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「直接予約」の定義が変わる|手数料を需要と取引に分けて考える

2026年9月10日 Webサイト最適化 リピーター促進 直接予約 岡元 葉月

「直接予約」の定義が変わる|手数料を需要と取引に分けて考える

を増やせ」。この数年、宿泊業界で最も繰り返されてきた言葉のひとつです。ただ、その掛け声の下で見落とされてきた問いがあります。そもそも「直接予約」とは何を指すのか、という問いです。

Airbnbが一部ホスト向けに試験を始めた「直接予約リンク」は、この問いを揺さぶります。ホストがSNSなどから誘導した予約は手数料が標準の15.5%から6〜10%に下がる一方、決済はAirbnb上で行われる。名称は「直接」でも、実態は手数料の安い取引経路です。この試験では手数料が「誰の仕事への対価なのか」という構造です。

この記事では、「需要を作る仕事」と「取引を処理する仕事」に手数料を分けて考える視点と、販路の経済性を数字で比べるための実務の型を整理します。「か」という二者択一ではなく、販路ごとの対価の内訳で判断できる状態を目指します。

手数料は2パターンの対価に分かれ始めている

Airbnbの試験が示唆しているのは、手数料という1つの数字の中に、実は2つの仕事への対価が混ざっているということです。

2つの仕事を分けて見る

販路が担っている仕事を分解すると、大きく2つになります。 1つ目は「需要を作る仕事」です。広告を出し、検索結果に載せ、比較の場を提供し、まだ自社を知らないお客さまを連れてくる。 2つ目は「取引を処理する仕事」です。予約の受付、決済、キャンセル処理、システムの提供。従来、手数料はこの2つをまとめて受け取る設計になっていました。

ホストが自分で需要を作ってきた予約には、「需要を作る仕事」への対価を払う必要がないから安くなる。筆者は「需要を作った者」と「取引を処理する者」の対価を分けるべきだと主張しています。なお、この試験は一部ホスト向けの段階で、国内の宿泊施設への適用範囲は未確定です。先行事象として構造を読むことが目的です。

「直接予約」という名称への疑義

ここで立ち止まって考えたいのが、「直接予約」という言葉の使われ方です。決済がAirbnb上で行われる予約を「直接」と呼ぶのか。逆に、自社サイト経由でも、予約エンジンや広告に費用がかかっているなら「無料の直接」とは言えません。

名称で語るから混乱が生まれます。本質は「誰が需要を作り、誰が取引を処理したか」であって、この2つの対価を分けて見ると、販路ごとの経済性が初めて比較可能になります。かという陣営の話ではなく、対価の内訳の話です。

手数料に混ざる2つの仕事への対価

販路の経済性は「表面の手数料率」では測れない

手数料の内訳を分ける視点は、実はAirbnbの試験を待たなくても使えます。国内の現場でも、販路の評価が「掲載手数料率」の比較に留まっている施設は少なくありません。しかし実際に支払っているコストは、表面の率だけではありません。

実質手数料という考え方

ある施設の販路コストを分解すると、表面の手数料に加えて、セールやクーポンの割引原資、ポイント還元の原資、広告費が載っています。複数の施策が重なると、実質の費用は表面の率を大きく上回る。micadoが支援する現場では、これらをすべて合算して「実質手数料」として捉え、さらに予約1件あたりの獲得コスト()に換算して販路を並べ替える運用を行っています。

並べ替えると、見え方が変わります。表面の手数料率が高く見える販路でも、新規の需要を連れてくる力が強ければ「需要を作る対価」として妥当な場合がある。逆に、既存客の付け替えばかりが起きている販路は、率が低くても割高です。販路の善し悪しは率ではなく、「何をしてくれたかへの対価」で評価すべきだということになります。

販路の設定を放置すると起きること

メルマガでも触れてきた論点ですが、販路の設定を初期のまま放置している施設では、セールの重複やクーポンの自動適用で、意図しない実質コストが膨らんでいるケースが後を絶ちません。「需要を作ってもらっているつもりが、実際には割引で買っているだけ」という状態は、内訳を分けて見ないと気づけないのです。

対価の内訳で販路を評価する3つの手順

では、自社の販路評価をどう作り替えるか。手順は3つです。

手順1:表面と実質を分けて月次で集計する

まず、販路ごとに「表面の手数料」と「実質の費用」を分けて月次で集計します。割引・ポイント・広告費・手数料を合算し、1予約あたりの獲得コストで比較する。これが土台です。ここまでやれば、「率で見ると安いが、実質では高い」販路が見えてきます。

手順2:需要を作ったか、処理しただけかを分類する

次に、各販路の予約を「新規の需要を連れてきたか」「既存客の経路が違うだけか」で分けます。完璧な分類は難しくても、新規顧客の比率や、販路経由の初回来訪の動きを見れば傾向は掴めます。需要を作る対価として高いコストを払うのは合理的ですが、処理の対価に高いコストを払う理由はありません。

手順3:配分は「内訳」で判断し、見直しを定点化する

最後に、実質と需要創出の度合いを掛け合わせて配分を見直し、その確認を定点化します。販路の条件や自社の集客力は変わるため、一度の見直しで終わらせないことが重要です。Airbnbの試験のような手数料構造の変化は、今後も続きます。変化のたびに慌てるのではなく、「内訳で見る型」を持っていれば、どんな新しい販路や料率が出てきても、同じ物差しで判断できます。

実質の獲得コストで販路を比べる3つの手順

まとめ

この記事でお伝えしたかったことは3つです。

・手数料には「需要を作った対価」と「取引を処理した対価」が混ざっている。Airbnbの直接予約リンクの試験は、この2つを分ける動きの先駆けである

・販路の経済性は表面の手数料率では測れない。割引・ポイント・広告費を合算した実質手数料を、1予約あたりの獲得コストで比較する

・「直接かどうか」の名称ではなく、「誰が需要を作り、誰が処理したか」の内訳で販路を評価する。この型があれば、新しい販路構造にも同じ物差しで対応できる

まずは今月分から、販路ごとの実質の費用を並べてみてください。「を増やせ」という掛け声の前に、見るべき数字はそこにあります。

読んで「なるほど」で終わらせていませんか?

比較はしても「自社にとっての正解」は数字を見ないと決まりません。いま売上を伸ばしている施設と、そうでない施設の差は、「どこで取りこぼしているか」に気づき、「いつ・何をすべきか」を数字で判断できているか。違いはそこだけです。

同じエリア・同じ規模の施設は、すでにデータを見ながら最適なタイミングで手を打ち始めています。一方で「分析する仕組みがない」「何から手をつければいいか分からない」と判断を後回しにしている間も、機会損失は静かに積み上がっていきます。

まずは“自社で実際に何が起きているか"を見るところから。それが、最適なタイミングで最適な一手を選べる施設への第一歩です。

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この記事を書いた人

岡元 葉月

岡元 葉月

マーケティングコンサルタント

メディア会社→地方旅館→リゾートホテル→株式会社micadoで、コンサルタント×メディア副編集長×社内広報を担当。一軒でも多くの宿泊施設様に、ホテルマーケティングの素晴らしさを届けられるように発信していきます!!

プロフィールを見る

監修

田代貴彦

株式会社micado 代表取締役

マーケティング支援実績700社以上