閉じる 
閉じる 
OTA レベニューマネジメント

2026.03.05

2026.01.27

「値下げ」をやめて予約を増やす。閑散期を乗り切る宿泊需要の創出とホテル集客術

閑散期の「空室」は最大の悩みの一つです。「売れない時期なのだから仕方ない」と、稼働率を少しでも上げるために「値下げ」に踏み切る。その判断、本当に正しいと言えるでしょうか。

本記事では、閑散期を「価格」で戦うのではなく、「価値」で乗り切るための戦略的思考を徹底解説します。「需要は創り出すもの」「ターゲットは変えるもの」という視点を持ち、利益を設計するレベニューマネジメントを実践してください。

閑散期に「値下げ」が招く悪循環とは

閑散期の空室を前にすると、最も簡単に実行できる施策が「値下げ」です。しかし、数多くの宿泊施設の収益改善に携わってきた経験上、これは「最終手段」であり、安易に選択すべきではありません。なぜなら、値下げは「負のループ」の入口だからです。

値下げは3つの時限爆弾を抱えています。
第一に、売上(ADR)が下がれば、固定費は変わらないため「利益率」が急激に悪化します。
第二に、「あの宿はいつも安い」という「ブランド価値の毀損」が始まり、正規価格での販売が困難になります。
第三に、安値を知った顧客が、繁忙期の正規価格を見たときに「高すぎる」という「不満や不信感」を抱き、リピートを失う原因にもなります。

顧客心理に基づいたユーザーの行動変化

マーケティングにおける「アンカリング効果」をご存知でしょうか。顧客は、一度目にした価格を「基準(アンカー)」として記憶します。閑散期に10,000円で販売してしまうと、その顧客にとっての「正規価格」は10,000円になります。その後、繁忙期に20,000円に戻すと、顧客は「元の価格に戻った」ではなく、「10,000円も値上げされた」とネガティブに感じてしまうのです。

よく陥りがちな罠が、「稼働率さえ上がれば良い」という思考停止です。例えば、客室単価20,000円で稼働率50%の場合、RevPAR(販売可能客室収益)は10,000円です。

ここで値下げに踏み切り、ADR 12,000円で稼働率80%になったとします。稼働率は30ポイントも上がりましたが、RevPARは9,600円(12,000円 × 80%)となり、むしろ「売上は下がっている」のです。さらに、稼働が上がった分、清掃費やリネン代、人件費といった変動費は増大し、利益は壊滅的なダメージを受けます。

閑散期対策の鉄則は、「価格」をいじる前に、「価値」を見直すことです。「価格据え置き」のまま、顧客が喜ぶ「特典」を付与するのです。
例えば、通常は有料の「貸切風呂利用」や「レイトチェックアウト」を無料でセットにする。これにより、実質的な割引(価値提供)をしつつも、ADR(単価)とブランドイメージを守ることが可能になります。

「需要」を掘り起こす販促・体験設計

値下げという価格競争(レッドオーシャン)から脱却する唯一の方法は、自ら「泊まる理由」を創出し、価値で戦うブルーオーシャンを切り開くことです。閑散期は「需要がない」のではなく、「需要を掘り起こせていない」だけかもしれません。

顧客は「安いから泊まる」だけではありません。「そこに泊まる魅力的な理由があるから、価格を支払う」のです。閑散期だからこそ、施設側が「今、ここに泊まるべき魅力的な理由」を積極的に企画し、発信する必要があります。待っているだけでは、価格競争に巻き込まれるだけです。

また、施設単体で戦う必要はありません。閑散期こそ「地域連携」のチャンスです。例えば、地元の猟師や農家と組み、「今しか食べられない冬のジビエ尽くし」といった食のイベントを企画する。あるいは、近隣のスキー場や美術館と連携し、「リフト券付きプラン」や「入館券+レイトチェックアウトプラン」など、地域全体で顧客の「目的」を作るのです。

閑散期を「客が来ない時期」というデメリットではなく、「静かでゆったり過ごせる時期」というメリットとして捉え直す(リフレーミング)ことが重要です。その静かさを求めている顧客に対し、「過ごし方」を提案することが集客改善に繋がるきっかけとなります。

・ライブラリスペースと組ませた「おこもり読書プラン(特典:コーヒー飲み放題、レイトアウト)」
・平日に集中したいビジネス層向けの「ワーケーション応援(特典:連泊割引、会議室無料利用)」

「ターゲット」の戦略的変更

閑散期とは、言い換えれば「いつものターゲット(例:週末のレジャー客)」が動かない時期のことです。ならば、戦略はシンプルです。「来ない」層を待つのではなく、「その時期に来れる」層にアプローチを切り替えるのです。

レベニューマネジメントにおける最大のミスは、閑散期に「繁忙期と同じ顧客」を「安い価格」で呼び込もうとすることです。そうではなく、閑散期という「時期」そのものにメリットを感じる、全く別のターゲット層に目を向けるべきです。

平日の閑散期に動けるのは「誰」でしょうか。

・時間に余裕があり、混雑を嫌う「シニア層」。彼らには「平日限定のゆったり3泊連泊プラン(特典:中日の清掃不要で割引)」などが響きます。

・価格や他人の目が気になり、繁忙期を避ける「一人旅(おひとり様)」。『おひとり様歓迎』と銘打ち、食事処の席を配慮するだけで、新たな需要層となります。
・日本の繁忙期(GWや夏休み)を避けて来日する「インバウンド客」。彼らにとって日本の閑散期は、安く快適に旅行できる絶好のチャンスです。

遠方からの旅行客が動かない時期は、足元の「近隣需要」を掘り起こします。

・移動時間が短い「マイクロツーリズム(地元・近隣県民)」。『県民限定・再発見プラン』として、地元の魅力を再認識できる特典(例:地酒飲み比べ)を付けます。

・繁忙期を避け、静かな環境で集中したい「法人」。企業研修やオフサイトミーティングの需要は、むしろ閑散期に発生します。会議室や機材の無料提供と宿泊をセットにした「研修プラン」は強力な武器になります。

皆様に強くお伝えしたいのは、安易な「値下げ」は、これらの「体験創出」と「ターゲット変更」という、マーケターとして本来行うべき努力をすべて放棄した「思考停止」に他ならない、という事実です。価格を動かす前に、まず知恵を絞り、行動を起こすことが収益改善の第一歩です。

まとめ

閑散期の空室を前にした「値下げ」は、その瞬間は稼働が埋まるかもしれませんが、中長期的には施設の利益率とブランド価値を確実に蝕む「劇薬」です。利益責任を負うマネージャーは、その悪循環から脱却しなければなりません。

真のレベニューマネジメントとは、単に価格を上げ下げするオペレーションではありません。「売れない」と嘆く時期にこそ、(1)「価値(体験)」を再設計して新たな需要を創出し、(2)「ターゲット」を戦略的に変更して新たな顧客層にアプローチする、「利益を設計する」活動そのものです。

価格を動かす前に、まず「泊まる理由」を創り出すこと。安易な値下げという「思考停止」を乗り越え、戦略的な一手として「需要創出」と「ターゲット変更」を実行してください。

他の人はこちらも読んでいます

現在、表示するeBookはありません。

Contact
お問合せ
貴社の施設規模や課題に沿って
最適なプランをご提案いたします→
Company
会社概要
詳しくはこちら→
Recruit
採用情報
詳しくはこちら→