危険であるかを認識しなくてはなりません。

「去年のGWは忙しかったから、今年も値上げしよう」「この時期はいつも暇だから、値下げプランを出しておこう」。これらは一見、過去の「経験」に基づいているように見えますが、本質的には「勘」の域を出ません。なぜなら、データによる裏付けがないからです。

市場は常に変動しています。例えば、昨年はなかった「近隣での大型イベント」の発生、あるいは「競合ホテルの大規模リニューアル」による価格変動。これらの「昨年とは違う要因」を、担当者の「勘」だけで全て把握し、価格に反映させることは不可能です。

また、「勘」では「予約ペースが前年より20%早い(=もっと値上げできるサイン)」といった「微妙な変化(=利益の源泉)」を定量的に捉えることができず、大きな機会損失に繋がります。

「勘」に依存する組織の最大のリスクが「属人化」です。その「勘」を持つベテラン担当者が退職・異動した瞬間、施設の価格設定ノウハウはゼロになります。価格戦略という経営の根幹を、特定の個人の「感覚」というブラックボックスに依存させることは、極めて危険な経営判断と言わざるを得ません。

「データ」予測から「戦略」までの一連の流れ

感覚的な予測から脱却し、データに基づくRMへ移行するには、明確なステップが必要です。重要なのは、「予測して終わり」にしないこと。「予測」を「戦略」に転換し、実行に移すことこそが属人化の脱却につながります。

予測の土台は「過去データ」です。最低限、PMS(宿泊管理システム)やサイトコントローラーから、過去3年分の「日別・曜日別・月別」の稼働率、平均単価、RevPARを蓄積してください。
さらに重要なのが、宿泊日に対して「何日前にどれだけ予約が入っていたか」を示す「予約カーブ(Pace Report)」です。これが「予約ペース」の基準となります。

蓄積した「過去の予約カーブ(例:昨年の同日は、30日前の時点で50%の予約率だった)」と、「現在の先行予約(オンハンド)状況(例:今年の同日は、30日前の時点で70%)」を「比較」します。

「昨年より20%ペースが早い」という事実に基づき、競合やイベント情報を加味し、「今年の最終着地は、昨年より高くなる(あるいは高単価になる)」と「予測」を立てます。

そして「予測」に基づき、「未来の戦略(アクション)」を決定します。

・需要が強いと予測 → 「価格ランク」をCからBに引き上げる。OTAへの「在庫コントロール(配分)」を絞り、公式サイトの高単価プランに誘導する。

・需要が非常に強いと予測 → 「MLOS(最低宿泊日数)」を設定し、1泊の予約を制限し、連泊(高収益)を狙う。

・需要が弱いと予測 → 価格を維持しつつ「特典」を付与する。あるいは「直前割」を投入する。

これら全てのアクションは、「需要予測」という「根拠」があるからこそ実行できる「戦略」です。

まとめ

レベニューマネジメント(RM)の核心は、需要予測にあります。「適切な価格・顧客・タイミング」というRMの基本動作は、すべて「需要予測」という羅針盤(コンパス)があって初めて可能になります。

「支配人の勘」や「昨年の経験」といった感覚的な予測は、市場の微妙な変化に対応できず、担当者が変われば破綻する「属人化」のリスクを抱えています。その結果は、常に「安売りによる機会損失」か「高値による機会損失」のどちらかです。

また、「過去データ」と「現在の予約ペース」を比較・分析し、未来の「最終着地(需要)」を予測する。そして、その予測という「根拠」に基づき、「価格設定」「在庫コントロール」「MLOS」といった「未来の戦略」を設計し、実行する。

需要予測は、未来を当てる「占い」ではなく、未来の戦略を決める「設計図」です。この思考のOSアップデートこそが、貴施設を「感覚的な価格調整」から「利益を設計する組織」へと変革させる第一歩なのです。

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